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脱北の路程 #13

私が経験した”脱北のリアル”についてご紹介したいと思うのですが、長くなりそうなので2回に分けて投稿する予定です。

まず、今回は脱北者の多くが使っているルートについて解説したいと思います。

北朝鮮や脱北者の事情に詳しい方には”何を今さら”という内容なので、今回はスキップ、もしくは軽く流していただければ幸いです。

私が北朝鮮で生まれ育ち、脱北を決意するまでの経緯は、以下の記事をご覧ください。

北朝鮮から脱北するルートは大きく分けると3種類あります。

全てのルートに共通するのは、中国を経由するという点です。

国境を越えて中国に渡るまで

北朝鮮と中国の国境には大きな川が2つ流れています。

Yahooニュースから引用

水色の線で示されている中国との国境線上で、新義州(しにじゅ)〜恵山(へさん)あたりまでは「鴨緑江(おうりょくこう)」、「恵山〜会寧(ふぇりょん)」あたりまでは「豆満江(とまんこう)」という川が流れています。

脱北者の多くは豆満江を渡って脱北します。

なぜなら、豆満江は鴨緑江と比較して、水深が浅く、川幅も狭いからです。
鴨緑江は水深が深く、川幅も広いため、船がないと渡ることができません。

その他、北朝鮮はロシアとも少しだけ国境を接していますが、
(図右上の青い塗り潰しがロシア領土)警備が厳しく、脱北ルートとしてはほとんど利用されていません。

日本のテレビ番組でも、川を渡る脱北者の特集が放映されているので、観たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
(日本テレビ「世界仰天ニュース」など)

北朝鮮と中国の国境付近に暮らす住民の多くは、互いに連絡を取り合い、密輸品を扱う商売やブローカーを生業として生活しています。
中国の国境付近にはいわゆる「朝鮮族」という朝鮮語を話せる民族が暮らしています。そして、北朝鮮の国境付近の住民も中国語を多少話せる人が多いので、コミュニケーションには問題ないのです。

ブローカーとは売買を仲介する人を意味しますが、ここでは「人身売買」が多く行われます。また、脱北を手助けしてお金を稼ぐ人も多いです。

このブローカー達は、北朝鮮側の「国境警備隊」や中国の「公安」に人脈を持っています。
例えば、ブローカーが北朝鮮側の「国境警備隊」の一人に賄賂を渡し、賄賂を受け取った人が勤務する時間(主に夜間)に国境を渡るのを見逃してもらうことで、中国へたどり着くことができます。

北朝鮮の賄賂事情については、以下の記事で紹介しているので興味のある方はご一読ください。

しかし、ブローカーに依頼すれば誰でも安全に脱北することができるのかというと、そんなことはありません。

賄賂を受け取った人と別の警備隊員に脱北者が見つかってしまうという展開は、当然のように起こります。そうなると、銃撃されて死亡したり、捕まったりすることになります。

北朝鮮を脱出できたから安心、というわけでもありません。

中国側では、連携している中国のブローカーが待ち受けていますが、彼らは脱北者女性を田舎で結婚できない男性に高く売ったり、売春させたりしています。
命がけで脱北した北朝鮮出身の女性が人身売買の被害に遭い、中国を抜け出せないというケースは珍しいことではないのです。

脱北者に対する中国の対応

中国は北朝鮮との関係が緊密であることから、脱北者を不法入国者と扱っており、公安が厳しく取締まっています。捕まってしまった場合、ほぼ確実に北朝鮮に強制送還されます。

さらにいえば、中国政府は公安の取締りを強化することでは飽き足らず、一般市民に懸賞金を払い、脱北者の通報を奨励しています。

中国で家庭を作り、子供まで産んだ脱北者女性が近所の人の通報で捕まり、一人だけ北朝鮮に強制送還されるという事件が何件も起きています。

中国から定住先までの路程

1.中国にある大使館or領事館を経由

中国にたどり着いた脱北者は、アメリカや日本、韓国、ヨーロッパなど人権意識が高い国の大使館or領事館に駆け込み、希望する第3国へ入国するケースがあります。

有名なのは、2002年に脱北した母子が日本領事館に駆け込んだところ、子供だけが中に入り、母親は中国公安に捕まってしまったという事件です。

アジアプレス・ネットワークから引用

この写真が広く報道され、脱北者に対する人権蹂躙が表沙汰になった中国は世界的なバッシングを受けることになりました。
中国当局もさすがにまずいと思ったのか、写真の中の母親は結果的に解放されました。この親子は現在、韓国で暮らしているそうです。

このルートは、ここ10年ほど中国公安の厳重な警備により成功した人がとても少なく、事実上、消滅しつつある状況があります。

2.中国から東南アジアを経由

多くの脱北者がこのルートで脱北に成功しています。

中国にいる韓国の宣教師らが、脱北者を匿って東南アジアの国境まで移動、タイ、ラオス、ベトナムに密入国し、そこであえて捕まります。

これらの国々では、まず脱北者を刑務所に収監します。その後、本人の希望に応じて韓国、アメリカ、ヨーロッパ等に働きかけ、受け入れが許可された段階でその国に引き渡します。
ほとんどの脱北者は韓国への移送を希望するといいます。

3.中国からモンゴルを経由

このルートは広大な砂漠を通り抜けるという、あまりにも過酷な路程です。

多くの脱北者がその過程で亡くなっており、内モンゴルの砂漠には脱北者の白骨化した死体が多く埋まっているといわれています。

現在はほとんど使われることはないと聞いています。

次回は私がどのような経路をたどって脱北に成功したのかについて話します。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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