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北朝鮮が手を染めた悪魔の取り引き #74

こんにちは。

今、日本でも韓国でも、北朝鮮がロシアに約3000人を派兵したニュースがトップに上がっていますね。韓国の統一部は今後さらに1万人が動員されると予想しています。

今回の派兵は一人あたり月2000~3000ドルで契約しているといわれており、彼らの命と引き換えに稼ぐ外貨は(経済が崩壊している北朝鮮にとって)決して少なくないようです。

その外貨はおそらく金一家や側近の贅沢品、もしくは核兵器やミサイルに消えていくことでしょう。

韓国 国防部長官の金ヨンヒョン氏は「金正恩が実行した派兵は友好国への援軍ではなく、ロシア兵の身代わりとしての傭兵である。国民を売りに出した」と発言し話題になりました。

派兵=国家として軍隊を派遣することであり、
傭兵=給料を払って雇う兵隊だそうです。

金長官の言う通りだと思います。
派遣された北朝鮮の軍人たちは、ロシアの軍服を着て(戦死もしくは捕虜になった場合のために)ロシア人の(偽造)身分証明証を持ち参戦するとのこと。

韓国では“北朝鮮の派兵など放っておけばいい”という意見と、“北朝鮮がロシアに派兵したなら、韓国はウクライナに殺傷能力を持つ武器を提供すべき”という意見が対立しています。

遠くで起きている戦争だと思っていたところ、朝鮮半島南北間の軍事的摩擦を引き起こしているようですね。

ネット上に出回っている動画の中には、ロシアの軍服をもらうために列に並ぶ北朝鮮兵士、体格の小さい、いかにも栄養状態の悪そうな男性が写っていました。

北朝鮮は、高等中学校を卒業した時点(小学校4年、高等中学校6年)で16~17歳になります。

その後、男子は義務徴兵になるため、大学へ進学する人以外は軍に行かなければなりません。

大学に進学できるかどうかは、本人の希望や家庭の経済状況とは関係なく、出身成分などで決まります。
そのため、卒業時に同じクラスで大学に行く人は5人以下でした。(”苦難の行軍”以降は一定の賄賂で出身成分に関係なく大学に進学する人が増えることになります)

軍に入るまでの流れとして、高等中学校3〜4年生(14歳)になった時点で、自動的に徴兵名簿に登録され、15歳以降に2回の身体検査を受けることになります。
条件として、まず身長148cm・体重43kg以上、そして結核や肝炎など特定の疾患がないことが確認されれば入隊可となります。
(医師に多額の賄賂を支払い虚偽の診断を受け、入隊を免れるケースも多々あります)

私が高等中学校を卒業した時もほとんどのクラスメイトが軍に行くことになりました。彼らは1〜2ヶ月かけて各地へ散らばっていきます。

当時、私は浪人中で暇を持て余していたため、ほとんどの級友を送り出す場面に立ち会いました。

軍への入隊が行われるのは例年3〜5月あたり、街はそれっぽい雰囲気に包まれます。あちこちで丸刈り頭に質の悪い軍服を着た若者が溢れているのです。

彼らは定期的に列車で各地に運ばれていきます。
駅には軍歌が大音量で流れ、見送りに来た両親や友達と泣きながら別れの言葉を交わします。そういった時期には、胸につけるコサージュや首にかける花飾りがたくさん売られます。私もそれらを級友の胸元や首につけてあげることがありました。

別れの挨拶を交わしながら(敢えて口に出すことはないけれど)”この子たちの中で何人が栄養失調で家に戻ることになるだろう”と考えている私がいたのです。

大学に進学した後、夏休みや冬休みに里帰りをすると案の定、栄養失調により骨と皮だけになった級友に再会することが増えていきました。その激変ぶりはパッと見では同一人物とわからないほど。

彼らは家で栄養を摂って復調すると、また地獄(=軍)に戻ることになります。

軍に行く=栄養失調になる、それが常識でした。
そのようなケースがあまりにも多かったのです。

軍の中でもやはり賄賂は有効です。
多額の賄賂を渡した場合、車輌部のような少し楽な部署に配属されたり、気が向いたときに家に戻ったりでき、栄養状態もそれほど深刻でない様子でした。

今回のロシア派兵に話を戻すと、戦地に送られる北朝鮮の兵士が所属していたのは特殊戦部隊第11軍団(通称”暴風軍団”)といわれています。

国際的な基準からすると大差ない(栄養状態が悪い)と思われるかもしれませんが、特殊戦部隊第11軍団は北朝鮮の中ではかなり恵まれた人々だと言えます。
そういった理由で、息子を栄養失調で失いたくない親が多額の賄賂を払って行かせたケースも少なくないはずでした。

その親は今頃どういった気持ちでいることでしょう。
大切に育てた我が子が傭兵として売られ、異国の戦場でロシア兵として死んでいくことを考えると、悔やんでも悔やみきれないと思います。

若者の犠牲が生み出した外貨が、家族や祖国を救うことになるならまだマシかもしれませんが、あの国ではまずそういったことはあり得ないでしょう。
ブランドのバッグや高級車に消えるのか、ミサイルに消えるのか…

どうして、戦争をすることを決めた人は安全な場所でぬくぬくと暮らしていて、何の権限も持たない人が戦場で命を落とすことになるのでしょう。

”戦争に関する意思決定をした人たちが勝手に殺し合えばいいのに”といつもやるせない気持ちになります。自分が戦場に立つとしても同じ選択をするとは思えません。

今、韓国では北朝鮮兵に心理戦を仕掛け、戦場から直で脱北させるための準備を進めているとのことです。
脱北者団体も協力を名乗り出ているようでした。

少しでも多く、若い命が救われることを願っています。

願うこと以外に何もできない現実が悲しいですが、せめて一人でも多くの方にこの現実を知っていただければと思いました。

では、また。




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