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北朝鮮は恩赦も一味違った…#88

脱北者きょんちゃん自身も最近まで知らなかった新ネタです…

今年は北朝鮮にとって、祖国解放および労働党創建80周年を記念する正周年と呼ばれる年です。

なぜ私がこのワードに注目したかというと、こういったタイミングには北朝鮮の政治犯収容所を含む収容施設で、恩赦が行われる可能性があるからです。

北朝鮮において、収容された人々が最も苛烈な扱いを受ける場所の一つとして、全巨里教化所が知られています。

韓国には、全巨里教化所に6年間に渡って拘束されながらも生還、脱北を成し遂げた人がおり、被収容者を束ねるトップ2の一人を務めたそうです。
その人へ元脱北者でありながら東亜日報のジャーナリストをしているチュ・ソンハ氏が行った取材内容を元に、北朝鮮における恩赦の仕組みをご説明します。

例えば、今年のような正周年には、朝鮮労働党の幹部が金正恩に”栄光ある記念日に10,000日分の恩赦を施そうと思います”といった内容の書類を提出し、承認を経て実行に移されることなるのです。

発生した10,000日分の恩赦は、収容施設に関わる各幹部に割り当てられます。
被収容者には、日本でいう懲役期間に当たる収容期間が定められているため、恩赦を受けることができればその分だけ早く解放されます。

恩赦は個人にまとめて適用されるケースがあれば、多くの人に少しずつ適用されるケースもあり、各幹部の裁量に委ねられているそうです。

私の記事を読んでくださっている方にはお馴染みかもしれませんが、各幹部の裁量に委ねられる=”賄賂の多寡がものを言う”世界になります。塀の中も外も賄賂次第。北朝鮮の価値基準は明確です。

賄賂がものを言うとはいえ、収監される人々は着の身着のまま連れてこられ、強制労働以外の用事で外に出る機会はないので、お金や品物を用意することができません。
ここで重要なのは人脈です。家族や知人が被収容者を、物的にどれだけサポートしてくれるのかが明暗を分けるのです。

そもそも収容所内では、過酷な労働を強いられるにも関わらず、まともな食事は与えられません。外部から差し入れがなければ生き延びることは難しいという話すらあるそうです。

北朝鮮で世を渡っていくには賄賂(をたくさん払える経済力)と人脈(国外に裕福な親戚がいると◎)、この二つが絶対的に求められます。

ここから、恩赦における北朝鮮独自の恐ろしいシステムをご紹介します。

率直にいえば、北朝鮮の収容所における被収容者は、その機関を管轄する高位幹部たちの奴隷といえます。
被収容者たちが命を削って生産した食料や燃料、外貨稼ぎのための商品等が、高位幹部の生活を豊かなものにするのです。

つまり、高位幹部にとって収容所とは自身が所有する田畑であり、農作物を生産する労働力に当たるものが被収容者なのです。

農業に従事する人が日々畑を耕すように、幹部党員にとっては収容所を運営することが生活の糧になります。
そのような状況において正周年が訪れ、被収容者(労働力)を失ったら高位幹部はどうするのか…

補充するのです。

恩赦によって失われた被収容者の数を補うよう、保衛部(秘密警察)や安全部(警察)に指示が下りるそうです。

恩赦がある年には、ちょっとした商売(北朝鮮は配給制であるため小売業は取締りの対象)のような軽い罪にも重い刑が下され、通例よりも収容が長期化する可能性があるとのこと。

北朝鮮の裁判は、日本のそれとは全く異なるものです。弁護人はおらず、控訴もできません。六法全書のようなものを個人が手に入れるのは困難で、量刑の基準を一般の人が知る術もないのです。
判事が言い渡す判決=絶対的な決定事項。覆ることはありません。

同じ罪を犯した人でも、労働鍛錬隊における強制労働を数ヶ月するだけで済む(軽い量刑)人がいれば、恩赦の年に捕まった人は教化所などに数年間に渡って収容(重い量刑)されることもあるそうです。

北朝鮮政府では、こういった政策は「教化政策(キョウワジョンチェク)」と呼ばれており、金日成の時代に作られたといわれています。

裁判における量刑が、強制労働への従事者を一定数に保つため重くなったり軽くなったりする。恣意的な法律の運用はまさに独裁国家の象徴といえるでしょう。

正周年と恩赦は、私が北朝鮮に住んでいた時にも時折、耳にする言葉でした。

近所に住んでいた帰国者家族の知り合いが、正周年の年に強制収容所から解放されたのを覚えています。

代わりに、不当な裁定を受けた別の家族が捕まったのだろうと思うと、やるせない気持ちになります。


恩赦というキーワードで最近、注目を集めているのは何といっても米トランプ大統領でしょう。

連邦議会襲撃を実行し、有罪判決を受けた約1600人に恩赦を与えたそうです。重大な犯罪で長期刑を受けた受刑者14人についても、減刑のうえ釈放を命じたと報道されています。

正気の沙汰とは思えません。

日本における恩赦について少し調べてみたところ、直近に行われた”令和の恩赦”については約55万人が対象となったものの、懲役刑を減刑して釈放といったケースは1件もなかったようです。

私は親日派(?)で、常日頃から日本に感謝することが多いのですが、改めて「日本に来てよかった」という想いを強めています。

アメリカで実行された恩赦は、選挙権を持つ有権者の方々が国家の代表として選んだ人がしたことです。

大丈夫か、アメリカ…


我が家はいよいよ引越しです。

今年の目標の中には無理しないことも入っているので、今後時々更新を休むこともあるかもしれません。

その時は改めてお知らせしますので、ご了承ください🙏

ではまた👋

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