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【短編小説】僕の一人会議
僕は、窓から遥か遠い空を眺めていた。
僕はいま、ラオスからバンコクに向かうバスに乗っている。周りには昔ながらの田園風景が広がる。
なぜだろう、急に異様な虚無感が僕の心を包み込む。
そして次の瞬間、僕の頭の中で一人会議が始まった。
僕はこの2ヶ月で何をしてきたのだろうか。
何を成し遂げたのだろうか。
何を考えてきたのだろう。
振り返ると、時だけが過ぎ去っていた。
自分には圧倒的な何かが足りない。
それは金なのか、女なのか、知識なのか…
決してそんなものではない何かである…
大きなピースが足りない。これでは僕というパズルは完成しない。
僕の大事なピースはどこにあるのだろう?
どこかでなくしてしまったのだろうか。
誰かがくれるのだろうか。
遠い未来にあるのだろうか。
自問自答を繰り返しているうちに、何かもやもやとした感情が僕の心の中に溜まっていく。もやもやの渋滞だ。
もやもやの渋滞に巻き込まれてしまった僕の感情はそれでも少しずつ前に進んでいくしかない。
僕の中にある前向きな感情がもやもやの感情を追い出してくれる。
どうやら渋滞は緩和されたようだ。心の交通整備である。僕はとにかく前に進むしかないんだ。渋滞に巻き込まれている時間はない。
しかし、ここで僕はふと疑問に思った。
どうやったら前に進めるのだろうか。
この道で正しいのだろうか。
前に進んだ先には何がみえるのだろうか。
気がつけばまた一人会議が熱を帯びていた。やけどに要注意だ。
そんなこんなで一人会議を繰り返していると、バスはいつの間にか、バンコクに到着していた。
だが、一人会議の結論という目的地にはまだ到着していない。(完)