舞台袖で、震えた

「いつか漫才をやりたい」

俺は漠然と思っていた。お笑い芸人を目指している訳でもなければ、クラスで笑いをとるタイプの人間ではない。

でも、笑いと向き合う漫才師に憧れを抱いていた。

漫才をみるのが好きだったし、脳内でふとボケやツッコミが思い浮かぶ自分がいた。マイク一本で笑いをとる漫才師が何よりカッコよかった。

そんな自分にやってきた突然のチャンス。

通っていた大学のイベントで漫才大会が行われるという。俺は「ボケしろ」がありそうな友人を誘い、迷わずエントリー。当日は数百人キャパの会場で漫才をしなければならない。

本番までは2ヶ月あった。まずは漫才を書かねば。スタバに通い、ネタを書き上げた。たった数分の漫才に数十時間を要した。ネタが完成すると、今度は相方との練習。

ボケやツッコミの言い方や間の調整に多くの時間を費やした。友人たちに披露し、フィードバックをもらい、改良を重ねていった。

そして迎えた本番当日。

俺らの出番は3番。1組目の漫才が始まり、会場が笑いに包まれる。舞台袖にいる俺たちは緊張でいっぱいだった。2組目の漫才が始まった。1組目よりもさらに笑いをとるではないか。

不安が募る。

そして迎えた俺らの出番。ガチガチに緊張していたものの、ネタの完成度には自信があった。ネタをとばすことなく、笑いをとれた。これは優勝もあるぞ、と思えた。

そして、運命の結果発表。

なぜかフリップ芸をしたコンビが優勝した。納得のいく結果ではなかったけど、俺らはやりきった。

大学生活で最もアツくなった瞬間だった。


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