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【エッセイ】去年の今ごろは‥

ちょうど去年の今ごろ、海外を転々とする移動生活をスタートした。

最初は、タイのバンコクからはじまり、マレーシア・クアラルンプールやミャンマー・ヤンゴン、インドネシア・ジャカルタ、アメリカ・ニューヨークなど、移動し続けた。

ニューヨークで年を超えようとしていた時、何やら中国で感染症が猛威をふるっていることが明らかに。

事態は深刻化し、2月にインドネシアからすぐに帰国した。

この一年で世界はがらりと変わってしまった。

去年の今ごろ立てた計画だと、僕は今ごろヨーロッパのどこかにいたはずだ。ハンガリーやオーストリアでのんびり暮らしていただろう。

いまや海外はおろか、国内での移動も限られてくる。旅をするにしても、人との接触を避け、車で自然を巡る旅ばかり。

「いまを生きる」

さらに強く思った。やりたいことをやって、行きたいところに行って、会いたい人に会う。

当たり前のようで、当たり前ではない。コロナ禍のいま、どんなにお金があろうが、時間があろうが、できないことがたくさんある。

もちろん、この自粛生活の中で、いましかできないこともある。いま家にいるからこそ、僕の家族では日々ボードゲームを楽しんでいる。

ボードゲームしかり、こうして文章をかくことも、ひたすら読書や映画鑑賞することだって。

結局、いまが楽しい。

海外旅ができない分、日本の知られざる景色を開拓している。

本来は知ることのなかった景色。コケに覆われた渓谷、森の中にぽつりと現れる神秘的な池、日本トップレベルの透明度を誇る湖‥。

来年は来年でどうなるのだろうか。また世界はがらりと変わるだろう。日本では、オリンピックも開催される。

でも結局、その先にあるいまを楽しんでいるに違いない。

いまが一番楽しくて、刺激的で、一番幸せな瞬間。

来年の今ごろ何をしているのだろう。去年の今ごろは‥なんて楽しい思い出にふけりながら、いまを楽しでいるのだろう。


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