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【現地取材】他と異なる中国版NFT、ビジネス誕生となるか


NFTが沸々と世界の話題となる中、中国もその時流に乗った。ただ、それは転売禁止な上、暗号通貨も利用できない世界とは異なる「中国版NFT」である。

前回の記事で中国のNFTアート事例や、NFT取引プラットフォーム、およびインフラとなる中国でのパブリック型ブロックチェーンの発展、そしてNFTの購入者の特徴などを現地の取材を基に取り上げた。中国NFTと世界のNFTの違いを知りたい方は、是非この記事をご参考ください。

NFTと聞いて、最近記憶に新しいのはNFTを利用した市民による動画のNFT化だろう。これは、上海ロックダウン中、政府のネット情報統制により、関連動画や写真が絶えず削除されたことを受け、市民が動画をNFT化し、データをブロッックチェーン上で永久保存した事例だ。もちろん中国のプラットフォームではなく、海外のopenseaで発行している。

openseaで発行された上海ロックダウン関連の動画NFT(筆者より撮影)

この事件はデータが改ざんできないというNFTの利点を活かし、新たな活用方法を提供したが、政治的背景を考えると、中国ではopenseaのような自由に取引できるNFTプラットフォームは今後さらに厳しく管理されると考えられる。

では、そんな様々な制限の中で形成された「中国版NFT」は、果たしてどんな価値があるだろうか?

技術的な価値はともかく、中国版NFTにどのくらいの価値があるか、それはNFTユーザーが何を求めているのかによると考えられる。オープン的なのか、規制され一部の機能しか利用できないのかはさておき、14億もの人口を持つ中国は、一般的なNFTと異なる中国版NFTとして、大きな市場を生み出す可能性が高い。

去年の下半期から現在まで、中国ではすでに420以上のNFTを取り扱うプラットフォームが誕生しており、この数字は今も更新され続けているのである。

さらには、まだまだ発展の初期段階であるNFT市場だが、このビジネスチャンスを逃すまいと、すでに多くのIT大手が市場に参入。人材市場も成熟しておらず、NFTビジネスに携わる人材のほとんどはネット業界にいた人たちとなっている。

そこで筆者はネット業界で5年以上プロダクトマネージャーとして従事し、2021年からNFTのブームに乗り、NFTプラットフォームの会社で0からプラットフォームを構築した張西鵬氏にお話を伺い、中国のNFTビジネスの現状を探った。

■中国NFTのビジネス活用

・IP所有者がNFTを販売

NFT技術は現在、デジタルアート分野で最も活用されている。中国の壁画や油絵の著作権を持つ博物館・著名アーティスト、またはIP所有者がIPを提供。そして、プラットフォーム側はそれをNFT化し販売する。そこで儲かった収益を両者で分配するという仕組みだ。

このビジネスパターンは、現在中国で信ぴょう性が比較的高いプラットフォーム「鯨探(アリババ)」と「幻核(テンセント)」上で最も多いパターンである。

鯨探(アリババ)で販売されていたの敦煌の壁画(筆者より撮影)

中国NFT圏でもっとも知られているアート作品は、敦煌博物館がアリババと提携し、「鯨探」でリリースした壁画のNFT作品である。その作品は今も高い値段でNFT圏の人たちに転売(贈呈形式)されている。

幻核(テンセント)で販売されていたゴッホとモネの代表作のNFT(筆者より撮影)

さらに、最近では海外の美術館もアリババやテンセントと連携し、所蔵品である世界の名画のNFTを「鯨探」と「幻核」上で販売を開始。ゴッホの「ひまわり」や、モネの「睡蓮」を含め、作品のデジタル画像を数量限定で188元(約3,580円)の値段で販売し、どれも完売となった。

このような形で販売されるNFTアートが売れるかどうかは、そのIP自体の影響力のほか、中国人の美学に合うかどうかも関係する。十二支や春夏秋冬の季節をモチーフにしたNFT画像は海外では評価されないが、中国人の美学には合っており、受けが良い」(張西鵬)


・NFTを通じてブランドのプロモーションを行う

NFT作品を直接販売して収益化する他、NFTを通じてブランドのプロモーションを行うパターンも中国のNFT圏では流行している。

新興ブランドのみならず、贵州茅台のような老舗白酒ブランドもNFT関連のプロジェクトをリリース。若い世代ほど NFT の認知があり、ブランドも若者消費者を獲得するため、相次いでNFTプロジェクトが打ち出されている状態だ。

以下は「幻核」で発行されたプロモーション目的のNFT:

▲筆者より統計、作成

ブランドが行うプロモーション目的のNFT画像は、ほとんどが抽選形式で無料プレゼント、あるいはEC店舗で特定の商品を購入した場合に景品としてNFT画像をプレゼントする形式だ。
具体的な方法としては、店舗で商品を購入する際、「幻核」で登録した携帯番号を入力。商品の購入が完了すると、ブランドがNFTをその携帯番号が登録している「幻核」のアカウントに送信する。

このNFTをもらったところで、一体何になるのか?と疑問に思われるかもしれないが、将来的にはNFTを自社商品やサービスとさらにリンクさせ、顧客獲得の新しい手段として広く活用されていくと見込まれている。

ブランドから見ると、NFTを自社の会員サービスや商品などとリンクさせ、そのNFTに価値を与えることは、試す価値のあるNFTの活用方法だ。例えば、NFTを購入したら所持者がそのブランドの商品クーポンをもらえたり、オフライン展覧会のチケットとして使えたりと、所持者に様々な権利を与えることよって、集客が行える。」(張西鵬)


・メタバースのプロジェクトとリンクさせる

メタバースの話題性は、まさにNFTビジネスが注目される要因である。NFTの本質を考えると、デジタル資産に所有権証明を提供できるという点において、巨大仮想空間のメタバースが構築されたら、多大な価値を持つことになる。

そのため、中国でもNFTをメタバース世界への第一歩として捉えられ、NFTをメタバース関連のプロジェクトとリンクさせることにより、さらなる話題性を生み出そうとしている。

ただ、中国では、NFTのプラットフォームはたくさんあるが、メタバースと自称するプラットフォームはそう多くない。

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