虫になった日

大好きなうさぴーへ

お久しぶりです。前に書いた怒涛の忙しさが数時間前に一段落しました。なぜか感情は、最後がいちばん忙しかったな。

たくさんの同じ色の朱塗りの鳥居がどうしても目に染みて痛くて、陰翳に富んだ自然の世界に逃げ込んできました。そうだ青を踏もう、と思って。ベンチを避けて草の中に座ったらどうしても、何か抗えない力で仰向けにされてしまいました。普段足首ほどの高さにある草が上に見えます。はるか遠くで、嵐の前のぬるい風に雲が流れています。だいぶ速いな…目線のせいで世界がすごくおっきく見えて、自分がすごくちっぽけに感じられます。それで、今まで水面の下でうごめいていたいくつもの感情が小さくなって沈んで、泡がぷくぷく。こうやって心の湖の底に積もっていくのかもしれませんね、経験って。

最近、自分を俯瞰して見ることがちょっとずつできるようになってきました。今は物理的にですが、もうちょっと現実的に、抽象的な意味でも。抽象的な方が現実的なの、なんだかなでなでしたくなっちゃう。今はね、テーマパークとかゲームとかで周りのものが全部大きくて、ミニチュア体験ができるやつあるじゃないですか、リアルにあんな感じの視界です。しつこくのぼってくるありんこの小ささがなかったら、ほんとうに錯覚してしまいそうなくらい。

抽象的な意味でも、なにかに溺れそうに、潰されそうになった時、(最近は幸いあんまりそんなこともありませんが)その状況を1歩退いて客観的に見られることが増えてきたんです。

痛い!ありさん今噛んだ!?満足したので人間の大きさに戻りましょうか。今ならもう豆粒の気持ちはなくならないはず。…成功!大きくなると視野が広がって、あっちこっちで上がる夕陽の火の手が見えますね。

俯瞰できるとね、自分が滑稽になったりがんばってるねと思ったり純粋に思考の対象として興味がわいて楽しくなってきたり、とにかくなんだか感情のベクトルというか距離というかが変わるんです。それこそ視野が広くなるんでしょうか。でもさっきとは逆ですね。たぶんあなたもわかるでしょう?それができるようになったのはなぜかなぁ、と今少し考えてすぐに思い当たるのは、言語化と相対化です。

思っていることを言語化すると、言うまでもなくそれを読むことで客観視できます。そして感情という無限に淡いものを、言葉という区切りのあるものにはめ込んでいく作業そのものも、自分をある意味で分析していることになりますもんね。言葉っていうのは、特に私が好きな言葉たちは、大いに使い手の主観を含んでいるのだけれど、それでも、感情の原本よりは普遍的な枠組みがあるわけです。どうしても主観に対して直接客観を対応させたくないので尽力しております。

もうひとつの相対化、これは完全に周りの友達のおかげです。最近いろんな手段で、深い柔らかい部分を共有してくれる人がすごく多くなったような気がします。このnoteもそうですし、会って話している時も自然に深く踏み入って来てくれる人、私が覗き見るのを許してくれそうに思わせてくれる人が今までとは比べ物にならないくらい多くなって。しばらくそういうことを繰り返しているうちに、その深く柔らかい部分を隠した言葉に出会った時、伝えたいことを探る方法がわかってきたようにも感じます。自分が伝えたいことの隠し方も。(実はこっちの方は苦手で、どうせ伝わらなくてもいいんだ、と開き直ってしまうことが往々にしてあるのでひねくれているな〜と思うのですが…。)きっとそれで、他の人の考えていることに思いを巡らす時間が増えたから、自分自身のことも、どこか他人のように考える術を得たのかな、とぼんやり考えています。もちろん全部まだまだ上達したいと思っていることばかりですけれど、何を上達させたいのかがちょっとずつわかってきた感じかな。

さっき顔の上に草があった時、どうしても目に当たる草があって避けようとしたんですが、かなりしっかり倒しても負けじときっかり元通りの場所に戻ってくるんですね。育った道筋はそんなに簡単に変わるものじゃあないな、と大げさな連想ゲームをしました。結局人間って、自分がしたいように大抵の物事を解釈できるんだし、サイエンスではたしかに支障もあるからそれを悪く言う人は多いけれど、私は自分のちょっと飛躍のある解釈が無意識を顕在化してくれるような気がして好きですよ。そういうものの力を借りないと自分の無意識さえわからないんですから、人の思いを推し量るなんて、やっぱりできたと思ったのは都合が良すぎる推測だったかな。

なんだか偶然に端っこが繋がった気分です。

それでも今立ち上がったら、1時間以上踏んでいた部分の青は、地面に倒れてしまっていました。もう一個の輪っかをここで。驚くほど足取りが軽くなっていて、睡眠だけじゃなくてこういう時間が必要だったのかな、と妙に腑に落ちました。

2022/09/17

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