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日本的共創マネジメント051:「PMとマーケティング」~サービスマネジメント~

サービスマネジメント

「経済のサービス化」とか「製造業のサービス化」という言葉があります。そして日本の製造業の生産性は米国に比しても低くないが、サービス産業の生産性は対米比約6割程度とされています。このままの形でサービス化が進めば、日本全体としての生産性は更に低下していくことになります。事実、近年の日本の競争力低下は、このサービス化の進展と符合するように推移しています。従って、サービス産業の生産性を向上させ、競争力あるサービス産業を育成することが、日本の大きな課題となる訳です。しかし「サービスとは何か」ということが余り明確ではありません。われわれは日常的に「サービス」という言葉を使用しますが、その意味するところはバラバラです。そこで、ゼロベースで「サービス」について考えてみたいと思います。

1.サービスとは
 「サービス(service)」という言葉を辞書で調べてみますと、下記のように実に多様です。
①広辞苑では「サービス」とは、
・ 奉仕
・ 給仕、接待
・ 店頭で値引きしたり、客の便宜を図ったりすること
・ 物質的生産過程以外で機能する労働、役務
・ (競技用語)サーブ
②ジーニアス英和辞典で“service”とは、
・ (・・・での)勤務、(専門的な)業務、(一般的な)役務
・ (通信・交通・電力などの) 公益事業、公益業務
・ 官公庁業務、(個々の)事業
・ 接客、もてなし方
・ (機械などの)点検、修理、アフターサービス
・ (・・・への)貢献、奉仕、功労
・ 集会礼拝、(宗教上の)儀式
③OXFORD英英辞典で“service”とは、
・ a system that provides something that the public needs, organized by the government or a private company
(政府または企業によって組織され、社会が必要とする何か、を提供するシステム)
・ an organization or a company that provides something for the public or does something for the government
(社会のために何かを提供するか、または政府のために何かを行う、組織または企業)
・ a business whose work involves doing something for customers but not producing goods
(顧客のために何かを行う、しかしモノを生産することを伴わないビジネス)
・ the serving of customers in hotels, restaurants, and shops/stores
(ホテル、レストラン、および店頭などでの、顧客に対する奉仕)
・ the work that somebody does for organization, etc. especially when it continues for a long time or is admired very much
(組織などのためにする仕事、特に、それが長く続くか、たいへん賞賛されている場合)
・ the use that you can get from a vehicle or machine, the state of being used
(乗り物や機械、それが使用されている状態、から得られる便益)
・ an examination of a vehicle or machine followed by any work that is necessary to keep it operating well
(乗り物や機械を、うまく作動させるよう維持するための、点検)
・ the particular skills or help that a person is able to offer
(提供できる特段の技能や援助)
・ the army, the navy and the air force, the work done by people in them
(軍隊、海軍と空軍、及びその中で行われる仕事)
・ a religious ceremony(宗教儀式)
・ a bus, train, etc. that goes regularly to a particular place at a particular time
(特定の時間に特定の場所に定期的に運行するバスや列車など)
・ a place beside a motorway where you can stop for petrol, a meal, the toilets, etc
(ガソリン、食事、トイレなどの用に、止まることのできる高速道路脇の場所)
・ an act of hitting the ball in order to start playing; the way that you hit it
(プレーを開始するためにボールを打つ行為、及びその方法)
・ a complete set of plates, dishes, etc. that matches each other
(お互いにマッチして、完全なセットとなっている、プレートや皿など)
・ the state or position of being a servant(使用人である状態または立場)
・ the formal giving of an official document, etc. to somebody(公文書などの正式な付与)
④語源辞書(Etymology)で“service”とは、
12世紀中ごろに現れ、「教会礼拝式の祝賀(celebration of public worship)」及びラテン語の「奴隷制度(servitium)、奴隷(Slave)」がその原義だと言われます。その後、13世紀ごろに「給仕の行為(act of serving)」を意味するようになります。「軍人の義務(duty of a military man)」という意味合いが16世紀末に、「職業としての軍(the military as an occupation)」という意味合いが18世紀初めに表れます。また。「テーブルの家具;茶器など)(the furniture of the table: tea service, etc.)」という意味合いは15世紀に表れました。更に、「サービス産業(生産とは異なる)(Service Industry: as distinct from production)」という意味合いは、1941年から表れます。
⑤ウィキペディア(Wikipedia)で「サービス(service)」とは、
売買した後にモノが残らず、効用や満足などを提供する、形のない財のことであり、第三次産業と同義であるとしています。事実、第637回統計審議会では、「第一次産業、第二次産業に含まれないその他のもの全てを第三次産業として、サービス産業とする」と明記しています。

2.日本標準産業分類
 広義の意味で、サービス産業とは「第三次産業」であるいうことですが、日本標準産業分類に従うと、その実態は下記のようになります。自然界に働きかける「第一次産業」と原材料を加工する「第二産業」に含まれない、その他のもの全てを第三次産業と分類しています。

日本標準産業分類

産業別就業者数比率では、サービス産業は70%以上を占め、日本経済の中核をなしていますが、その複雑さ多様さゆえに、統計等での実態把握が遅れているようです。

3、サービスの特性
自然から採取する価値(Value from harvesting nature)」の農業(Agriculture)、原材料を加工することによる価値(Value from making products)の商品(Goods)に対して、「物事の能力増加や相互作用から得られる価値(Value from enhancing the capabilities of things and interactions between things by IBM)」であるサービス(Services)は、モノと異なり、下記のような特性を持つとされます。
・ 同時性(Simultaneous):生産と消費が同時に起こる
・ 消滅性(Perishable):蓄えておくことができない
・ 無形性(Intangible):見えない、触れない
・ 変動性(Heterogeneous):顧客ごとのニーズが異なる

4.サービスマネジメント
19世紀の「物的システム」、20世紀の「情報システム」を経て、21世紀は「サービスシステム」の時代と言われます。従って、マネジメントのスコープも「サービスマネジメント」へと拡張する必要性があります。

サービスマネジメント

 近年、「サービスサイエンス(Service Science)」という学問領域が注目されています。サービスサイエンスとは、科学、経営、工学の応用領域であり、企業など組織が顧客と一体となり利益(価値)を生み出すこととされます。経営工学、社会工学、システム科学、生産管理、マーケティング・サイエンス、法律学、経営戦略などをはじめとする様々な学術分野が融合し、サービスについての研究を行う新しい領域の学問です。これまでの学術領域の再編ではなく、多くの学術領域をまたがって、サービスに関する知恵を集め、新たな学術領域、研究分野として確立されることが望まれている訳です。学問の垣根を越えてサービスシステムを推進し、人々の知恵と技術を駆使し、顧客へ価値を提供する複雑なシステムを実現することを目的としています。

 P2Mでは標準プロジェクトモデルとして、「スキームモデル」「システムモデル」「サービスモデル」を提唱していますが、「サービスモデル」についての記述は充分でありません。従って、「サービス」をゼロベースで考え、「サービスモデル」の何たるかを明らかにすることは意義のあることと思います。多様な領域の知を融合・統合し、新しい「仕組み創り」を狙うP2Mとサービスマネジメントの親和性は高いし、貢献できる分野ではないかと期待しています。その観点からP2Mを捉え直してみたいと思います。

          (2011年3月「PMAJオンラインジャーナル」寄稿)


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