夢は叶っても、進まない。
私は、学生の時からずっと地方に憧れていた。
きっと、東急が作ったベッドタウンで生まれ育ち、何の不自由なくぬくぬくと、温室育ちで大人になるまで過ごしてきたこの町だったから、ここではないどこかに惹かれたんだろうと思う。
でも結局のところ、私はまだ一度も、東京を離れられたことはない。一度だけ、仙台に住んだことはあるけど、それは結婚したためであって、私の思い描いていた、憧れの地方の暮らしかたとはちょっと違う。いや、仙台はとても住みやすくて、本当にいい町だったけど。
学生の頃から、いつも「東京を離れたい」と言いながら、結局、ずっと離れられず、東京にある会社でしか働いたことのない私に、一体地方の何を語れるんだろうと今でも思う。
それでも、大学4年生のころに、このまま働きたいと思った牧場へ、そのまま住みつかなかったのは、きっと、もっと、何かできることがあるんじゃないかと思ったからだ。
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それは、ただ単に飛び込むことを恐れていることの言い訳に過ぎないかもしれないけど、私は結局、その時は地方へ行くことを選ばずに、求人広告の営業職というとても普通の仕事に就いた。
その後に、まさか仕事を辞めて結婚して出産して離婚するとは考えもしていなかったけど。でも、その後にまさか「地方に携わりたい」という夢が叶うだなんて、これっぽっちも思っていなかった。
どこで何がどうなって、夢が叶うかなんて、本当に分からない。でも、私は確かに自分の思い描いていたような、地方に携わる仕事に就けた。巡り巡ってという言葉が、こんなにしっくりくることがあるもんだ。
それから気付いたら、丸5年が経った。今でも夢のような仕事だと思うし、この仕事のおかげで、私は憧れていた人たちとも一緒に仕事をさせてもらえた。本当にいつまで経っても、夢のようなのだ。
夢のようで、やっぱり夢の中にいるようで、私は結局、何がしたかったんだろうって、実は今でも分からない。
夢は叶うんだよって、あの頃の自分には言ってあげたい。言ってあげたいけど、夢は叶ったけど、夢は叶えたら終わるものでもないんだってことも、教えてあげたい。
結局、思い描いていた夢はここにあるけど、その夢を叶えたからと言って、これで終わり。というわけではなかった。だから、私はこの先の夢を失った。
夢を叶えたあとに見えたことは、結局は現実を見ることで、いつまでも夢に浸っていてもしょうがないし、しっかりと現実と向き合わなければ、本当のところの夢には近づけないんだということが、身を染みてわかった。
ただ一つだけ。たくさんの夢が叶ったおかげで、私はもう夢を見なくてもよくなった気がする。今わたしに必要なのは、夢を叶えることでも、夢を見ることでもなく、現実を受け止めて、現実と向き合うことだと分かったから。
本当の自分の現実と理想のギャップを埋めるために、この人生を生き抜くために、これからは夢を追うのはやめようと思う。
8月20日は、私にとって1年の中で幸せな日だ。奇跡も起こる、私にとってのHappy day に、叶えた夢を、今度は現実に、しようと思う。
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