Podcastを取り戻せ 【Podcast 2.0】
「Podcast 2.0」という言葉を聞いたことのある方は少ないのではないでしょうか。かく言う私も、ポッドキャストを配信していたにも関わらず最近まで全く知りませんでした。
Podcast(RSS)の理想をもう一度取り戻そうとするPodcast 2.0。現在までのポッドキャスト業界の歴史や課題を振り返りつつ、Podcast 2.0とは何なのか解説します。
Podcast 1.0
2.0を語る前に、現在までのPodcastの歴史を知っておくとより面白く読むことが出来ます。
Podcastの歴史についてはこちらにまとめているので参考にしていただければと思います。
英語が得意な方は以下の記事が分かりやすいです。
見えてきた課題
"Podcast"がiPodとBroadcastからなる造語であるように、Podcastの歴史はAppleとともにありました。
現在のPodcast業界の盛り上がりにiPhoneのデフォルトアプリ"Apple Podcast"が一役買っていることは論を俟たないでしょう。
一方Podcastの盛り上がりと共に、多くの企業が独自にサービスを展開し始めたことで課題も出てきました。
一言で強引にまとめてしまうと、"RSSの目指した思想との矛盾"です。
RSSとは?
”History of Podcast” でも少し紹介しましたが、改めて簡単に紹介です。
以下のサイトがざっくりRSSを理解するに最適かと思います。
RSSとは
中央集権化
Podcastの盛り上がりによってSpotifyやAmazon Music, Google PodcastsなどBig Techが次々と市場に乗り込んできました。Apple Podcast = Podcastの図式が崩れ始めてきました。
RSSはオープンプロトコルとして誰でも情報を取得できる特徴があります。
一つのプラットフォーム(Apple Podcast)から全てのデータ(エピソード)にアクセスする状況が変容し始めました。AppleのAPIを使わなければデータにアクセスできない状況がRSSの本質と噛み合っていないことが浮き彫りになってきたのです。
一つの事件が起こります。Appleがガイドラインに基づき、ヘイトスピーチなど配信内容が不適切であるとして$${Alex Jones}$$の番組を削除したのです。”Infowars”(Alex Jonesが創業したメディア)が制作した6つの番組のうち5つが削除されました。
この流れに他企業も続きました。FacebookやYoutube, Spotifyなどが当該コンテンツの削除やアカウント停止などの処置を取ったのです。
コンテンツデータはプラットフォーマーが管理している、と示した事例の一つとなりました。
補足
このことから”言論の自由を妨げている!”と主張するのは簡単です。もう少し具体的に見てみましょう。
Alex Jonesはアメリカの極右陰謀論者。彼が創業したメディアがInfowarsです。
2012年Alex Jonesの発言が物議を醸しました。26人の方が命を落としたSandy Hook school での銃乱射事件は政府による捏造だと主張し始めたのです。この主張によって遺族が訴訟を起こす事態となりました。
(一連の裁判は2022年に決着し、多額の賠償金によってAlex Jonesは個人での破産申請を行うこととなりました。)
事件の詳細はこちら
過激かつ信憑性の低い主張を行う番組を規制することはプラットフォーマーとして当然の行動と捉えることも出来るかと思います。
Podfather動く
Podcastの父Adam Curryはこの事態を憂いていました。Adam CurryはPodcastの前身となるiPodderを開発した人物です。
2020年、彼はPodcast 2.0プロジェクトを立ち上げます。コンテンツが規制されることなく誰もが情報にアクセスすることが出来る、元来の理想を取り戻すべく活動を開始しました。
Podcast 2.0
Podcast 2.0が目指す未来は、ズバリ”誰もが規制を受けることなく番組を作成し視聴できる”こと。
取り組みは3つに大別されます。
・Podcast Index
・Podcast Namespace
・Podping
順に見ていきましょう。
Podcast Index
Podcast IndexはPodcastのオープンディレクトリです。誰もがデータをアップロード・参照・使用することが出来ます。所謂分散型サーバー(IPFS, Arweave …)と似ていますが、恐らくサーバー自体はPodcast Index側が管理しているので少し異なります。
誰でもデータを扱うことが出来ることから、indexを活用したPodcast Appが数多く生まれています。以下のアプリはほんの一部です。
これらのアプリはオープンソースのデータを活用できるだけではありません。リスナーが配信者を応援できる仕組みを実装しています。
これがValue 4 Valueです。
仮想通貨(暗号資産)であるBitcoinを配信者に送ることができる仕組みがvalue 4 valueです。10,000以上のアプリがこの仕組みを導入しています。
(代表的なアプリとしてはFountainが挙げられます。)
Podcast Namespace
RSS内でPodcast独自の情報を記載できるようにすることで、Podcast Appがデータをより便利に扱うことが出来るようにする取り組みです。RSSにPodcast独自の名前空間(Namespace)を追加できるようになっています。
例えば<podcast:person>のタグを追加することで、エピソード制作に関わった人を参照できるようになります。
Podping
エピソードが公開、更新された際に通知してくれるシステム。
すでにRSSにおいては似たようなシステム(WebSub)が提供されていました。
WebSubは素晴らしい技術であるものの、Podcast 2.0を推進していくにあたっては物足りない部分がありました。
全てのホスティング企業がシステムをサポートしている訳ではない
フィード(コンテンツ)数が多くなると通知のための再登録する負担が大きくなる
通知する際のHubがGoogle, Superfeedrに集約されてしまっている
webhookを使用するため通知受信用のサーバーが必要となる
これらの課題を解決すべくPodpingが開発されました。
配信者は更新した情報(RSS)のURLをPodping.cloudに通知
Podping サーバーは送信者の検証を行う
確認後情報をHive Blockchainに記録
Blockchainを確認するだけで更新情報が確認できる
Public Blockchainに記録された情報は誰もが確認できることを利用しています。
補足
Podcast 2.0ではブロックチェーン技術を活用した取り組みが多く見られます。その中でもLightning Network(Value 4 Value), Hive Blockchain(Podping)については後日別noteを書く予定です。
Podcast Indexではサーバー自体は恐らく特定の団体が管理していますが、分散型サーバーによるPodcast プロジェクトも別に存在する(Permacast)ためそちらについても別noteで解説できたらと思っています。
まとめ
誰もが情報を取得できるRSSからPodcastの原型が出来上がり
プラットフォーマーがPodcastというコンテンツ形式として普及させ
分散化・民主化を目指してPodcast 2.0が出現する
より良い発展を目指してRSSや通知に工夫が施される
簡単にまとめてみるとこんな感じでしょうか。Podcast生みの親がもう一度立ち上がっているところにPodcastへの愛を感じますね。web3の目指すところと似ていると感じました。
参考記事:
$${あくまで私の個人的なリサーチであり、誤った情報を含む場合があります。ご了承ください。}$$
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