
犬と歩けば…やっぱり名前はポチですか?
散歩での出来事
十数年前のことです。
犬が散歩の途中で辺りの匂いをかぎ始めました。私はしばらく、匂いをかぎ続ける犬のそばで立っていました。
すると、学生風の女性がそばに来て
「やっぱり名前はポチですか?」
と話しかけられました。
唐突に質問されたので少しポカンとしましたが、犬の名前はポチではないことを話ました。
女性は少しがっかりしたようでした。
その頃、「犬の名前はなぜポチなのか」ということをテレビ番組で取り上げられていました。数回、見たように覚えています。
明治以降に急に「ポチ」という名前が増え、「教科書にも犬のポチが…」なんて文が登場するようになったと聞きました。
それ以前は「クロ」「シロ」といった犬の毛色そのままの名前が多かったということです。
「ポチ」の由来は、外国人が犬を見て言った言葉を日本人が聞き違えたことだという説明でした。ただし「諸説あります」のただし書きがあってよくわからないらしいのです。
飼い犬は茶色の柴で、その頃は柴犬を飼っている人は少数派でした。日本犬ならばポチという名前かもしれないと彼女は思ったのでしょうね。
ちびまる子ちゃんのおじいちゃん
今度はアニメ『ちびまる子ちゃん』での話です。
ちびまる子ちゃんの家に犬が迷い込み、飼い主が見つかるまでちびまる子ちゃんの家で犬を預かることになりました。
ちびまる子ちゃんは犬を飼えると思い、さっそく名前をつけようと考えました。
「おじいちゃん、犬の名前はなんてつけようか?」
「そりゃあ、犬の名前はジョンじゃよ」
「ええ!? この犬、メスだよ」
「ならジョン子じゃ」
このおじいちゃんの言葉で、私は自分の母の話を思い出しました。
ジョンとベス
私の母が子どもの頃の話です。母の家では犬を2頭を飼ってました。オスが「ジョン」。メスが「ベス」。時々、母が犬たちを思い出して話ていたので、オスの犬がジョンだったことははっきり覚えています。
母の家で犬を飼っていたのは戦前…第二次世界大戦の前です。たぶん日本がアメリカと戦争する前だったのでしょう。だからアメリカ人を連想させるジョンと名付けることができたのでしょう。
ちびまる子ちゃんのおじいちゃんが
「犬の名前はジョンじゃよ」
と言ったのは、犬にジョンと名付けるのが流行った時期があったのだろう想像できます。そして、私の母の家でも犬にジョンと名付けたのだろうと思います。
ベスはどうだったのでしょうかね。
パグの信哉くん
我が家の愛犬を連れて行く動物病院では、受付が終わると名前が表示されるモニターがありました。現在診療中のペットたちの名前もあり、待ち時間にそれを見上げては
「いろんな名前があるなあ」
と思ったものです。
その中に「信哉」という名前を見つけました。人間の男性そのものの名前です。
犬なのか猫なのか。どんな子の名前なのだろう?
私の心は好奇心でいっぱいになりました。
しばらくすると獣医さんがパグを抱えて診察室から出てきました。
「信哉くんのおかあさーん」
と飼い主さんを呼びました。
40代の女性が進み出て獣医さんからパグの信哉くんを受け取りました。
信哉くんってパグだったんだ、と思うのと同時に、信哉くんが黄色い帽子をかぶった幼稚園児に見えたのです。
たぶん、飼い主さんはそんな気持ちで信哉くんを飼っているのでしょう。私も年の離れた末っ子を育てている感覚で犬を飼っていましたから。
ポチもかわいい名前です
犬を飼う時に『愛犬の命名事典』という本を買いました。参考にしましたけど、たしか「ポチ」はなかったか、あってもほかの名前にかすんでしまっていたのでしょう。私は「ポチ」という名前をすっかり忘れてしまっていました。
ですから愛犬の名前の候補には「ポチ」は全くあがらなかったのです。
でも今は「ポチ」もかわいい名前だなあと思います。「ポチ」と呼んてシベリアンハスキーが出てきたら、それもそれでかわいいなあとクスクス笑っています。