嫌いな分だけだいすきだった
彼のズルいセリフがきらいだった
彼の口だけの“好き”がきらいだった
彼の適当な“かわいい”がきらいだった
彼の抱きしめてくれる男らしい腕がきらいだった
彼の撫でてくれるあたたかい手がきらいだった
彼の優しさがきらいだった
彼のその場しのぎのウソがだいきらいだった
彼とのキスやエッチは幸せでツラかった
だけど
そのすべてがどうしようもないくらいすきだった
だいすきだった
優しいとこも自由なとこも面白いとこも顔も手も腕もにおいも目尻にできる笑いジワも声も
寝るとき腕枕してくれるとこもぎゅっと力強くでも優しく抱きしめてくれるとこもちょっと強引なとこもエッチのとき愛おしそうに呼んでくれる名前も好きの言葉も。ウソだとしても。
全部好きだった
たとえそれがその瞬間だけのことだとしても