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『Eternally - 愛しさと刹那さと - 』(後)【ボイスドラマ】

Do Some Call
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音楽ユニットDo Some Call(chacch x kazma tamaki)の楽曲「Eternally」の詞世界をベースに生まれた短編小説「愛しさと刹那さと / 舞濱りん 作」を盟友Tacciの脚本によりボイスドラマ化。

原作:舞濱りん
脚本:Tacci
イメージイラスト : sio

メインキャスト : 琴猫(瞳) / なぐ(トーマ)
キャスト : Tacci(タツヤ) / 神乃ちよ(出待ちの女)
カメオ出演 : chacch & Kikanbo / kazma tamaki
BGM : Do Some Call / chacch / kazma tamaki
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愛しさと刹那さと / 舞濱りん
http://slib.net/48816
https://note.mu/shamu/n/nc96c63416e49
https://note.mu/shamu/n/nb96aaf90cce2

Eternally / Do Some Call
https://soundcloud.com/dosomecall/eternally
https://note.mu/kazma_tamaki/n/n3fe4b32a1c19
https://note.mu/chacch/n/n628afa820dfa
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「皆さんにお知らせします。わたくし真鍋瞳は、10月の町のイベントで歌うことになりましたー!
15年ぶりのステージで、今からドキドキです。一曲は新曲を歌うつもりですが、なかなかできあがらなくて焦っています。
皆さんに無事成功したよ、と報告できるよう頑張ります!」

フェイスブックにそう書き込み、自分を鼓舞する。
投稿すると、すぐに「いいね!」の反響があった。続々とコメントも入ってくる。

「やったね! ヒトミの歌、また聴きたかったよ! 聴きにいくよ!」
「聴きに行きます。応援してるよ」
「頑張れー」

昔のバンド仲間からは「良かったら手伝いましょうか」というコメントもついた。
皆の応援を得て、力が漲ってくる。
一ヶ月以上先のことではあったが、すでに緊張を強いられていた。
少しの応援で心強くなる。
シンセサイザーで音を作りながら20分以内での曲の構成を考えていたが、ラストに何を持ってくるのか決めかねていた。
作ったばかりの新曲では盛り上がらない気がしたのだ。
そんな中、フェイスブックで皆がシェアしてくれていることが知らせとして届き、心が弾んでいく。

……うん。いいステージにしよう。

譜面を持つ指が震えて、苦笑する。
すると、スマートフォンに再びフェイスブックから知らせが届く。
友達申請だった。

―― TOHMA.M ――

え?
まさか……。

慌ててページを覗きにいくと、ギターを弾いている写真が載っており、あまり変わっていないトーマの姿だった。

「う…うそ……」

身体がかっと熱くなる。
忘れようと必死に自分を押さえ、その後の動向は追わなかった。
忘れることなどできるはずもなかったのに忘れようとした。
会いたくて会いたくて、気が狂いそうだった。
自分が言ったことを撤回したくて、トーマの自宅に行き、何度も呼び鈴を押そうと思った。
本当は自分がどうしたいのか知りすぎるほど知ることとなった。
離れたくないといったトーマの言葉が耳から離れず、衝動に突き動かされ、心が悲鳴をあげ、その胸に飛び込みたくて、身体が引き裂かれていくような痛みと苦しみに心から血が流れているのだと思った。

「ト……」

画面に映るその姿を指でなぞる。

十五年……。

トーマ以外の人に恋をできなかった。

「ふふふ……」

写真を見ただけで、どうしようもない思いが自分を取り巻く。込み上げる涙を堪えて、友達承認のボタンをクリックする。
首を左右に振る。

……きっと結婚して子供がいるわよ。 

自分のページをシェアしてくれた人が昔のバンド仲間だとわかった。 
その繋がりからきっと懐かしさに友達を申請してくれたのだと自分に言い聞かせる。
それでも速さを増す鼓動を静められない。
承認したことでオンライン表示になり、今、オンラインであることが分かる。

……繋がっている……。

するとメッセージボックスが開いた。

「瞳。お久しぶり」

 表示されたその言葉に、心臓が射抜かれたような気持ちになった。
 スマートフォンを握る指が震える。

「友達承認、ありがとう。あまりに嬉しくてついメッセージを書いてしまった」

震える指と格闘しながら、彼にレスを送る。

「こちらこそありがとうございます。お久しぶりです」

それだけ書いて、胸を押さえる。
いきなりチャットを始めるとは想像していなかっただけに、心の準備ができていなくてドギマギしてしまう。
どうしていいのかわからない。

「ごめんね、突然に」
「ううん。嬉しかったです」

パニックになりそうになりながらも素直にそう書けた。

「10月のステージ、面白そうだね」
「うん。全然歌ってなかったから今から緊張しています」
「そうか」

沈黙する。   
その先が続かなかった。
何を話題にするべきなのか、わからなかったのだった。

「あのさ」

トーマが沈黙を破るように返信をよこした。

「はい」
「メールアドレス教えてくれないかな」
「え? あ、はい……こちらです」 
「ありがとう。じゃあ、ここにメールするね」
「はい、では」
 
それでトーマはオフラインになった。
あまりに呆気ない終わり方だったが、心臓は暴走を続けていた。
パソコンの電源を切り、脱力する。
味気ない文字での会話。
それでもトーマと繋がっていると思うと、時間が遡っていくようだった。
  
……元気にやっているのかな。

聞きたいこと、話したいことは山ほどあるはずなのに、何一つ聞くことができなかった。
けれどもーー。
嬉しさに踊りだしたくなる。

……トーマ。

すると、メールが届いた。

「先ほどはいきなりメッセージを送ってごめん。しかもまともに話せなくて。
瞳と話していると思ったら、舞い上がってしまって…。何を話せばいいのかわからなくなったよ。
10月のステージで歌う曲が決まっていないのなら、曲を送りたいんだけど、どうかな。」

何も思考できなくなる。
 
「とりあえず、メロディのみのファイルと歌詞のファイルを送るよ。アレンジはこれから作るから、まずは聴いてみてほしい」

一度大きく深呼吸してから、その添付されているファイルを開けた。

タイトル「Eternally」
刺激的な題名である。
日本語にするとなんだろうと考える。
永遠に、では無粋な気がして、何がいいだろうと思いつつ、歌詞に目を向ける。

――哀しみが紛れるくらい啼き続けてよ。
――命削り啼く蝉時雨で哀しみを洗い流してよ。

どきりとした。

――肌を焼く夏の日差し 記憶を呼び覚ますの。
――遠い街の空の下 二人で流した涙と汗の匂い。

記憶が甦っていく。
過ごした日々。
彼の匂い。

――愛しさも刹那さも もう一度分かち合えるのなら。

ずしりとその言葉がのしかかる。

――揺れる光の真ん中に 消したくない永遠の願い。

心臓に何か突き刺さっているかのような痛みを感じた。

――眠れない夜もある。
――そのときは思い描くのよ。
――響け。あの日と同じメロディ、消えないように。
――永遠に響け。
――届かない想い込め、祈るように唄い続ける。

まるで自分の今までをそのまま歌詞にされているかのようである。   

――愛しさも刹那さも もう一度分かち合えるのなら。
――終焉を恐れないで、前を向いて歩くの。

……トーマ。

メールが再び届く。

「君に逢いたい」
 
fin

注)kazmaの投稿も同内容です。

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