飯田橋で働くCFOの告白~スタートアップで働き続けるために~
まえがき
2023年のモノグサアドベントカレンダーのトリを務めさせていただきます、CFOの細川です
(企画してくれたmoyoさんありがとう!)
さっそくですが、どこかで聞いたことがあるタイトルでごめんなさい
さらにおこがましくも、テーマとしてはスタートアップで働いている方やこれからスタートアップで働くことを考えている方に向けて書いているつもりです
ちなみに発言は個人の見解に基づくものであり、所属組織を代表するものではありません
さっそく、みなさんに1点お伺いしたいのですが、
スタートアップで働いていて楽しいですか?
のっけからサンタも裸足で逃げ出す火の玉ストレートとは何事か、と
ぼくの正直な回答としては
楽しくはない
です
(席の後ろのHRチームから飛び蹴りくらいそうごめんなさいごめんなさい)
ぼくは、2010年にリクルートという大企業に新卒で入社して、約8年ほど仕事させてもらいました
営業から経理、分社可、IPO、投資・M&A、CVCと本当に色んなことを経験させてもらいました
常にチャレンジングな環境で、限界ギリギリまで追い込まれることも少なくありませんでした
ただ、根本のところでは
私は仕事に真っ当に向き合える地位が保証されている
という暗黙の了解が自分と会社の間であったんだと思います
(少なくとも自分の中ではそう)
ぼくはリーマンショック直後に社会人になったので、就活こそ大変だったものの、その後の(経済的な)外部環境は悪くなく、リストラや倒産といったような、自分ではどうにもならないリスクからは遠い距離にいたのでしょう
仕事に真っ当に向き合える地位が保証されているとは
つまるところ
頑張れば成果が出る(可能性が高い)
その成果に対して評価を受けられ、評価に見合った報酬を得られる(可能性が高い)
という状態だと思います
これがスタートアップ、特にまだ世の中に顕在化していない課題を解こうとするような、イノベーティブなスタートアップではどうか
残念ながら十全にそれが実現できているかというと、難しいなぁと感じています
成果の再現性は保証されていない
(頑張っても(短期的に)成果が出ない可能性がある)
リソースやアセットが乏しいので外部環境の変化をダイレクトに受ける
(個人が高い成果を出しても、会社自体がダメになってしまうこともある)
正解がない問いにタックルし続けるという、不確実性の塊を煮詰めて培養したような存在を扱うには、本来は海のように広くて深いリソースの中で行うのが理屈としては正しいはずなのですが、そうはいかないのがスタートアップ
(ただ、逆にリソースがありすぎると保守的になってしまい、いちばん重要なチャレンジ精神が失われがちなのも人間の面白くて難しいところ)
どうやったら、従業員を始めとしたステークホルダーの頑張りに対して100%胸を張って、報いられていると言えるのか
スタートアップの経営という仕事を始めて、はや5年超経ちますが
1年の内360日くらいは自分の無能感に苛まれてます
エンドレスなんて日だ!
だから「スタートアップで働いていて楽しいですか?」という問いに対して
ぼくの答えは「楽しくはない」なのです
そんなぼくでも、曲がりなりにも5年超スタートアップで働き続けられているTipsを共有できたらと思います
原体験を自ら作りに行く
VCの方がスタートアップへの投資検討時に見るポイントとして、創業者や経営陣の原体験を挙げられることがままあると思います
その領域への知見・経験の深さだったり、何にパッションを持っているのかであったり、そんなところ見ているのだと理解しています
スタートアップで働く時のオススメとしては、原体験を自ら(後追いで)作りに行くことです
ぼくのモノグサでの原体験は2つあります
ぼくは代表の竹内から誘われて2018年にモノグサにジョインするわけなんですが、ジョインを決めてから100人以上の方に、事業の構想やプロダクトの紹介をしにいきました
その時、大阪で日本人の方と外国籍の方をルーツに持つ子どもたち向けの日本語教室を運営しているNPOの方と出会いました
その方にお願いして、授業を見学させてもらうことになったのですが、その場の流れで中学2年生の男子生徒を教えることになりました
ただ、これが難問で
彼は日本人と中国人をご両親に持つ方だったのですが、最近日本に引っ越してきたこともあって、日本語(と英語)はわからない
かくいうぼくも、中国語はさっぱりなので「教科書のココを音読してみて」という、授業においては超基本的なコミュニケーションすら成立させることができないのです
どうしたもんかなぁ、と思っていた時にβ版のプロダクトをインストールしていたことを思い出したので、その場で教科書に出てくる単語を登録した上で、彼にスマホ渡してみると
なんと、こちらが何も言わずとも楽しそうに問題を解いていくのです!
その瞬間にモノグサの事業やプロダクトは絶対に価値がある、と確信しました
もう一つは約2年前の2022年1月2日に地下鉄乗っていた時に、入口付近に座っていた小学校低学年と思われる女の子が、Monoxerで勉強しているのを見た時です
たまたま目に入っただけなのですが、そんなことまったく想定しておらず、まさに正月気分でいたので、ホントに息が止まるかと思いました
その時に、絶対ユーザーを犠牲にするような意思決定はしない、と決めました
いや、決めたというより、クラピカのジャッジメントチェーンを心臓にぶっ刺された感覚ですね
もちろんまだプロダクトもユーザーの期待に応えられていない部分はありますし
会社を継続する上でも、売上だったり利益だったりはとてもとても重要なのですが
「ユーザーの成功が第一である」ということが、あの瞬間自分の真に胸に刻まれたと思います
だって、一人の大人として、年端もいかない子どもの期待を裏切りたくはないですよね、普通に
なので、後者は意図せずのケースではあったのですが
「なんで自分はこの事業に携わっているのか」という原体験を自ら作りにいくことをオススメします
長期の視点を持つ
経営において、よく長期の視点、長期の目線を持つことが重要であると言われると思います
日本の上場企業は、短期の売上・利益を求めすぎて、アメリカの企業のように革新的な企業が産まれてないじゃないか、なんて批判されることもあったりします
はっきり言うと、健在・潜在問わず、日々の色んな課題に対応しなければいけない中で、長期の視点を持つことなんて超絶難しいです
人間なんで、色んなことに一喜一憂しちゃうし、長期のことを考えようと思っても、頭の中に昨日の自分のちょっとした発言を悔いたり、バリバリ脳のメモリ食いまくるし、令和ロマンは1本目も2本目も面白かったし
そんなTHE 煩悩なぼくが、ここ1年くらいやってて、いい感じだなぁと思う方法を共有したいと思います
それは「長期の視点を持ってるっぽい人と対話する場面」をイメージすることです
人間、部屋の片付けだったり、溜まっているペットボトルのゴミを捨てるとか、そういう具体的な作業は比較的行動に移しやすい生き物だと思ってまして
どうしても抽象的なものや、漠然としたものに対しては腰が重くなってしまいますよね
なので、ぼくの場合は長期のこと考えてもよく分からないので、そこは割り切って「長期の視点を持ってるっぽい人」に下駄を預けちゃおう、と
いわば、Master Yodaとのぶつかり稽古ですよね
ちなみにぼくの場合は、Bill Gatesを仮想組手に置いています
ご存知のとおり、エンジニアとしても、起業家としても、経営者としても歴史に残る実績を残している人ですし、Bill & Melinda Gates Foundationという世界最大の慈善基金団体を創設した人でもあります
モノグサの「記憶を日常に。」という壮大なミッションを前提とした時に、組手として非常にマッチするのではないかと思ってセットしたのですが、今のところいい感じです
Gatesだったら、こういう話してもスマホいじってそうだなぁ、とか
Gatesだったら、この案は「Crazy!」て笑ってくれそうだぁ、とか
下手の考え休むに似たり、とはよく言ったもので、とりあえず賢そうな人にぶつけてみるのがオススメです(脳内ですけど)
ただ、まだ直接話したことはないので、Facebookで繋がっている人がいたらぜひ紹介してください(Linkedinの方がいいか?)
漸進は悪いことではない
これは自分への戒めでもあるのですが、スタートアップという変化が激しく、ホッケースティック的な成長が求められ、パワーロウの法則に縛られた業界にいると、どうしても課題や悪いところに目がいきがちです
不思議とね
話は変わりますが、我が家はありがたいことに、今年の7月に双子の男の子を授かりました
恥ずかしながら、子育てしてるなんて口が裂けても言えないほど、妻や義母さんに支援してもらってなんとか回っている状態なのですが
それでも気づきは多いものでして
赤ちゃんはミルクをあげたあとに、背中をさすったりしてゲップをさせるのですが、子どもがゲップをすると妻が
「よくゲップできたね~、すごいね~」と褒めるんですよね
ぼくの知る限り、ゲップして褒められるのって赤ちゃんとハイキングウォーキング・鈴木Q太郎くらいじゃないか、と
でも赤ちゃんの目線からすると、産まれた時はゲップなんかできなかったわけで、生存のために、ゲップできるようになっていくのですよね
それって、漸進的であるかもしれないけど、成長であることは紛れもない事実ではあって
どうしても色んな情報に触れる中で、嫉妬したり凹んだりすることは、人間の性質上、不可避なんだと思います
もし、そういった感情のゆらぎを完全に切り離すとしたら、Go to 獄門疆くらいしか手がないわけで
ただ、ちゃんと頑張っていれば、絶対にできることは増えているし、成長もしていると思います
それが人の集合体である会社やチームであればなおのこと
漸進的かもしれないけど、事業やサービスは確実に良くなっていっているはずです
年末っぽい話でいうと、江戸の風習に「七味五悦三会」というものがあったそうで
大晦日の夜、除夜の鐘が鳴っている間に
「その年に食べたおいしいものを7つ」
「楽しかった出来事を5つ」
「会えてよかった人を3人」
を挙げて語り合う、と
年越しまでにそれぞれ挙げることができたら、今年はいい年だったね、といって年を締めるという、ものだそうです
(ぼくは昔から好きな社会学者の鈴木謙介氏のブログから知りました)
先人もそう言っているってことなので、生き馬の目を抜くスタートアップ業界であっても、漸進していることを素直に喜んでいいのでは、と思います
以上、3点でした!
ちなみに、トップの画像は今年楽しかった出来事の1つです
最後に改めて
スタートアップで働いていて楽しいですか?
という問いに対して、ぼくの回答は
楽しくはない。
なのですが、そこに一文足したいと思います
楽しくはない。が、自分の人生を賭けるに値する
それでは、まだ仕事する人は一緒に頑張りましょう!
お休みに入られる方は、良いお年を!
こんな人間が経営している会社でも、面白そうと思ったらぜひ!
モノグサ採用サイト
あとがき
2023年1月2日のtweet
まったく同じこと言ってるううううううううううううう!!!
1年経っても、ほぼ同じこと、言っちゃってるううううう!!
良いお年を!