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“〇〇”と“〇〇”で市場に食い込む!明治のヨーグルトドリンクから学ぶ商品戦略

こんにちは、チャボです。
今日は少しサプリメントから外れてヨーグルトドリンク市場について書こうと思います。特に今回は明治にフォーカス。
最近明治の脂肪対策ヨーグルトがRNされました。

なぜ黒?と思いますが、これは実はある戦略の1手なのかもしれません。
明治のヨーグルトドリンク戦略は商品自体がユニークで数も多く、語れることはいっぱいあります。
それではいきましょう!


日本のヨーグルトドリンク市場の規模

ヨーグルト・ヨーグルトドリンクの市場規模

2020年時点で日本のヨーグルト市場全体の規模は約4,000億円とされ、そのうち飲むヨーグルトが約1,500億円を占めています。(富士経済より)

2000年代初頭からヨーグルトの健康効果が注目され、特に免疫や腸内環境を整える製品が消費者に受け入れられたことから市場は急速に成長しました。
以前別記事で紹介しましたが、1990〜2000年代は食品素材による健康ブームが日本に度重なり押し寄せました。その結果受けて今の40代以降はこういった食からの健康に投資をする中心層となっています。

2010年代からは乳酸菌研究の結果が数多く報告されたことと、「腸活」や「免疫力向上」に関する関心の高まりも相まってさらに市場が成長。コロナは一時的ですが2020年にさらに市場を押し上げました。

超複雑なヨーグルトの定義カテゴリ

でも、そんな背景を加味するとヨーグルトドリンク1500億って規模小さくない?と思うかもしれません。
その通りでこの市場規模って実は適正か?と言われると確かに悩ましいです。

ここで1点問題です。
以下の製品から、ヨーグルトドリンクを全て選びなさい。

d menuより引用

みなさんわかりましたか?正解は、R-1だけになります。
(左から順に、発酵乳(ヨーグルトドリンク)、乳製品乳酸菌飲料、乳酸菌飲料、清涼飲料水。)

え、ヨーグルトテイストって書いてたり乳酸菌入ってるじゃん。と思われるかもしれません。たしかにお客様から見るとほとんど一緒ですよね。
しかし食品表示区分上だと、先ほどの区分に分かれます。特に、右3つは新興勢力でもありこれらの台頭によってヨーグルトドリンク市場は微減傾向となるのです。健康習慣という意味ではお客さまからは一緒ですが、マーケット本で見るとこんな構造になります。
間接競合みとかないと見誤るお手本のような事例ですね。

明治ヨーグルトドリンクの変遷

明治は1990年代からヨーグルト市場での地位を強固にしてきました。特に、機能性ヨーグルトの需要が増え始めた2000年代から、市場ニーズに応える形で多様な製品をリリースしています。

●2000年〜 LG-21

これ実は知らない人が結構多いです。明治ヨーグルト=R-1(赤)のイメージだと思いますが、実は最初はこの子(青)なのです。

当初は「ピロリ菌」などへの働きを掲げてましたが、なかなか流行らず。

それもそのはずで、メカニズム構造から見ると
①ピロリ菌→②胃の状態を悪くする→③身体全体への不調

これの①にフォーカスしてPRや広告するとまぁ売れないよね。って話です。アイデアが強固な会社がやりがちな、こだわり全面訴求ですね。
この商品の転機は「胃で働く乳酸菌」の市場認知定着機能性表示化により「胃の負担を和らげる」PRを体系的に実施したことです。
トータスさんの「胃で、働く乳酸菌〜♪」のフレーズから認知づける展開は個人的にすごい良いなと思いました。

●2009年〜 R-1

お次は、ヨーグルトドリンク界の王道R-1です。
免疫力向上が期待される「1073R-1乳酸菌」を使用。
この商品の火付けはNHKでの報道と、それをきっかけにした集中的なメディア発信です。2010年前半にテレビ・ラジオ・雑誌など今ではオールドメディアですがあらゆる媒体での展開を行い、ヨーグルトドリンク市場での認知を確固たるものにします。

https://www.dei.or.jp/aboutdei/staff_pdf/orikasa01.pdf

また、実はPKGも大きな工夫点です。
ヨーグルトドリンク売り場を見てもらうとわかるのですが、だいたいは青か白なんです。

その中でこの「赤」は異常に棚で目立ちます

「どこで売られるか?」を考慮して作られている商品の工夫も大きいといえます。インフルエンザに負けないという気持ちも込めた力強い「赤」が、棚の中でも一層力強く展開されたのは売れた要因の1つだと思います。

●2015年〜 PA-3

お次はPA-3。これは尿酸値対策としてプリン体の吸収を抑える効果があるとされ、健康意識が高い層に向けた製品で展開されました。

しかし悲しきかな、尿酸値高い男性ってそこまで健康意識高くないんですよね・・・。むしろ酒飲んで痛風になったらそれを笑い話に変えちゃうような層が多かったり、薬飲みながら笑いながら酒飲んだりする人がまぁ多い領域。(余談ですがかまいたちのYouTube、このシリーズ再生回数異常に高いらしいです。笑)

では、なぜそんな領域にわざわざ出したのか?というとR-1、LG-21の拡販のための一手と言われています。

この3品目が出たあたりから、面展開ができるようになっていきます。ターゲットは違えども、棚の中での目立ち感や「明治棚」で販促ができるようになることで、さらにR-1の拡売にブーストがかかります。
↓確かにこれは棚を作る側からすると並べて見たくなりますね。

●2022年〜 素肌のミカタ

紫外線&肌の機能性表示の商品として発売されます。
この頃、森永がトリプルヨーグルト&便通改善ヨーグルトで猛追をかけてきます。そこに向けた対抗馬として販売されますが、想像以上に売れず現在はほとんど見かけません。
まぁ、パッと見てやりたいことはわかるのですがおそらく誰向けの商品か?がわからなかったのでしょう。。。
発売されて店頭に並んでいるのを見た時、外出前?外出先?いつこれ飲むの?と思った記憶あります。

●2022年〜 脂肪対策ヨーグルト

冒頭にもあったお腹の脂肪対策品として発売されます。
すでに雪印のガセリが尋常じゃないくらいカバーされているなかで、なぜわざわざ出した?と正直思いました。

CMのうたい文句が「新時代の脂肪対策」
実はこの商品、エビデンスを見るとメカニズムが抗炎症作用による脂肪対策で、いわゆる脂肪の排出や蓄積抑制・燃焼促進とは違ったアプローチなのです。

・・・もうこれ書きながら、私も誰がわかるんだ。。。と思ってしまった苦笑

おそらく開発者がまともに説明できないメカニズムって、お客様には10000000%伝わらないです。この辺を改めて再確認できる商品でした。

それもあってイメージに振るためにPKG黒くしたのかもしれませんね。
黒のPKGはかなり目立ちますが今後どう動くかは注目です。
また、メカニズムの件は、正論を伝えることが売れるわけではないという良い事例かと。お客さまは機能を買ってるわけではないですからね。

そして、これら並べると・・・

面で見ると圧巻ですね。一番右は今は見ませんが。
飲料市場って競争環境も激しい中でこれだけ商品が残るのは、ちゃんと研究から独自の真似されない製品化を進めつつ販促展開を進めている良い企業の事例かと。

と同時に、何かに似ているな・・・。

もしかしたらこういう広告とかカテゴリ販促も今後ありうるかもしれませんね。笑

余談 カテゴリ販促事例とメリット

機能性表示は広告ルールで記載しないといけないことも多く、あまり複数商品を展開することがありません。
しかしある程度塊にできる場合はカテゴリ広告で展開する場合もあります。「複数品の認知形成に役立つ」「CMなど宣伝費用をまとめることができる」などのメリットがあります。

明治さんは「働く人のあるある話」をテーマに広告展開を実施してます。
明治の研究姿勢も展開できていて、認知&興味には有用な手法かと。


他の会社だとサントリーさんですね。
現在「健康専門茶」として展開をしています。これは「働く人の健康診断」が切り口かと。

サントリーさん面白いのが、昔はこれ5品くらいでやってたのです。(以下の広告)  この時代があって今は上記のCMに落ち着いてます。

おそらく市場規模、ターゲットの親和性などを検証の上、単品で回す商品とカテゴリに分けたのでしょう。ダイエット系が単品に回ったあたり理由はなんとなくわかる気がします。
おそらく認知を単純にとることを目的にするか、興味理解まで含めた目的かで販促手法が変わるからでしょう。
ダイエット市場は認知状態もそうですが、競合との差を語ろうとすると面広告では少し時間足りないですからね。

おわりに

いかがでしたでしょうか。
明治のヨーグルトドリンク戦略は、ただの「健康飲料」の展開ではなく、R-1の赤や脂肪対策ヨーグルトの黒といった商品パッケージ戦略、さらには消費者ニーズに合わせたカテゴリ戦略など、知っていることで様々学べる部分が多いです。

明治のヨーグルトドリンクが日々進化を続ける背景には、健康意識の多様化や、消費者にとっての「選びやすさ」を重視する姿勢があるのでしょう。
次回、スーパーでヨーグルト売り場を覗いた際には、記事にあった内容などを意識して眺めてみてください。新たな発見があるかもしれません。

それではまた次回、お会いしましょう。

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