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中国茶のしつらえ 紅葉
紅葉が美しい時期です
お茶の道具を持って紅葉狩りも楽しい
お茶をしながら、紅葉について、noteしました
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どうして紅葉する
紅葉のしくみ
多くの植物の葉が緑に見えるは、光合成に必要な光合成色素であるクロロフィル(緑色)のためです
秋になり気温が下がったり日照時間が少なくなると光合成の効率が低下します。そのため
樹木はエネルギー消費を少なくし、動物でいう冬眠のような状態となる準備をします。そのひとつが葉を落とすことです
葉を落とす前に、葉に含まれる栄養素を次のシーズンに再利用するために、幹や枝に回収します。葉のクロロフィルを分解して養分に変えるため、緑色が弱くなり、紅葉がみられるというしくみです
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紅葉の色が違うのは、クロロフィルが弱まったことで元々葉の中に含まれていたカロテノイド(黄色)の色が目立ち黄色になります。
例えば、イチョウなどがあります
葉の中のクロロフィルが分解されるとともに、フロバフェン(茶色)が増えるものは、茶色の紅葉となります。
例えば、ケヤキや、どんぐりのなるナラや、栗の木などです
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紅くなるものは、葉の中のクロロフィルが分解されるとともに、アントシアニン(赤色)が作られることで紅い葉になります。
アントシアニンは光を遮りクロロフィルが吸収する光を減少させて、活性酸素から細胞を守ると考えられています。
アントシアニンにより、紅くなる葉は、イロハモミジ、ドウダンツツジ、ハナミズキなどがあります
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コウヨウとモミジ
「もみじ」は紅葉する樹木の総称です。
また、紅葉する樹木のひとつに楓があり、カエデ属には、「イロハモミジ」などモミジの名がつく樹木があります
「もみじ」は一説には動詞「もみづ」が語源とされています
もみづは「揉み出る」の意で、紅花で染めた絹を「紅絹(もみ)」といい、紅花を揉み出し染料をとるときに「揉み出る」と表現するそうです
また、紅花で染めた糸や反物を揉みだして、それが水中に染み出す様子を「もみづ」と表現していたという説もあります
つまり、動詞の「もみづ」から、紅葉した葉を総称して「モミジ」と呼ぶようになったと考えられます
更に、「もみじ」が名詞化して、特に目立って色を変えるカエデの仲間を「モミジ」と呼ぶようになったと考えられます
簡単にいうと、秋になり葉の色が変わる現象のものを「もみじ」というし、植物の種類に「もみじ」というのもある。という、大きく2つのものにもみじの呼び名がある。ということです
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カエデとモミジ
モミジもカエデも ムクロジ科カエデ属の広葉樹の総称で植物の分類上は同じです。
つまり分類学的にはカエデ属の中にモミジの種があるのですが、その分別は明確なものはなく葉の見た目で分けているようです
葉の切れ込みが深いカエデを「モミジ」、葉の切れ込みが浅いカエデを「カエデ」と呼んでいます。
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カエデは、葉の形がカエル(蛙)の手に似ているので、「かへるで」から「カエデ」と呼ばれるようになったといわれています。
葉が手のひらのように切れ込んだものをすべて「かへるで」と呼び、「モミジ」も手のひらの形をしているので「カエデ」と呼ぶこともあります
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手のひら形のもみじ
赤く染まった葉といえば、手のひら形の「もみじ」というイメージがいつ頃から定着したのかはわかりません
在原業平のうた
ちはやぶる 神代もきかず 竜田川
からくれなゐに 水くくるとは
は竜田川のもみじを詠んだ歌です
奈良県生駒郡斑鳩町竜田の竜田川は今も昔ももみじの名所です。
明記はありませんが、このうたの紅葉は、手のひら形の「もみじ」であると考えられます。
紋様など、水流とモミジの組み合わせた「竜田川」は多くのモチーフとなっています
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川の流れを描いた紙と紅葉で竜田川に見立てたしつらえ
日本美術の紅葉
日本美術をみると、とても多くの意匠に、秋のアイコンとして紅葉があらわされます
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《信貴山縁起絵巻》に描かれた紅葉です
よくみると、何種類かの紅葉があり、そのひとつに手のひら形のもみじがみられます
この絵巻においては、もみじだけをクローズアップして描くことはなく、あくまで秋の景色の紅く染まった樹木のひとつとして描かれているようです
もうひとつ、注目すべきは、紅葉と一緒に鹿が描かれる点です
紅葉と鹿の組み合わせは、秋を象徴するアイコンですが、この絵巻ではそれだけでなく、奈良を想像させる役割もあります
信貴山は奈良県生駒郡にある寺ですが、紅葉と鹿を描くことで、奈良(春日大社や奈良公園)を連想させ、奈良にある寺ということを示唆しています
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平安時代 12世紀
出光美術館
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《伴大納言絵詞》にも、同じようにもみじが描かれますが、《信貴山縁起絵巻》と同じように、単体ではなく、紅葉の樹木のひとつとして、まとめて描かれています
別の場面でも、紅葉した樹が描かれますが、もみじ として意識して描かれてはいないようです
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時代がすすむと、「もみじ」が単体で題材となるます
長谷川等伯の《楓図》は、画面いっぱいにもみじが描かれ、もみじが主役として、画面右から左へと紅葉がすすむ様子もみどことの大画面となっています
楓図がある智積院境内は、沢山のモミジが植えられていて、紅く染まる秋だけでなく、青紅葉の頃も楽しめます
紅葉をたのしむお茶
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秋の紅葉が美しい頃、お茶道具を持って、屋外へ出かけるのも楽しい
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外でお茶道具を広げるのは、ちょっと恥ずかしい かもですが
気持ちがよく、いつものお茶が何倍も美味しく感じられます
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ひとりなら、急須のお茶が注ぎきれるサイズのカップがおすすめです