いよいよ後戻りができなくなったぞ、と涙が出てきた

2人で暮らすことを心待ちに、楽しみに準備を進めてきたのに。いざ住み慣れた一人暮らしの家が空っぽになっていくのを目の当たりにすると、心まで空っぽになっていくように感じてしまった。彼よりも1週間先に私が引越してきたのだが、2LDKの部屋に1Kひとり分の段ボールが運び込まれるのは、とてもあっけなかった。

ああ、自分の確たる拠点がなくなった。

そう感じてしまった途端、後戻りができないところまできたのだと息が詰まった。その夜、不安げな私を彼は「大丈夫大丈夫」と抱きしめた。彼もまた、自分に言い聞かせていたのかもしれない。

これまでも引っ越しや転勤で環境の変化を何度も経験してきていたが、久しぶりの大きな環境の変化に、思いの外やられてしまった。必要以上に自分を追い詰めてしまっていた。

あんなに一緒に暮らしたかった自分はどこに行ってしまったのだろうか?
1人で好きなように暮らしてきたのが心地良すぎて、人と暮らすことにストレスを感じているのだろうか?

コーヒーメーカーが豆を挽く音だけが、前の家の空気を思い出させてくれた。大きな音だなと少し厄介に思っていたのに、今は私に「家」を感じさせてくれる唯一の存在であった。難しいことは考えず、彼が越してくるのをただ待つ1週間だった。

いいなと思ったら応援しよう!