なんかおかしいな、とは気付いてたんだ
新居への引っ越しを2週間後に控えた頃、彼が「眠りが浅い」と言うようになった。2人で暮らすこと自体は楽しみにしている様子だったが、何かモヤモヤしている雰囲気を感じた。
「心配事があるんじゃないの?」と聞いてみるものの、なかなか言葉が出てこない。彼自身、きっと名前のつけようのないモヤモヤとした思いがあるのだろう。「私も、初めて経験することばかりで漠然とした不安があるよ」とだけ伝えたが、自分自身にも言いようのない気持ちが生じていた。
今思えば、2人してマリッジブルーになっていたのだろう。
ちょうどこの頃、周りにも少しずつ結婚すると報告をし始めていた。周りからたくさんかけてもらえた祝福の言葉に、人知れずプレッシャーを感じていったのかもしれない。
今までそんなに気に留めてなかったところが、直してほしいと思うようになってしまった。ほんの些細なことが目につく。「これは一緒に暮らしていけるのか?」と浮き上がってくる疑問に対して、「今さら気にするな」と押し込める日々。
婚約者といっても、自分とは違う人間なのだということを実感し始めた。その違いを認めて、受け止めることができたのは、もっと後のことだった。