初めて一眼を持った頃(その2)
「『写真が上手くなりたければ、標準レンズでフィルム200本は撮れ!』って、言われたんだよ。」とオリンパスOM-1が愛機の同級生に言われたことがありました。『200本って、金ないわ・・・』と思いつつも、『何故200本なんだろう?』と悩むことしきり。答えが分かったのはずっと後のことですが、頭の悪い当時の自分には、仮に200本撮っても答えは出なかったと思います。
頭が悪いついでに、標準1本で山崎カーブに行ったこともありました。ファインダー越しに車両は大きく見えたのですが、当然ながら結果は悲惨なものでした。『やはり鉄道写真は望遠じゃないとダメだ!望遠さえあれば俺だって格好の良い鉄道写真が撮れるんだから・・・』と完全に悪いのはレンズの焦点距離のせいにしておりました。
夏になり、相変わらず手許には撮影1回分のお小遣い程度しかありませんでしたが、10月に廃止される京都市電の撮影を実行しました。これには訳があって、市電ならば望遠でなくてもそれなりの絵作りが出来ると思ったことと、同じ10月末には、廃止が決定しているキハ81「くろしお」撮影を実行しようと考えていたからです。行ったのは8月16日。つまり大文字送り火の日。朝から京都に向かい、駅からは節約の為、撮影しながら徒歩で市内を回ることにしたのですが、後で考えたら「一日乗車券」の存在をスッカリ忘れておりました。記憶が曖昧ですが、京都駅前から智積院、八坂神社、知恩院と撮り歩き、ここで缶ジュースを一本購入。「ええ?この暑い中、京都駅から歩いてきはったんどすか?」と店のおばさんに驚かれたのを覚えています。(写真は五条坂付近で撮影)
そこから、その日初めて市電を利用し、東福寺で下車。あまりの空腹に、近くにあった大衆食堂で一番安い『玉子丼』をかき込みました。ここで降りたのにはもう一つ理由がありました。傾きかけた太陽をバックにシルエットを撮るという目的が・・・。
まだ陽は高かったのですが、この日の撮影で一番のお気に入りの写真となりました。太陽の光がクロスしているのは「クロススクリーン」というフィルターを使用したからです。望遠レンズは高価で簡単に買えませんでしたが、フィルターなら、月のお小遣いで買える範囲のアクセサリーでした。そしてカタログを見て、真っ先に買ったのがこの「クロススクリーン」です。当時別に夜景撮影に行く訳でもなかったのですが、昼間、こういった使い方で遊んでおりました。
ここから先の記憶が超曖昧なのですが、東寺バックで歩道橋の上から撮影したコマ。国鉄の下をくぐる西大路付近を撮影したコマがあった後、いきなり北野白梅町辺りのコマに飛んでいるのです。という事は、西大路から、この日2回目の市電を利用したようです。鮮明に覚えているのは、帰路の交通費しか手元に無く、通りがかりのお店の人に頼んで、水を一杯飲ませてもらった記憶があります。そこまでして送り火まで待ったのですが、大文字バックの撮影可能な電停は、利用者以外立ち入り禁止を喰らい、この日は空腹を我慢しつつ、泣く泣く帰路に着きました。
参考サイト 京都市電路線図 http://otoohan.starfree.jp/siden1.html
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