【アート時事】「美術館女子」問題を考える
SNSで批判殺到。「美術館女子」という企画について考えたいと思います。
個人的見解ですので、お手柔らかにお願いします。
※2020年7月追記:読売新聞オンライン「美術館女子」のページは、沢山の批判を受けたことから、2020年6月28日時点で閉鎖されました。
1.美術館女子とは
アイドルグループAKB48と、読売新聞がコラボした企画で、「アイドルが美術館の魅力を紹介する」というものです。
サイトに飛んで見てみると、美術館の建物や作品を背景にして撮影されたアイドルの写真と、簡単な美術館の紹介が載っていました。
★美術館女子 公式記事はコチラ
2.「◯◯女子」というくくり
さて、この企画の何が問題視されているのでしょうか。
Twitterで「#美術館女子」というタグを検索みると、皆さんのツイートはほぼ「◯◯女子という表現がおかしい!男子、女子分けるなんて!」という内容です。
みんなのものであるはずの「美術館」に、「女子」というくくりをつけることや、「女子」をつけることによって付加価値を付けようとしていることに、違和感を感じている人が多いようです。
数年前は「女子力」なんて言葉が大ブームでしたが、確かに最近では女子、男子とわける表現はあまり好まれない傾向があるように感じます。海外では「女子トイレが赤のマークなんて決めつけだ!差別だ!」みたいな話があったとかなかったとか。ジェンダー表現に気をつけよう、という動きは、世界的なものなのです。
このような批判の中には「ちょっと過敏になりすぎなのでは?」というものも見受けられますが、度合いについてはさておき、取り扱い注意なワードであったのは間違いないです。
今回、新聞会社さんの企画であったことを考えると、世界情勢や世論を知り、発信する会社だからこそ、世間の思想に配慮があったほうが良かったかも知れません。
でも、正直、私は「女子」というワードにはそこまで不快感は感じませんでした。それは中高女子校だったから「女子」とくくられることに違和感を感じていなかったり、響きがなんだかかわいらしくて語感もよくて便利だったんだろうな、という背景が理解できなくはない(いい悪いは置いといて)など、いろんな理由があります。
ただ、この企画に大賛成!ではありません。
違和感は感じています。
3.「美術館なんてきたことがなかった」設定から見える矛盾
下の写真は、公開されている記事の画面キャプチャです。
すごく違和感を感じました。
それは「草間彌生、アンリ・マティス、宮島達男…。館内に展示された世界的作家の作品は」というところです。
え、これ、芸術関連の知識の少ない、美術館に普段こない人にきてほしいっていう企画でしたよね?
草間彌生さんは、美術興味なかった人でも知っている可能性はあると思います。でも、アンリ・マティス、宮島達男…知らないでしょ!!絶対!!!笑
どう考えてもスタッフが美術館のホームページをもとにして書いた文章!!
「美術知らない」人向けの企画のはずなのに、宮島さんといった、美術に詳しくない人は知らなさそうな人の名前を、世界的に有名で知っていて当然の人、と感じさせる書きっぷりで紹介…「知識ない状態でいくのは恥ずかしくない」というアピール文章のなかで、さりげなく知識を押し付けてきてきる気がしてならない…。
私がひねくれすぎでしょうか笑
人々の価値観は様々です。みんなが評価していたって、良さがわからなかったり、こころに刺さらない作品はたくさんあると思います。
逆に無名の作家さんの作品でも、刺さるものは刺さります。
せっかく知識がないという、先入観のない真っ新なクリーンな心で見に行ったはずなのに、世界的に有名な作品たち〜なんて感想…あるかな?!
ちょっとモヤモヤしちゃう。スタッフが文章を考える、なんてことはよくあることとは思いますが、なんかもっとしっくりくる文章考えていただきたかったな〜と思いました。
4.さらなるモヤっと「インスタ映え推し」
また、記事を読み進めていくと、「オノヨーコさんの作品と写真が撮れるなんて!」「こんなインスタ映えスポットがあったなんて!」と、美術館がインスタ映えすることをぐいぐいと推してきます。まさかの最後の締めもインスタ映えの話。
インスタ映えは、間違いなく重要な商売戦略のひとつです。何年か前の森美術館のレアンドロエルリッヒ展も「インスタ映え」が追い風になって動員数が多かったのだと思います。
でも、「企画展」の枠を超え、「ひとつの美術館」の最大の売りが「インスタ映え」と捉えられるような文章を書く…うーん。
この記事は美術館も事前に目を通して、OKをだしているはずなので、「ご納得されてるなら他所の人間が口出しすることではない」ですし、いいとは思うのですが…
美術館に撮影目的の人が殺到したら、困るはずなんです。確実に。
作品の前でポーズをとる。それをカメラで撮影する。その行列ができる。
トリックアート館じゃないのだから、それは望ましい姿ではないはずです。
でも、今回のアイドルの女の子のファンの人は、きっと、同じ場所で、同じポーズで写真を撮りたいはずです。
記事を読むと、それを推奨しているようにも見えますし、そのような状況になっても、ファンの子たちを責められないと思います。
ちなみに、江戸東京たてもの園のホームページには下記の注意書があります。
*江戸東京たてもの園公式HPスクリーンショット(HPはコチラ)
「写真撮影」に対して、本当はルールとして、ここまで細かく示さないとだめなんです。
美術館に普段こない人に、暗黙の了解を求めるのは難しいです。
5.最後に
掲げている企画趣旨と、内容にギャップがあったから、批判が多いのかなと感じました。
ただ私は、基本的には「その美術館が納得して協力しているなら、いいんじゃないかな?」と思っています。コロナ禍、美術館も新しい道を模索中なのではないでしょうか。
ハラハラドキドキしながら、今後の展開を見守っていきたいと思います。