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ひかり・サンダバより複雑!?ややこしすぎる阪和線快速の歴史
I. なんじゃこりゃ
突然だが、紀州路快速とはどんな列車ですか?と聞かれたら、
どう答えるだろうか。
考えに考えても確実に反例が出てくるのだ。
例えば、大阪環状線に直通運転する列車と答えても、
朝と深夜帯には阪和線天王寺駅を発着する列車があったり、
関空快速の後ろ4両に連結している列車と答えても、
関空快速単独の8両運転があったりと、答えがないのが紀州路快速なのである。
阪和線には、これ以外にも、区間快速・(ただの)快速があり、かなりカオスな状態。
さらに過去に遡ると様々な快速列車があった。
ここまでくると、あなたも阪和線の沼にどっぷりとはまっているよ。
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II. 阪和線快速の歴史
①阪和電気鉄道時代
1929年:阪和電気鉄道として、阪和天王寺(現:天王寺)-和泉府中、鳳-阪和浜寺(現:東羽衣)駅間開業。
1930年:和泉府中-阪和東和歌山(現:和歌山)駅間開業により、全通。急行の運行開始。
1931年:特急の運行開始。
1933年:阪和天王寺-和泉府中駅間で準急の運行開始。特急を所要時間短縮させ、超特急に格上げ。
1935年:阪和中之島駅(現在の紀伊中ノ島駅)に隣接して、国鉄和歌山線の紀伊中ノ島駅が新設。超特急・急行の一部が当駅に停車。当駅停車の超特急を特急に格下げ。
1936年:阪和天王寺-阪和岸和田(現在の東岸和田駅)間各駅、阪和岸和田以南通過運転の直急の運行開始。
1937年:直急の運行廃止。
1940年:準急の運行廃止。南海鉄道との合併契約書にサイン。
②南海山手線時代
1941年:超特急・特急を急行に吸収合併。
1942年:南海高野線との交点に三国ヶ丘駅新設。
1944年:戦時買収により、国鉄阪和線になる。
③国鉄阪和線時代
1944年:名称変更。南海天王寺駅が天王寺駅に、南海東和歌山駅が東和歌山駅に。南海鶴ケ丘停留場が鶴ケ丘駅、臨南寺前駅が長居駅、我孫子観音前停留場が我孫子町駅、山手浅香山停留場が浅香駅、堺金岡停留場が金岡駅、百舌鳥御陵前停留場が百舌鳥駅、山手羽衣駅が東羽衣駅、葛葉稲荷停留場が北信太駅、泉ケ丘停留場が東佐野駅、砂川園駅が和泉砂川駅に改称。このころから、紀伊中ノ島駅にすべての列車が停車するように。
1946年:6年ぶりに準急が復活。急行が臨時便に。
1950年:9年ぶりに特急が復活。急行が定期便に。
1958年:特急・急行が、快速・直行に名称変更。
1960年:津久野駅が開業。
1963年:和泉鳥取駅が開業。
1965年:金岡駅が堺市駅に改称。特急「くろしお」、特急「あすか」の運行開始。
1967年:あすか廃止。
1968年:東和歌山駅が和歌山駅に名称変更。直行が区間快速に名称変更。
1972年:新快速運行開始。
1976年:全列車6両での運転開始。
1977年:熊取・和泉砂川が新快速の停車駅に。
1978年:新快速廃止。快速増発。
1983年:一部の快速で8両運転開始。
1984年:下松駅開業。関西初のホームライナー・「ホームライナーいずみ」が天王寺-日根野間で運行開始。
1986年:国鉄最後のダイヤ改正に伴い次のように変更。
東岸和田が快速の停車駅に、三国ヶ丘が区間快速の停車駅に。
日中運転の区間快速をラッシュ時のみの運行に、快速が天王寺-日根野・和泉砂川間で日中運転開始。
ホームライナーいずみの運転区間が天王寺-和歌山間に延長、「はんわライナー」に名称変更。
④JR西日本時代
1987年:国鉄民営化に伴い、JR西日本が承継。
1988年:B快速運行開始。
1989年:ダイヤ改正に伴い、次のように変更。
日中のB快速の運転中止。快速が天王寺-日根野・和歌山間で3本/時の運行(一部は紀勢本線直通)。
日中の普通は天王寺駅 - 和歌山駅間3本と、天王寺駅 - 熊取駅・日根野駅・和泉砂川駅間でそれぞれ1本ずつに。
天王寺駅 - 五条駅間で快速が運転開始(朝方上り1本・夕方下り2本)。
1989年:天王寺駅構内の阪和線から大和路線への渡り線が開通。
特急「くろしお」が大阪環状線を介して新大阪駅・京都駅まで直通運転を開始。
特急「スーパーくろしお」が運転開始。
1994年:関西国際空港開港に伴い、大規模なダイヤ改正。
223系0番台が運転開始。
関西空港線開業。
223系電車による、天王寺-関西空港間の(ただの)快速の運転開始。
特急「はるか」、関空快速の運転開始。日根野が快速停車駅に。
1995年:関空特快「ウィング」運転開始。
1996年:
鳳以南の最高速度が120km/hに引き上げ。
283系が、特急「スーパーくろしお オーシャンアロー」として運転開始。
平日ダイヤで運用されていた土曜日が休日ダイヤに。
1997年:特急「スーパーくろしお オーシャンアロー」が「オーシャンアロー」に名称変更。
1999年:ダイヤ改正に伴い、次のように変更。
223系2500番台が運転開始。
紀州路快速の運転開始。
三国ヶ丘・紀伊・六十谷が快速停車駅に。
関空特快「ウィング」が廃止。
2000年:
日中の天王寺駅発着の快速が221系に置き換え。
日中の紀勢本線への快速は和歌山駅で系統分割。
2008年:
関西本線との連絡線が複線化。
大阪環状線に直通する直通快速が運転開始。
2010年:225系5000番台が運転開始。
2011年:ダイヤ改正に伴い、次のように変更。
日中15分サイクルのダイヤに。
「はんわライナー」が廃止。
225系5000番台が快速だけでなく、日中の区間快速や関空快速・紀州路快速の運用にも就く。
2012年、ダイヤ改正に伴い、次のように変更。
紀勢本線の特急「オーシャンアロー」「スーパーくろしお」「くろしお」がすべて「くろしお」に列車名統一。特急「くろしお」に287系電車が投入され運転開始。
区間快速を除くすべての快速列車が223系・225系に統一される。
2016年:
225系5100番台が運転開始。従来の223系・225系5000番台が普通列車の運用にも就く。
103系4両編成・205系1000番台が運用撤退。4両編成の普通列車がすべて3扉車(223系・225系)となる。
2018年:ダイヤ改正に伴い、次のように変更。
ダイヤ改正に伴い、羽衣線を含む全ての快速・普通列車(日根野駅 - 和歌山駅間の下り初電・上り終電を除く)を223・225系で運行。
羽衣線2駅のホームを延長し供用開始。
新大阪発着快速が全廃止。
2020年:日根野駅 - 和歌山駅間で運用されていた113系2000番台の運用が終了。すべての列車がJR発足以降の車両で運用されるようになる。
III. 全種別解説
※すべて語ると途轍もないことになるので、JR民営化以降の種別を解説する。
①はんわライナー
関西初のホームライナー。前身は1984年に運転を開始した、「ホームライナーいずみ」。
停車駅は、天王寺、鳳(下りのみ)、東岸和田、熊取、和泉砂川、和歌山。
②関空特快「ウィング」
編成中の1両を普通車指定席にした、特別快速。
大阪-関西空港間で、リムジンバスへの対抗策として登場した種別だが、
利便性でリムジンバスに及ばない
高速道路が予想以上に渋滞しない
誤乗が絶えず、自由席の混雑に拍車をかける
と、メリットがなかったため、わずか5年で廃止された。
停車駅は、天王寺、堺市、鳳、和泉府中、日根野、りんくうタウン、関西空港。
③B快速
天王寺-日根野間の快速停車駅と、日根野-和歌山間の各駅に停車していた列車。
2018年に、紀州路快速に統合される形で、廃止。
現在、阪和線内日根野以南各駅停車の快速は、紀州路快速として運転。
④(ただの)快速
阪和線の天王寺駅発着で、関空快速と併結せず、また、大阪環状線直通の鳳・東岸和田・日根野行きの列車。
日中時間帯は運転なし。
大半の和歌山行きは、和泉砂川で紀州路快速との緩急接続を行う。
停車駅は、(環状線方面→)天王寺、堺市、三国ヶ丘、鳳、和泉府中、東岸和田、熊取、日根野、和泉砂川、紀伊、六十谷、和歌山。
⑤直通快速
発駅にかかわらず、大阪環状線内で各駅に停車する列車。
上り、天王寺・大阪方面のみの運行。
阪和線内の停車駅は、(ただの)快速と同様。
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⑥関空快速
大阪環状線内でも、快速運転を行う関西空港駅を発着とする列車。
日根野まで、後ろに紀州路快速を併結して運転。
一部は、阪和線天王寺駅発着で、紀州路快速を併結しない、8両単独の関空快速も存在する。
紀州路快速とともに、日中の阪和線内最速の快速。
環状線内の停車駅は、天王寺-大阪間の各駅と、福島、西九条、弁天町、大正、新今宮、天王寺。
阪和線内・日根野までは、(ただの)快速と同様。
関西空港線内は、りんくうタウン、関西空港。
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⑦紀州路快速
大阪環状線内でも快速運転を行う和歌山駅発着列車(一部きのくに線内発着列車)および阪和線天王寺駅発着で関空快速と併結する列車。
日根野まで、前に関空快速を併結して運転。
関空快速とともに、日中の阪和線内最速の快速。
この電車は、停車駅が時間によって異なり、
朝方の一部は、日根野以南も通過運転を行う。
それ以外の列車は、日根野以南各駅。
停車駅は、日根野まで関空快速と同様。
日根野以南の朝方の一部の列車は、快速と同様の停車駅である。
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IV. まとめ
ややこしくて混沌を極めている阪和線の快速だが、
普段乗る際は、和歌山まで行くなら紀州路快速が1番速いで覚えてもらってよい。
あ、後は関空快速と紀州路快速の誤乗が常日頃起こっているから注意していただきたい。