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Time to give

先日、メルボルンでの2シーズン目を終えた。
端的に結果を言うと、チームは降格が決定。自分自身も大した結果を残せずあっという間に終わった。

そしてこのシーズンを受けて、決めたことがある(厳密にはシーズン途中から決めていたが)。
今シーズンをもってサッカー選手を引退するということ。
もちろんサッカーは大好きだし、サッカー自体は一生していくとは思うのだが、選手として上を目指したり、人生をサッカーにかけるのはここで終わりにしようと思う。
理由は色々ある。
シンプルに自分はこれ以上、上にはいけないのだろうと感じる事も多くなったのも事実。
実際、最後の試合ケガをしてていたが降格をかけた大事な試合だったため、痛み止めを飲んでギリギリ前半だけ出た。
前半だけで交代すると分かっていたため、やり切ってヒーローで終わろうと思っていたが、いくつかあったチャンスを決めきれず、予定通り交代して、チームはそのまま敗北、降格。

その時には、既に引退は決めていたが、改めてチャンスを物に出来ない自分に失望したし、自分はこの道ではないと確信した。

思い返せば、ずっとそうだった。
なんとなく器用にどのプレーも無難にこなし、高校時代もちゃっかり試合には出ていたが、いつも大した活躍は出来ず、目立たず無難にやっていた。
自分はそれを都合のいい様に”縁の下の力持ち”と呼び、自分を騙し続けた。
チャンスを物に出来ていなかっただけなのに。

自分に対しての”洗脳”はつい最近まで続いた。
物心つく頃からボールを蹴り始めた自分にはサッカーしかなかった。
だから、自分のアイデンティティのほとんどを占めるサッカーが向いていないと認めるのが怖かったし、なにより少しでもこんな自分に期待してくれていた周りの人々を裏切りたくなかった。
もちろん本当にサッカー選手にはなりたかったし、そこ嘘はないが、全てを失うのが怖くて、失敗しない様に逃げて逃げて、無難に要領良く生きてきた感じがする。

そんな中メルボルンにきて結婚した。守るものができた。
全ての選択を自分のことだけで考えなくなった。自分の家族、妻、妻の家族。と周りの人のことをより考えて生きる様になった。
そこで気づいたことがある。
人を幸せにすることが何よりも幸せだということ。
それまで自分は自分がなりたいというサッカー選手を目指して、生きてきた。
そしてその自分にさえ、騙し騙しでやってきた。
だが、好きな人には嘘はつけなかったのだ。
自分のために生きるのと人のために生きるのでは、湧いてくるパワーが天と地ほど違うのである。
そこに気づいたタイミングで、この人と自分を取り巻く全ての人々を幸せにしようと決めた。

自分もまだ22歳。もしかしたら今からでも人一倍努力すれば自分が生活する分にはいいところまでいけるかもしれない。しかし、新しい壮大な夢を叶えられるほどには難しいだろう。
それならば、もしかしたら小さな成功が待っているサッカーの将来より、その時間を別のことに使い、みんなが想像し得ない事を成し遂げて、家族を幸せにし、子供に偉大だと思われる父になるほうが、残りの命をかけられると思った。

今までは色んな人に支えられて自分のためだけの夢を追ってきた。
行きたい高校に住所を移してまで行かせてもらい、下手くそなのに一丁前に高い革のスパイクにこだわり、海外に行きたいといえば行かせてもらい、妻も夢のためならと会えなくても、何もしてあげられなくても支えてくれた。
そろそろ人のために生きる時だと感じた。もっとも、それが一番自分を幸せにするので自分のためでもあるが。
人から与えてもらってばかりだった人生。少しずつ返し始める頃だと思う。

Time  to give である。

どんどん人々が自分自分主義になっていくこの世界で人のため、子供のために生き、そしてそれがどんなに幸せかを伝えていくことに自分の人生を使いたい。

よく”生きる意味”、”生まれた意味”は何かというテーマを目にする。
愚問。繋いでいくためである。
少し脳味噌が大きく、少し賢く図々しい人間は、自分のために意味を付けたがるが、全ての生物は愛を持って繋ぎ、愛を持って伝え、愛を持って守っていく。
愛というのは単なるLOVEではなく、もっとシンプルで複雑な、もっと簡単で深い愛である。
何よりも自分を大切にしたがる今日の人間では、平和な世は作れない。
本当は我々も知っているはずだ。すべては愛だということを。

少し話が逸れたが、つまり言いたいことは、一つの夢は諦めたが更に大きな夢を既に持ってしまっているということ。
そしてその夢は自分自身のためではなく、家族や人々のためであるという事。

人生第2章がはじまる。
それは壮大でメインストーリーになるだろう。

『日本を今一度洗濯いたし申候』









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