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あっけない

「今月いっぱい生きれるかなぁ」
すっかり頬がこけた80歳代の男性が
布団から顔を出して力ない声で言った。

「もう生きれないかなぁって感じがするんですか?」と私が聞く。

「いや、そうなことはないけど。でもどう思う?」

「今月はこの調子ならきっと大丈夫。何ヶ月も大丈夫かってきかれたらそれはわからない…。」と答えた。

「いやさ〜、今月みたいな寒い時じゃなくて、もうちょっと暖かくなってからがいいなぁって思ったんだよね〜」と
乾いた唇で語った。
「寒い時はやめとこ。暖かくなってからがいい」と私も言った。

最近は、痛みの為に寝ている事がめっきり多くなっていた。
医療用麻薬の量も少しずつ増えていた。

一人暮らしの彼は、医師からはそれほど長くは生きられないことは聞かされていた。

そっか、そっか
そんな事考えてたのかぁって思ったら
なんだか泣けてきて…。

一人でこの人生をお終いにしていくって
どんな感じなんだろうか。
そんな凄いことを自分1人で処理して行かなくちゃいけないのかぁ。

恐怖や不安はないのだろうか。
寂しくはないのだろうか。
この時が来たら私もこんなふうに
受け入れていけるのだろうか?と思った。

こんなに
強くいられるかな、私。

今日は、
もう1人、私と同年代の女性とも話した。

彼女も長くはないと告げられている1人。
黄疸で目まで黄染を認めていた。
彼女もベッドにいる時間が
圧倒的に増えていた。

最期の時間をいけるところまで
年老いたご家族と過ごすことを目標に
家に帰ってきた。

「最近は、お布団の中でどんなことを考えているんですか?」

「それがねー、何も考えないのよ。眠くて寝ちゃうの」と痩せ細った指で口を覆い笑っていた。

え、そうなの?
何も考えないの?

今は、お二人とも私の目の前にいて
こんな風にお話ししてくれて
大切な時間を共有してくださっているのに
そんなに遠くない未来に
旅立ってしまうなんて。

✳︎          ✳︎


昨夜もお一人、天使になったかたがいて
お見送りをしてきた。
そのご家族がお看取りの後
「なんだか、あっけない」と言われた。

ほんとに
あっけない…。

みんな
あっけない
あっけなさすぎる。

そんなに
あっけなく行かないでって思う反面
辛いのもわかってるから
あまり苦しまなくてよかったとも
思うけど。

なんだか

あっけなさに
置いていかれてる私。








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にゃむ
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