真夜中の緊急コール はこんな感じ/医療・看護
<夜間緊急コールを固定電話にかけていた時代>
まだ携帯電話が普及していない時代の病棟夜勤をふと思い出した。
当時勤務していたのは外科系の病棟が多かったので術後の急変など度々だった。
スマホが普及している今では、考えられないけど当時は夜勤で何かあれば、ドクターのご自宅の固定電話に電話をしていた時代だ。
多くのドクターの場合、奥様が電話口に出てくれていた。
このドクターの奥様に夜間電話するのは、いつも機嫌が悪いから電話するのは気が重いなぁと思う時もあった。
一方、恐妻家のドクターは、奥様ではなく、ドクター自身が小さな声で電話口に出てきていた。なぜかこっちも背中を丸めて思わず小声で喋る。こなきじじぃ同士が喋ってるイメージ。
ドクター達も夜中に感動するくらい気持ちよく応対してくれるドクターもいた。眠たかろうに・・・。本当にありがたいと思った。
「はいはい、どうしました?」と優しく言ってくれたらそれだけで泣ける。
夜が弱い人もいるだろうけど、夜は弱いことを武器にはできない。
機嫌悪いドクターもいたので、特に夜間の電話は気を遣った。
ま、これは、今の時代も同じ。
<真夜中、ドクターに緊急コールをかけるとき>
ドクターに電話をかける時、もちろんかける側は、夜間に起こしてしまって申し訳ないなぁとか、折角家に帰ってゆっくりされているところ申し訳ないなぁと言う気持ちで電話をしている。
それでも患者様やお客様の為にかけなければならない。
そして、患者様やお客様にとって有益でベストな回答が欲しい。
以下のような配慮は必要だと思う。
1 この件は本当に今伝えた方がいいことなのか?明日の朝では遅いのか?
2 伝えたいことは、1回の電話で済むようにまとめることができているのか?
更に言うなら
3 導入部分は、寝ぼけている先生の眠気に寄り添いつつ目覚めてきたら再度重要事項を伝え、明確な回答を得る。
4 疲れて寝ているところを起こしていることに対して心から本当にごめんなさいと感謝の気持ちを添えることを忘れない。次に会った時にもお礼を忘れない。
そんなこんなを経て今・・・。
今は、訪問看護なので在宅医療に携わるドクターとの連携が多い。
在宅のドクターに関しては、夜間の緊急あっての在宅医療なので、病棟の時のように真夜中のコールも機嫌悪く出るドクターは圧倒的に少ない気がする。
私たちも緊急コールを受けて真夜中に対応しているという意味においては、お互いにお疲れさま〜という部分もある。
私は、今は、1週間の半分以上、夜間の緊急電話を持つことが多い。
10年くらい訪問看護をしているけど、最初の頃の職場では、緊急電話を持つことが全くなかった。
週に4日くらいしか働いていない働き方をしていたせいもあるし、何よりも往復3時間かけて通勤していたこともあり、緊急で呼び出されても訪問するまでにタクシーで行ったにしても1〜2時間くらいかかる可能性もあるので辞退していた。
心理的にも緊急コール当番の手当を頂いたとしてもできるなら持ちたくないと思っていた1人だった。
また、都心の訪問看護と地方の訪問看護とでは交通事情が違うので印象も違うかもしれない。(以前の職場は、遠方から通勤している看護師が当番で出動する場合にタクシー代が必要ならそれもお客様負担になると言うシステムだった)
訪問看護は“緊急訪問看護加算”と言うものがある。
緊急訪問看護加算
訪問看護を利用されておりこちらの加算を契約すると利用者またはその家族から電話などにより看護に関する意見を求められた時に常時対応ができる。また必要に応じて緊急訪問を行うことができる体制を整備していることに対する加算
緊急コール専門の人がいるわけではなく日中も普通に働いて次の日も普通に働く看護師が、夜間いつでも電話連絡受けられるような体制をとっている。
だから病棟の夜勤看護師とはまた違う。
余談・・・
アルコール大好きな人たちにとっては、この緊急電話を持つと言うことはアルコールが飲めないと言う覚悟を決めた日になるようだ(笑)
私は、最近は、アルコールを殆ど飲まないのでその点は全く地獄ではない。
不思議なのは、普段は飲まないくせになぜか緊急電話を持つ日に限って一杯くらい飲みたいなと思うことがある。
どこかに天邪鬼的な要素を持っているようだ。
夜間の緊急コールは、ちょっと大袈裟に言わせてもらうなら
<人間力を試されている>と思っている。
これは、私の勝手な解釈だけど、
“夜”という時間は、潜在意識が優位になっている。
つまり理性がおとなしく寝静まっている時に不意打ちで真夜中に緊急コールが鳴るわけで・・・。
理性が現れる準備前の自分で本当の人間力が出やすいのでは?と思っている。
或いは、違う見方をすると、そんな状況の中でも理性が瞬時に出てくるようプロフェッショナルな部分も必要なのかもしれない。
私の場合は、大した人間力はないので後者だろう。
夜間にドクターに電話をして緊張したり嫌な気分になる経験をしたからこそ自分は嫌な気持ちにさせたくないといつも思っている。
あの時、先生、嫌な気持ちを味わわせてくれて本当に有り難うとさえ思っている(嫌味な奴になってますか、私)
だから、今、お客様がどんな気持ちで緊急コールを鳴らしてくれているのか気持ちが痛いほどわかる。
多くの人は、ギリギリまで我慢して葛藤後に電話をしてくれている。または、それまで一生懸命に介護されていて、その延長で時間すら忘れて電話をしてくる人だってある。
緊急コールの第一声のトーンは、とても大事だと思っている。相手を気遣わせないトーンで出ることだけは心掛けている。
以下に私なりに気をつけていることを思いつくものだけ書いてみた。
<緊急コール当番になったら>
緊急電話当番になったら・・・
① まずは、緊急コールが正常に機能しているか電話をして確認する
②自分が寝ていても起きれる音量と音をカスタマイズし、電池残量を確認する
③ 時々、着信が入っていないかを画面でも確認する
④ 当日、緊急コールがかかる可能性がある人の簡単な情報収集をする
⑤ お風呂に入る時もトイレに行く時も着信が聞こえる距離に電話を置いておく
⑥ 映画館や電波の届かない地下には行かない
⑦ 寝る時には枕元にメモとペンを置いて寝る
⑧緊急コールを持つ時の心の状態
❶エンジェルモードになる
今日は、エンジェルだからいつでもどうぞと言う心持ちになる
(エンジェルモードになれない時には可能なら誰かに持ってもらう)
❷動く時には動くんだからそれまではめちゃくちゃリラックス
⑨緊急コールがなった場合の対応
❶寝起きだったとしても10歳くらい若い爽やかな声で出る
(寝ていたことで気を遣わせないように)
❷寝ぼけているとなかなか頭が整理できないのでメモを取る
❸内容を確認する
❹訪問した方がいい内容か電話のみで対応していい内容かを検討するとともに相手の方は訪問を希望されているのか電話だけでいいと思われているのかを確認
❺電話だけの場合、不安に思われていたことが解決できているかを確認
❻訪問する場合、どれくらいの時間で到着するかをお伝えし、到着を待っている間に状態が急変した場合のアドバイスを行う
❼お電話を頂いたことに対してお礼を伝える
❽訪問診療医に直ぐに伝えた方がいい場合のみその場で報告する(できるだけドクターも寝かせてあげよう)
<訪問看護の緊急コールの内容>
概ねこんな感じの内容が多い。
1 終末期のお客様のご家族から
呼吸が変化してきている時、
呼吸停止している時、
がん性疼痛のコントロールをどうしたら良いかの相談など
2 精神状態が不安定な場合、眠れない場合
3 痰が絡んでむせている時(吸引希望)
4 発熱がある時
5 転倒した時
6 便失禁した時
7 点滴が漏れている・止まっている・アラームが鳴っている
この辺りが多い内容となっている。
変わり種も色々ある。「えーとオムツにつけるあれなんて言うんだっけ?(→尿とりパットね)」「えーとあの手のひらに乗るやつなんて言うんだっけ?(ヨドバシカメラのゴールドカードね)」みたいなのも・・・笑
夜間に緊急コールが鳴らなくて済むような日中の看護ケアも重要だと思う。
お客様やご家族の為にも最善の状態で夜間が過ごせるように日中の間に整えていくことは言うまでもない。
整えた上でのそれでも・・・と言う状態の為の緊急コールだと思う。
そして、緊急コール当番ではない人も自分が受け持ったお客様の急変が予測される場合は、当番の人に伝達しておくことでお客様の不安も最小限となるだろう。
そして、急変の可能性がある場合は、当然、ドクターにも報告は必要。ドクターも今日は飲むのはやめとこかーと言う心づもりもできるかもしれない。
今回は、ちょっとマニアックな内容を記事にしてみた。
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何かのフレーズが誰かのお役に立てたり、在宅医療、在宅看護の世界ってこんな感じなんやーと言うことが伝われば嬉しいです。
さて、今日は、読む予定の本がどんどん溜まってきたので今からお昼寝をした後に読書と断捨離をしていきます。