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冒険の続き | DECADANCE 太陽の子 感想

1月25日 18時 
EX THEATER ROPPONGI
脚本・演出 西田大輔

上演中の作品ですので、ネタバレにご注意ください。
あくまでも個人の感想です。誹謗、中傷を目的としたものではございません。

やっと、西田さんのオリジナルを見ました。
正直、合わないな、苦手だなと思う脚演出家です。
昨年、原作ものの作品で初めてみてあまりに合わなくて、集中が途切れてしまったことから少し避けていたのですが、やっぱり1作品で判断するのもなと思ったのと、演出家はやっぱりオリジナルを見たほうがその人の好みや思考がわかるかなと思ったので、今回観ることを決めました。まぁ、この前の週にモリステもみてるんですがね。

観劇して、劇的に見て良かった!最高!と心変わりすることはなかったのですが、自分にとって何が苦手なのか、逆に自分は苦手だけどこの人の受け入れられる魅力はどこにあるのかがつかめた気がしました。
そう言う点で見て良かったです。

決してお話が面白くなかったとは思っていないので、ただ単純に演出が合わないだけなんだろうなと思います。

お話はすっごいファンタジーでしたね。
ディスグーニーのシリーズ?は見たことがないのでお話が繋がってたりしたらわかってない部分も多いかなと思いますが、この作品だけでしっかりエンディングを迎えられていて個人的に満足です。

兄を探す妹、兄のかつての昔馴染み。
太陽の子。滅びの魔女。荒れる王国。憤る民衆。
そして、宝物の地図とかつての冒険。

アンナという少女が軸で話は進むんですが、彼女が兄のかつての友人や仲間に出会い。真実に出会い、成長していく物語としての側面と、テイラーという「太陽の子」と呼ばれた希望を体現したような子供が、大人になり希望を捨て現実に飲まれ苦しみながらもまた一歩進み出すそんな2つの意味を持ったお話でした。

話の流れを簡単にいうと、

兄を探してアンナという少女が内政がぐらついている隣国へ渡ろうとする。その時にあったのは兄を知るパサドと出会う。パサドに案内され隣国に入ったアンナは、革命ゲリラである村田さん(ごめんなさい名前忘れました)、とダナエ夫婦に出会う。
兄を知るパサドに導かれるまま革命軍に入ったアンナは兄を探しを開始する。

ヒントは兄の残した手紙と古い地図。

「この国の王家には二百年に一度、魔女が産まれる。
破壊の言葉を持ったその魔女を生かせば、国は滅ぶ」

出会った先で知る、兄とやさしい初恋の人テイラーのこと。
太陽の子と呼ばれるテイラーはいつでも町の人気者だった。テイラーの元にはいつも集まる3人がいて、テイラー、マリウス。ジェンバ、パサドの4人は名物の4人だった。
そんな4人はたくさんの冒険をした。臆病なパサドを置いてきぼりにしながら見つけた宝を3人はそっと持って帰り、別れた。

マリウスは王家の妾腹の子だった。全王が崩御して五年、姉の旦那が即位することがなく国は荒れた、即位の見通しがたった今マリウスは目的のために動き出す。革命軍を巻き込んで。
圧政で国民は困窮していた。王家内部ではマリウスと、時期王である姉の旦那であるシオンが敵対して腹の探り合いを繰り広げ、姉であるエリシアは気を病む日々が続いていた。

暴虐の限りを尽くす王家を止められるのはかつて、自分たちの希望だった「太陽の子」と「破滅の魔女」のみ。
革命軍はアンナを「破滅の魔女」としてかつぎあげ、王家、情報屋それぞれが暗躍しながら目的をつかんでいく。

情報屋であるジェンバはパサドをおいて進んだ冒険の先で見つけたものに、区切りをつけようとする。
それは、マリウスとテイラーも同じだった。

即位の日に乗じて始まった暴動に、王へ反旗を翻すマリウスと王家を滅ぼそうとする民衆。
マリウスを止めたいテイラー、そしてマリウスの思惑に気づいたジェンバはかつての冒険で見つけた宝物を、かえそうとする。

3人が古い地図を元に大きな城の地下牢を探してたどり着いた宝物。
二百年に一度生まれる魔女の烙印を押されて捨てられたマリウスの姉、エリシアが生んだ子供(アンナ)だった。

アンナの兄としてアンナを育てたジェンバは城でアンナと再会する。
アンナはうすうす自分が何者か、何をすべきか気づいていた。
兄とアンナは約束をする「王家を許さないというならそれがお前の覚悟で罪だ。忘れるな」

崩れゆく城、息を引き取った王になるべきシオン。そして彼の腹心たち。
革命軍もテイラーの大事な人もみんな傷つきながら王家を滅ぼし革命を起こそうとしていた。

パサドは、テイラー、マリウス、ジェンバの冒険についていけなかった。自重気味の笑みを浮かべながら、またか、と息を引き取った。

マリウスの目的は子供を取り上げられ気を病んだ姉のひとこと「こんな国なくなってしまえばいい」それを果たすこと。
荒れる城の中で、破滅の魔女アンナは、王妃エリシアと対面する。
エリシアが、マリウスが望んで掴み取った親子の再会だった。

古い地図に描かれた地下の牢屋。
全てが始まり、全ての終わりの場所。
テイラー、マリウス、ジェンバの3人はかつての冒険の続きを開始する。

「ここが太陽の中心だ」

ーーーーーー

というお話です。
お約束ですが、ダナエさんがアンナに厳しく指導していく中で、最期はアンナの代わりに死んでゆく。
わかっちゃいたけどかなしいがすぎる…。

ちょっと厳しいこというと、登場人物が多いのでいろんな関係性を見せることに注力していました。
関係性や考えを見せるシーンで物語が進まないので、なかなかお話が進まないなとは思ってもどかしかった。ただ、この部分の関係性や思惑をこれでもかーと丁寧に描く作品が好きな人も多いんじゃないかな。
私はわかったから早く話を進めてくれとなってしまいました…。ここが演出が合わない部分ですね。
結構もったいぶってるので、なんとなく話の内容や結末まで想像ついて、想像通りだったのでちょっと勿体無い気分ですね。

でも、役者それぞれが見せ場となるシーンが本当に多くて多くてすごい見応えはありました。
メインの4人と司祭と王様とかは美味しいポジションだったんじゃないかな。

全然関係ないのですがアンナは髪型と衣装のせいだと思うのですが蒼井優ちゃんに見えますね。
真の強さが気持ちが良いです。彼女が「私が破滅の魔女だ」というシーンはすごく素敵でした。


楽曲でまさかの天野月子さん流れてきてびっくりだよ。
私の高校時代の青春はつっこさんとともにあったよ。
「骨」ですね。この曲バージョン色々あるんですが、一番好きなバージョンでしたね。
やさしくて寂しい曲なんですよね。これ。この曲は、ただ側で寄り添えることが美しい日々なんだ、その日々の尊さを当たり前に甘受してしまう中で、どうかその日々が尊ぶべきものであると気づけたらいいねと勝手に思ってます。

西田さんの特徴は主題歌っぽい曲を盛り上がるなってシーンで多用するんですね。
歌詞がある曲を使うのってそっちに気をとられてしまうこともあるのですごく挑戦的だなって思いました。
私は好きじゃないです。こう、、、なんか盛り上がってます!!ってお茶を濁される感じがするので。

厳しいことを書いてますが、別に面白くないと言っているわけではなくて。
作り込まれた物語だったし、役者の熱量も高くて見所も見ごたえもすごくて素敵な作品です。

女優陣がすごくそれぞれ個性的で面白かったです。
王妃様、ダナエ、情報屋のお姉さん、騎士団長の可愛い子、殺すぞばっかりいう小さい子、そしてアンナ。
騎士団長の子かわいいですね。自分が可愛いって知っているのもかわいい。良いです。
ひとりだけアニメの世界から来たのかと思った。声優さんらしいですね、声が可愛い。

そして西田さん作品といえば殺陣の印象が強いのですが今回もアクションモリモリでしたね。
みんな戦う。登場人物で戦っていない子はいないんじゃないかってぐらいみんな戦ってましたね。
久々に猪野くんの殺陣を見ました。やっぱり彼の器用だなって思います。すごいな。
あと小南さんはアクション上手になってたね。一昨年の9月くらいかな?初めて小南さんが殺陣っぽいことしたの見た気がするけど見違えるほど身のこなしが軽やかでびっくりしました。

あと、アンサンブルのダンサーの皆さんが美しかったです。
ひらひらの衣装がふわーと広がりながらダンスをする。彼女たちが踊り出すところが場面転換なんですけど、美しかったですね。火(に見立てたライト)で照らしながら踊るのがすごく幻想的でよかったです。

印象の話をすると、すごく感覚的なんですが西田さんの演出「淡い」なんですよ。
照明も、曲も、お話と構成もすべて淡い。すごく面白いなと思いました。
他の演出家さん(名前は出しません)ですごく彩度の高い極彩色のような印象を受ける方がいるので、やってることや見せ方は近しいものはあるのにこうも違うのかと。
物語のこのシーン!という印象の残り方ではなく、作品全体でこういう感じだったと印象が残るタイプで、これシリーズものを見続けたらかなり面白いのではと思いました。

そんな感じでデカダン見てきました。西田さんもう少し色々見ようかな。
衣装が作り込んでて楽しかったです。メイン4人の衣装それぞれいいですね。

最後にメイン4人の感想を書いて終わりです。


▽テイラー役 塩野瑛久さん

はじめましてですね。
テイラーのやさぐれと、かつての希望感とのギャップが大きいので、切り替えが難しそうだなって思いました。
希望で溢れていたいわゆる神童みたいな子が、大人になるにつれて現実を知り、きっかけを経て崩れてやさぐれてしまう。というのはどんな作品でもさみしいものがありますね。
太陽の中心ってきっと物語の起点なんでしょうね。だからこそ革命には「太陽の子」が必要だった。
彼の高らかに「ここが太陽の中心だ!」と叫ぶのが好きです。
背負うものがどんどん大きくなっていく中で、全部背負って行く姿が印象的でした。

▽マリウス役 長妻怜央さん

こちらもはじめましてですね。元ジャニーズの方ですよね。
マリウスは演じるのが難しい役だなと思いました。「太陽の子」の対である「月の子」と呼ばれてますが、物語の「太陽の子」はやさぐれてて全然太陽の子のようじゃないので…。
彼の「太陽の子(テイラー)が羨ましい、そうなりたかった」というシーンはなんだか切なくなります。
ないものねだりなんでしょうが、はたから見れば王族なのでなんでも手に入りそうな中本当に欲しいものは、なりたいものは手に入らない、そんな葛藤を受けました。でもそれゆえに誰よりもやさしいなと思いました。
セリフ量も立ち回りも多かったので裏主人公でしたね。
そういえば、7ORDERの子でしたね!最近よく名前を聞きますね。今度の27のやつは見に行こうと思ってます。

塩野さんも長妻さんも舞台経験が浅い(私が見たことがないだけかもですが)と思うのですが、物語を背負っている同年代の4人とベテラン勢がいる座組みの中心として頼もしいなと思いました。

▽ジェンバ役 猪野広樹さん

2019年は猪野くんで始まり、猪野くんで締めたんですが、2020早々にまた猪野くんをみるとは…笑
私、猪野くん好きですよ。見たいなと思う作品に彼がいると嬉しいなと思います。
立ち回り、台詞回しどれもすごい素敵だなと思いました。本当に安心していてられる。妹のアンナにお兄ちゃんとして語りかけるシーンがすごく良くて、兄であることと決別して友人とともにあろうとする覚悟が伝わってきました。
あんなに泣きながら演技する猪野くんはじめてみたな。
また今年も猪野くんがたくさん観れるといいな。

▽パサド役 小南光司さん

観に行こうと後押ししてもらったのは小南さんが出演しているからなんですが、わりとずーとちょくちょく観てますがどんどん演技が上手くなってて、なんか嬉しいです(なに目線なんだ)
今回飄々とつかみどころのない役ということでしたが、つかみどころのないというのと持ち前の陽キャ感が相まって物語の中ですごく彼だけ独特の間になってたなと思います。面白いね。
動けない人ではないのですが、前は補助付きでアクションして回してもらってたんところを、今回補助なしで結構俊敏に立ち回りしてて、見入りました。物語の内側には入れないちょっと損な役回りでしたけど、物語を始めたのはパサドなのでいい役でしたね。

観に行った日がちょうど小南さんの挨拶回で、「毎日感動しています。こんなに毎日感動するかってくらい感動しています。どうか皆さんに精一杯届けるので、応援してくださいね。」的なことをおっしゃてて同年代とベテランとすごくいい座組みにいるんだなって勝手に思いました。
個人的にまだまだ色んな作品で、いろんな役で見たい人です。


読んでいただきありがとうございました。
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