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光さす地獄|ミュージカル憂国のモリアーティ

5月12日 18時
銀河劇場
脚本/演出 西森英行

幼馴染からこの漫画面白いよと聞いていた、この作品。ミュージカルになると聞いて見てきました。

まず、2.5のミュージカルの中で珍しく生演奏だったこと、演者さんたちが観る作品にいると思わず嬉しくなってしまうメンバーということで非常に楽しみでした。
銀劇でやってくれたのも嬉しかったです。あの螺旋階段のぼるの好きなんですよ…

観劇後に幼馴染に教えてもらったんですが、今作ではコミックスの3巻までをミュージカルとして上演したみたいです。
お話の構成が2幕ではあったんですが、お話としては3つで非常に盛りだくさんでした。

お話は3つ。
男爵家による、重税や理不尽な支配が続く田舎にモリアーティ家が引っ越して来ます。若くして家督を継ぐ長男アルバート、数学者として教授の地位にありながら私設コンサルタントを営む次男ウィリアム、忙しい長男に代わりに領地の管理や雑務をこなす三男ルイス。彼らは民衆を味方につけるように、税を下げ支持を集めていく。しかし、元々その地を治めていた男爵と衝突する。
ありもしない噂などが流れていくが、全て息子を亡くした市民からの依頼により動くウィリアムの掌の上だった。
かつて孤児だったウィリアムとルイス、貴族による悪の支配を憎み、共感したアルバートとともに完全犯罪としてアルバートの両親と本当の弟であるウィリアムを殺害し、成り代わるようにその地位に就いたウィリアムと彼の共犯者たちの、悪を悪で裁く貴族のための復讐劇が始まった。

場所は変わりロンドン。
鹿狩りと称して人を狩る、若き伯爵がいた。彼へ裁きを下すため、ノアの箱舟を称した豪華客船ノアティック号での殺人劇を演出する。
一方ロンドンには、変わり者と称される一人の男がいた。謎を求める探偵もどき?シャーロックホームズ。
そんなウィリアムとホームズがノアティック号で合間見えたときに、ブリッツ・エンダース伯爵への裁きの殺人劇を行うウィリアムとその謎を解くホームズの頭脳戦が行われる。

ノアティック号事件からホームズに興味を持ったウィリアム。自分が起こす犯罪の解決を示す探偵役としてホームズがふさわしいかテストを行う。殺人犯に仕立てられ一度ヤードに捕まってしまうホームズだが、裏の黒幕の存在に気付きながらも事件を解決し、自身の無実を証明する。その際にウィリアム側から自身の存在を教えようかと話をされるが、謎は自分で解くものだといい、ウィリアムのテストにも合格した。

そんな感じの3つのお話が入った盛りだくさんの今作品。
生演奏のバイオリンとピアノで紡がれる深い響きの旋律と、歌える演者が揃ってるからか紡がれる音の響きが物語により花を添えていました。
お話自体は凝ったものではないんです。日本人が好きな勧善懲悪いわゆる水戸黄門のようなわかりやすい悪と正義の対局構図。
ただ何が悪か人が正義かを定義するかでこの作品のおもしろさは一気に増すので、原作自体も素敵な作品だと思います。観劇3日後にはコミックス既刊が全部うちにあってちょっとびっくりしました笑

主題歌がものすごくマイナー調というか深い厳かな響きではあるけど明るい曲じゃなくて結構びっくりした冒頭。
あれすごいなって思うのが、Wで主人公を張る二人が歌えるからあの曲で勝負かけてるんだろうなってことですね。一気に引き込まれました。正直何も予習をして行かなかった(シャーロックホームズは知ってます)ので、どんな物語なのかとても楽しみでしたけど、想像以上期待以上に一気に心を掴まれたのが最初の主題歌ですね。
この曲調で来るのか!?って驚きとそれを平然と歌いのける鈴木勝吾くんと平野良さん。
そこから紡がれる理不尽無階級社会とそれに抗う者たち。抗う術は決して綺麗なものではないってところがいいなと思います。
何が悪で何が正義なのか。そこに自分の存在がどう刻まれるのか・・・。考えらだけでゾクゾクするような題材ですね。

そんな冒頭から始まる3つのストーリー。
悪役として3人出てきますが、それぞれ癖が強く出るように、そしてウィルの手の内で転がされる小物感の塩梅がいい感じでした。
ウィルの余裕のある感じと、兄を演じる久保田さんの場慣れ感のある余裕と、ルイスを演じる一慶さんの献身的だけど内側に毒を持つ2面性の雰囲気がうまく生きていました。
そんなバランスのなかうまく溶け込む井澤くんと赤澤くんコンビとヤードとホームズ側の陣営。人数は多いのですがそれぞれの目的と役割がしっかりと決まってたのですんなりと入ってきましたね。

最初の方で物語の始まりとしてその時代背景を見せる

物語が3つもあったので盛りだくさんでしたが、(2つでもよかったけどホームズ出すにはこれが最適解ですね。)物語自体の持つ強みと、舞台で生身の人間が演じる強みがうまく合わさっていたなと思います。

素直に面白かった。

演出の西森さんと言えば、メサイアシリーズですが、メサイアも複雑な設定の中、筋となる話を際立たせて見せるのが上手いなって思っているので、取りこぼしたところもきっとあったでしょうがお話として完成度が高かったなと思います。
今回映像っぽい演出が少なくて、それも作品の舞台である19世紀ロンドンをうまく見せてもらったなと思いました。

そんな感じで総合的にお話にのめり込めるし、曲は生演奏でみんな歌が上手くて深い響きが味わえる2時間30分でした。なんで自分は1枚しかチケットをとってないんだろう…って割と真剣に思いました。
再演か次回作あったら観に行きます。

個々人の見せ方がうまく掴んでいたのと、あいも変わらず鈴木勝吾くんの歌のうまさにビビる今作ですが、個人的に歌う山本一慶さんが好きなので見れてほくほくでした。わりと献身的で蚊帳の外な末っ子なんですけど、自分も兄さんとともに犯罪だろうがなんだろうが行いたいっていう決意を二人の曲で見せててテンションが上がりました。ふたりして声の伸びが気持ちがいい。

そしてW主人公もうひとりである平野良さん。
前に見た時声がいい人だなー!と言う印象を抱いていたんですが、やっぱり綺麗な声だなと思いました。私の勝手な印象なんですけど平野さんのイメージにはいい意味で粗雑なイメージがなかったので割と新鮮でした。ワトソンがうまい具合に振り回されてて、まだホームズ陣営に三人しかいないので今後増えてきたらどう見せるのかとか楽しみなバランスだなと思いました。

あと、個人的に悪役だったので楽しみにしていた小南さん。
2016からなんだかんだずっと見てる気がする小南さんですが、今回歌うまくなってたと言うか声量が上がってました。もともと声が細い子なので伸びづらいんですが、喉が開くような歌い方するなって思いました。場数をふんできたなってなんかとっても嬉しいです。
西森さんのツイートにあったんですが、変態性を表現するためにズボンのチャック開けちゃう感性が面白いなと思います。変人奇人な役って目立つし演じやすいものだけど、見極めが難しいものなので、経歴としても実力としても多くの先輩の中でチャレンジできたいい職場だなって思いました。(なんの目線なんだこれ)

そんな感じで楽しく見ました!
円盤を買いたいなと思う今日この頃です。