収益認識基準とは~応用編~
基礎編では収益認識基を適用した場合の基本的な処理をご説明いたしました。今回は応用編で値引きが入った場合についてご説明していきます。
1. 値引きとは
ものやサービスの独立販売価格(≒定価)よりも安く販売した場合、値引きを行ったことになります。
2. 値引きを行った場合
初級編でご説明した5つのステップをもとに値引きがどう影響してくるのかを考えていきます。(5つのステップの説明に関しては、【初級編】をご覧ください。
① 契約の識別←影響はなし
② 履行義務の識別←影響はなし
③ 取引価格の算定←影響あり
契約において決められた金額を明確にします。この際、値引き前の独立販売価格(≒定価)、実際販売価格(値引き後の金額)、値引き金額(独立販売価格-実際販売価格)を明確にしましょう。
④ 取引価格の配分←影響あり
②で識別した履行義務に③の取引価格(値引き考慮後)を配分していきます。
⑤ 収益の認識←影響あり
②で識別した履行義務を達成した時点で、達成した分だけ(=④値引き考慮後の金額だけ)収益計上します。
3. 具体例
値引きが入った具体的な取引をベースに上記5つのステップにあてはめて考えていきましょう。
家電量販店であるA社はPC(定価45万円)と保証サービス(2年間で5万円)をセットで45万円(定価合計50万円-値引5万円)で販売しています。このセットが売れた場合のことを考えていきます。
① 契約の識別
お客さんが「買う」といい、お店は「売る」と決めたときに契約が成立し、契約を識別します。
② 履行義務の識別
履行義務とは「お客さんがものやサービスを受け取る上で、自分の会社がしなければならないこと」です。今回の場合
・PCをお客さんに引き渡すこと
・2年間保証サービスを提供すること
となります。
③ 取引価格の算定
今回保証サービス付PCという形で販売していますので、取引価格は45万円となります。
独立販売価格(≒定価)の合計額は50万円(PC45万円+保証5万円)であり、値引き金額は5万円となります。
④ 取引価格の配分
履行義務それぞれの独立販売価格(≒定価)に基づいて、各履行義務に配分します。
今回のケースでは取引価格45万円を定価の比率に案分し、
・PCの引き渡し→40.5万円
・2年間の保証サービス→4.5万円
と分けることになります。
⑤ 収益の認識
履行義務を満たした時点で収益を認識します。
PCの引き渡し→40.5万円を引き渡し時に一括して収益計上
保証サービス→4.5万円をサービス提供期間(2年間)にわたり案分して収益計上
4. まとめ
収益認識基準の値引きに関する会計処理をご説明していきました。
上場企業や今後上場しようとしていく会社にとっては監査上非常に重要なポイントとなりますので、しっかりおさえていきましょう。