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棚卸資産②~棚卸減耗・商品低価評価損~

第1回では棚卸資産の額の基本的な算定方法について説明しました。第2回では、棚卸減耗と商品低価評価損について説明していきます。

棚卸減耗

1.棚卸減耗とは

棚卸資産の額の算定の際には、実際に在庫の数をカウントすることで数量を把握します(棚卸資産第1回参照)。これを「実地棚卸」といいます。実地棚卸を行うことによって、盗難や紛失・破損など販売以外の原因により起こる在庫数量の減少を把握することができます。この在庫の減少のことを「棚卸減耗」といいます。

2.棚卸減耗費の算定

棚卸減耗は、「棚卸減耗費」として損益計算書に計上します。棚卸減耗費は、在庫の単価に減少した在庫の数量を乗じることで算定します。

図7

Ex)期末時点において、帳簿上の商品の在庫数量は100個だったが、実地棚卸を行ったところ在庫の数量は95個だった。商品の単価は200円である。

この場合、棚卸減耗費は、@200円×(100個-95個)=1000円となります。

また貸借対照表に計上する棚卸資産は、@200円×95個=19,000円となります。

仕訳を切るときは、まず、期末の帳簿上の棚卸資産を繰越商品として計上した後、棚卸減耗分、繰越商品を減らします。そこで仕訳は以下のようになります。

図9

以上が棚卸減耗の説明になります。

商品低価評価損

1.商品低価評価損とは

棚卸資産の額の算定の際には、棚卸資産の単価を評価します。単価の評価方法は6つありますが、すべての場合において、取得原価に基づいて算定しています(第1回棚卸資産参照)。通常の場合、企業は次期以降に棚卸資産を販売することで利益を得ることができます。しかし、期末における棚卸資産の※正味売却価額が、取得原価を下回っている場合には、企業は次期以降に損失を出す可能性があります。そこで、このような場合には、棚卸資産の額の算定は正味売却価額をもって行い、取得原価と正味売却価額の差額を「商品低価評価損」という科目で当期の費用として処理します。

※正味売却価額とは、売価(期末時点の棚卸資産の時価)から見積追加製造原価及び見積直接経費を控除したもの

2.正味売却価額が取得原価を下回る要因

正味売却価額が取得原価を下回る要因は大きく3種類に分類することができます。いずれの場合でも、会計処理方法は変わりません。

➀品質の低下
棚卸資産の物理的な劣化により売却価格が低下します。実地棚卸により確認することができます。

②陳腐化
棚卸資産の経済的な劣化により売却価格が低下します。例えば、パソコンのソフトウェアが古いバージョンのもので、定価では売ることができない場合などがこれにあたります。

③低価法評価額 
棚卸資産の時価の低下により売却価格が低下します。

3.商品低価評価損の算定

商品低価評価損は、取得原価と正味売却価格の差額に期末帳簿数量を乗じることで算定します。

図1

以下、事例に沿って、商品低価評価損を算定していきます。

Ex)期末に実地棚卸を行ったところ、100円で仕入れた商品20個のうち3個の品質が低下しており、その正味売却価額は80円だった。

この場合、商品低価評価損は、(@100円-80円)×3個=60円となります。

また貸借対照表に計上する棚卸資産は、@100円×17個(正常な在庫)+@80円×3個(低価している在庫)=1940円となります。

仕訳を切るときは、まず、期末の帳簿上の棚卸資産を繰越商品として計上した後、商品低価評価損分、繰越商品を減らします。そこで仕訳は以下のようになります。

図2

以上が商品低価評価損の説明になります。

4.まとめ

2回に渡り、棚卸資産の会計処理について説明してきました。在庫は企業が所有する資産ですので、実地棚卸を行うことで、その実在性と価値の低価を正しく把握していくことが必要です。

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