松田代表に聴く、「ヘラルボニー」的キャリアの創り方【「キャリア未来地図研究所」イベントレポート】
キャリア未来地図研究所 共同代表の千葉です。
3月2日、【「キャリア未来地図研究所」スペシャルトーク vol.3】を開催しました。ゲストは知的障害がある人が描くアートで今最も注目されている新進気鋭のベンチャー企業「ヘラルボニー」の松田崇弥代表に登壇いただきました。
松田代表とヘラルボニー人気によって参加者の女性比率8割という華やかなイベントになりました。松田代表のこれまでのキャリアの軌跡を「キャリア未来地図」のフレームを使って紐解いていきます。
松田代表の経歴について
松田代表は岩手県出身で双子の30歳。4つ上の兄が自閉症であったことから、いつか知的障害のある方々に関わる仕事がしたいと思われていたそうです。小学校から高校まで野球と卓球に打ち込みました。大学は芸術系に進みたいと思い東北芸術工科大学に進学します。そこで運命の人、小山薫堂さんに出会い、そのまま小山さんの会社「オレンジ・アンド・パートナーズ」に新卒採用第1号として社会人生活をスタートされます。そこからヘラルボニーの起業へと繋がる訳ですが、その道のりを「キャリア未来地図」の5STEPに沿って辿っていきましょう。
「ヘラルボニー」松田代表 キャリア形成5ステップ
STEP1:「オレンジ・アンド・パートナーズ」でプロデュースの真髄を知る
小山薫堂さんの会社「オレンジ・アンド・パートナーズ」に新卒採用第1号として入社した松田代表。最初の仕事は薫堂さんの鞄持ちからスタート。薫堂さんは企画のみならずコンサル、CM、番組、M&A、レストラン経営まであらゆるものをプロデュースされるので、横についてがむしゃらに仕事をこなしていました。
「そこで一番身についたスキルはなんですか?」という質問の答えが「”スピード”です。「スピードはメッセージなんだ」ということを繰り返し叩き込まれました。」と言われたことがとても印象的でした。そこで過ごした5年間がのちのヘラルボニーでの怒涛の企画プロデュースに繋がっていきます。
STEP2:副業で始まった「ヘラルボニー」
社会人2年目の時、母親に勧められて行った岩手県花巻市の「るんびにい美術館」。松田代表はそこで観た知的障害がある人が描くアートに衝撃を受けます。雷が落ちたような感覚で、もう純粋に「かっけえーー!!」と思ったそうです。
ただ知的障害がある人が描くアートというと「頑張って描く」とか支援的な側面が多くて、作品として価値を出していくためには、もっと見せ方やプロディース力などが必要だと強く思ったそうです。そこでもう1人の双子の文登さんに「こんな世界があるからやってみようよ」と誘って「ヘラルボニー」の原型を立ち上げることを決意します。
初めての商品は織りで作品を描いたシルクのネクタイ。片っ端からネクタイ会社に電話をかけて、シルクのネクタイができないかとお願いをします。しかし「あなた方がやろうとしているネクタイは色数が多すぎてとてもうちでは無理だけど、それができる会社が1社だけあるよ」と言われました。そして唯一それができる世界最高峰の技術を持つ銀座の老舗ブランドに頼み込みにいきます。100年以上OEMで仕事が受けていなかったそのブランドが、松田さん達の熱意に負けて、なんと仕事を受けてくれました。
そして「るんびにい美術館」の作品を織りで描いたシルクのネクタイは、ネットや美術館のポップアップ展などで見事に完売します!
STEP3:「絵を描くこと」がデザインやアートに繋がる
STEP3では松田代表のプライベートの側面にフォーカスします。小さい頃から「絵を描くこと」が好きだったという松田代表。山に行ってグラフィティアートを描いたりヒップホップを聞いたりしていました。それが芸術系の大学に進学することになり、そこで小山薫堂さんに出会い、会社に入社し、プロデュース力を身に付けるに至る訳です。
また副代表をされている双子の文登さんとは、兄弟であり、親友であり、経営者であり、かけがえのない特別な相手で、企業を経営する上では心理的安全性に繋がっていると言われてました。「会議をしていても相手が何を考えているのか分かる」と言われるぐらい、僕たちには分からない一心同体的な感覚があるんだなと思いました。
STEP4:【オリジナル・スキル】プロデュース力xアート
そしてキャリアの一番のコアバリューになる「オリジナル・スキル」の話です。松田代表の【オリジナル・スキル】=「仕事」x「特技」は、「オレンジ・アンド・パートナーズ」で鍛えた”総合プロデュース力”(仕事)と小さな頃から好きだった絵や音楽といった”アート”(特技)、そして使命感を持ってやりたいと思った”福祉”が融合して、とても希少性の高い【オリジナル・スキル】が出来上がっています。
STEP5:いよいよ「ヘラルボニー」本格立ち上げ!
いよいよ「ヘラルボニー」を本格起業することになりました。そこで知的障害がある人の描くアーティスト作品のライセンス管理を行うビジネスモデルの原型が出来上がりました。ただ最初は仕組みを作れば上手くいくと思っていました。しかし蓋を開けてみると全く上手くいかない。「まずみんなに知ってもらう」という認知拡大の壁にぶつかります。そこで覚悟を決めて、自社ブランドを立ち上げ直営店を出店することを決意します。
一番初めの直営店は岩手県の地元百貨店。その理由は「ヘラルボニー」というブランドで岩手を聖地化させたい。意思決定の初めは岩手から始めるというルールを決めているから。
数々の困難の中でも最初の企業1社目の受注が一番大変だったそうです。そもそも話を聞いてもらえない、ようやく話を聞いてもらえても”前例がない”となかなか決裁がおりない、そもそもチャリティだと思われていたりと、ビジネスの土俵に乗せることに苦戦します。そんな中、救世主が現れます。パナソニックの新しくできた研究所の所長さんが松田さん達の熱量に動かされて、壁紙やクッションやソファーに知的障害のある人が描くアートを使う仕事を受注しました。その所長さんは結果的に素晴らしい仕事をされたと思います。
そんな大変な立ち上がりの中、「辞めようとは思わなかったですか?」と聞くと「一度も辞めようとは思わなかったんですよね。何故かというとめちゃめちゃ福祉業界から応援してもらったんですよね。「こういうのを待ってたんだよね」「こういう世界を目指したいよね」という声をもらったり、ダウン症のお子さんが産まれたご家族から熱いメッセージをもらったり。それによってこの活動は価値があるものだという自信に繋がりました。」一番応援されたい人たちから応援されたことがヘラルボニー誕生の最大の原動力だったと思います。
最後に
「私は自閉症の兄がいたことで福祉に興味を持ち、今の自分がいる。だから自分の信じている感覚をアウトプットするところからキャリアは広がっていくと思います。」というメッセージを最後に貰いました。
本業で培った仕事のスキルと、プライベートでの特技やライフワークとして取り組みたいテーマを掛け合わせて【オリジナル・スキル】に磨きあげることが、充実した人生を送るキャリアのターニングポイントになると、松田代表のお話を聴きながら強く感じました。
”自分の信じている感覚”を大切に。
ちなみに私と松田代表との出会いは下記に書いています。
イベントで使った「キャリア未来地図」フレームの5STEPの詳細はこちら。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?