エレベーターガールからバスガイドになった彼女
キャリア未来地図研究所 共同代表の千葉です。
『週刊東洋経済』1月31日(月)発売号「特集:40代、50代からの資格と検定」がバカ売れしているらしい。いつの時代も資格の需要は一定数あるけれど、なぜ特に40代、50代で盛り上がっているんだろうか?
「将来への漠然とした不安病」と「資格」
今も昔もサラリーマンを長い間やっているとどこかのタイミングで「将来への漠然とした不安病」を発症する。その時、必ず一度は考えるのが「資格」だ。私も20代の頃、「会社の外でも通用する能力を身につけなければ!」と意味もなく焦り資格取得に走った経験がある。
それまで読んだことのなかった資格取得雑誌なんかを読み漁り、役に立ちそうでなんとか取れそうな資格を「物色」しはじめる。
「宅建」に始まり「税理士」「社会保険労務士」、ちょっと頑張って「中小企業診断士」「MBA」挙句はそれまで聞いたこともなかった「CPA(米国公認会計士)」などなど。
実際は、私はゼネコンは勤めていたので「宅建」と「建設業経理事務士」の資格を取得した。
が、しかし・・・。将来の不安は全く払拭されなかった。
そりゃそうである。合格証書を一枚もらったところで、それで仕事が保証される訳もなく、知識がついただけで実務経験もなにもない状態では何も状況は変わらない。
それじゃなぜ人は資格に走るのか?
だったらなぜみんな資格に走るのか?
やはり自分ではない外部に”拠り所”が欲しいのだ。第3者からのお墨付きをもらうことによって、自分に自信をつけたいのである。人によっては”お守り”の役目を果したりする。
そして今、資格取得ブームが40代、50代に訪れているんじゃないだろうか。
(ずっと前から変わらず盛況なのかもしれないが)
「このまま、この業界にいていいんだろうか?」
「優秀な若い人がどんどん迫ってきていて、このままじゃやばい」
「災害などの非常時にも潰しが効くようなスキルを持っておかねば」
資格の一つでも取りたくなる気持ちは痛いほど分かる。学び直し、リカレント、リスキリングという言葉を見ない日はないぐらいだ。
ただ、自分の外部にばかり”拠り所”を求めていたら、いつまでも他人の評価軸に振り回されることになる。
エレベーターガールからバスガイドになった彼女
こんなことを考えていたら、昔の話を思い出した。もう30年近く前の話だが、地元広島で社会人になったばかりの頃の知り合いの女性の話だ。
彼女は今では絶滅危惧種となっているエレベーターガールの仕事を地元のデパートでやっていた。その子は「私には夢があって、バスガイドになりたいの。」とことあるごとにみんなに話しいていた。
口だけじゃなく旅行業務関係の勉強をしながら、バスガイドに必要な地域の歴史や文化についても地道に自主的に学んでいた。話を聞いてから2年ぐらい経った頃、見事に観光バス会社に転職し、立派なバスガイドになっていた。
エレベーターガールで培った礼儀作法や接客スキルと、元来持っていた社交的で明るい性格が上手くかけ算されて、そこに頑張って身に付けた専門知識が相乗効果を産み出していた。「毎日、楽しくてしょうがないの!」と屈託ない笑顔で話す彼女を懐かしく思い出した。
「かけ算キャリア」という考え方
大事なのは外部じゃなく自分の”内部”に目を向けて、「自分の価値を高めていく」というスタンスじゃないだろうか。資格の持つ”箔付け”機能だけに目を奪われずに、資格が内包する知識と知恵を、自分がすでに持っているスキルと掛け合わせていくこと。そして自分の強み=「オリジナル・スキル」を磨きあげていくことが大切ではないだろうか。
ベースとなるのは「自分のスキルをかけ算していく」という考え方だ。本業の「仕事」とプライベートの「特技」を掛け合わせて、自分オリジナルの強みを創り出していく。そこに体系化された資格のカリキュラムがさらに掛け合わされば強みは一層広く深くなっていく。
と色々書いたが、「資格」でもなんでも、何歳になっても、知的好奇心MAXで学び続けられることは一番の幸せかもしれないなと思う。
次回は「かけ算キャリア」の具体的な内容について書きたいと思う。
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