Life is an adventure!
結婚当初、私たちは別居をしていた。
いわゆる週末婚というもの。私の仕事が激務であったため、一緒に過ごせるのは月に1回程度であったが、別居スタイルの週末婚であったことは間違いない。
結婚当初、夫は失業中だった。
そのことを上司に告げると、
「私も結構な冒険好きだけど、あなたほどではないわ。勇気あるなぁ。」
といわれた。女性社会進出の黎明(れいめい)期にキャリアを築いてきた上司からの言葉は、軽い嫌味のようでもありエールのようでもあり、くすぐったい気持ちになったことを覚えている。
新婚3か月は、求職中の夫が私の休みに都合をあわせてくれたので、一緒に過ごすことができた。
夫が仕事に就いたのを機に、私は夫への弁当を作るようになる。2人で過ごす時間が極端に少なくなるだろうと考えたからだ。
受け渡し場所に黙って置いておく。そして、私が仕事帰りに、空になった弁当箱を回収するという方法であったため、お互いが顔を合わせることはなかったが、「弁当」で繋がっていられることは素直に嬉しかった。
その後、激務に耐えられず私は退職。夫婦として同居をするまでには時間がかかったが、別居を継続していた時も、同居をし始めてからも、弁当を作る習慣は続いた。
◇◇◇
一度作った流れを変えるのは難しい。
夫の弁当作りが義務化されたことに「不自由さ」を感じていたのも確かだったが、その「不自由さ」を受け入れることに不満はなかった。
ところが、「自由になるきっかけ」は思いがけず訪れる。
父が他界して、この家を空けることが増え、夫が弁当を持参できない日が結果として増えたからだ。
以前は、弁当を持参しないと「奥さん病気なの?」と会社の人に心配されるようなこともあったようだが、今となっては過去の話。
弁当を作らなければという縛りから解放され、私の生活全般に自由度が増してきたように思う。
同じことを続けていれば、それはそれで安心材料になるし、そういう生き方に馴染みやすい人がいることも承知している。
でも、私たち夫婦の関係は、そもそも「冒険」として始まっていたのだ。
新しい夫婦の形を作りたい。既成概念に縛られることなく、2人が居心地よく暮らそう。他人に迷惑をかけなければ自分らしく生きられると楽だよね。
そのような気持ちでスタートした2人の生活だ。
そもそも「新しい夫婦の形を作る」という発想がなければ、私たちは夫婦になれなかっただろう。直感を信じ、既成概念から外れることを恐れずに道を選んだから、今の2人があるのだ。
私たちにとっての「人生」は冒険ということを改めて胸に刻み、次のフェーズへと進んでいこう。
「自由になるきっかけ」に感謝して。