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【対談#4後編】NPO×チャレンジフィールド北海道 「社会をより良くするために、私たちにできること」

前編では、久保さんの生い立ちや経験、思いをお聞きし、チャレンジフィールド北海道のめざす姿や取り組むべきこととの共通点が多く浮き上がってきました。後編では、もう少し深掘りした対話について、テーマごとにご紹介します。

―――――久保さんがチャレンジし続けられる秘訣は?失敗は怖くない?
 
山田総括(以下山田):久保さんの活動はとてもアクティブでアグレッシブですね。私たちも若い人を中心に皆さんがチャレンジができるような支援をしていきたいと思っていますが、それには失敗した時のセーフティネットの整備が必要だと考えています。ただ久保さんを見ていると、失敗したらどうしよう…なんてビビることが無いんじゃないかと感じます。
 
久保さん(以下久保):なんでビビらないかはよく聞かれます(笑)。思い立ったらすぐ動く、という性格ではあると思います。ただ動きながらも論理的思考で後付けして、リスクヘッジはしています。
一方で、最初に行動を起こすとき、自分に何ができるか決めてから動くということが無いかもしれません。最初は対価が無くていい。飛び込んで学ばせていただいて、あとからできるようになればいい。その範囲でできることは何でもできる、と思っている感じですね。
ある程度失敗を許容される現場で学ばせてもらって、あとで恩返しできると思えた領域には飛び込んでも問題ない、と判断しています。
 
山田:何かに飛び込むとき、人のつながりがあればどうにかなるだろう、と思っているところが私にはあります。久保さんの場合、最初経験させてもらい、その中で何ができるのか、何が恩返しできるかを考えているんですね。
 
久保:私のリソースのポートフォリオの中に、対価にならなくても学ぶ・自分の時間を投資するという割合は3割くらいありますね。

―――――「恩返しがしたい」という感覚はどう育った?
 
山田:久保さんが、北海道に帰ってきた理由が「自分が育ててもらった場所から」と言っていましたが、そう思うようになったきっかけはありますか?
 
久保:自分は本当に両親に恵まれたと思っています。学校でも座っていられず、生きづらさを感じていました。でも両親から「弱みばかり着目するのではなく強みを伸ばしなさい」とか、「わからないことは紙に書いて整理しなさい」とか、たくさんのことを教えてもらいました。療育の先生や学校の先生、近所の方にも恵まれ、みなさんに育ててもらったんだと気づいたのは、福祉の世界に入ってからでした。
 
山田:私は昔は悪いことばっかりしていたので(笑)、社会に対して借りた恩は返さないと、と半ば感覚的に思っています。親にも迷惑をかけたけど、その恩を親に同じだけ返すことはできないから、違う形、場所、世代に対して返していきたいなと思っています。
 
久保:困っている人がいても、まわりの人に恵まれたら何とかなることって多いと思います。でもみんなが恵まれるかといったら、そうとは限らない。高校時代の寮生活で一生分の不条理を経験して(笑)、よけいにそう思うようになりました。
 
―――――「組織に属していれば、全員が同じ目標に向かえる」というのは過去の遺物となってきています。
 
山田:社会全体で、組織内のつながりが希薄になり、流動性が高まっていますね。それはどうしてなんでしょう?
 
久保:3.11でボランティア活動をしていた時に感じたのですが、復興を成し遂げようとなったとき、組織で分かれるということは無かったんです。とにかく「落ちているボールは拾おう※」というマインドでした。今の成熟した社会では、人によって課題感が違うから、共通の価値観が組織の中でも育ちにくいのではないでしょうか。
※久保さんは、山の手高校出身のラガーマンです。
 
 
―――――プラットフォーマーな久保さんに聞く、「プラットフォーマーに必要な要件」とは?
 
山田:これからのチャレンジフィールド北海道を考えるうえでお聞きしたいのですが、久保さんの考える「プラットフォーマーに必要な要件」とはどんなものでしょう?
 
久保:現場と対話をする姿勢とスキル、関係性は不可欠だと思います。現場と話したいと思える好奇心を含めて、現場と対話できるということですね。
そのうえで、方向性を描いて協働した活動を生み出せることも必要だと思います。それが無いとただの掲示板ですよね。

あとは、現場には無い視座・視点も必要だと思います。現場には現場にしか無い視座があります。だからこそ、現場には無い視座が必要です。

また、ひとつの課題に対して様々な組織が集まり課題解決に向かうとき、場づくりやコーディネーターに徹する“バックボーン組織”が必要になります。理想を言えば、そのバックボーン組織が資金も出せることが重要です。課題に取り組む前にプレイヤーがじっくり対話し、ビジョンを作り上げるところがいちばん重要なわけですが、そこになかなかお金がつかないのが現状です。
 
山田:同じビジョンを共有するために、言語の異なる人たちをどうやってつないでいくのか、ファシリテーターの力量が問われますね。
 
久保:そうですね、人を集めて対話を促せばいいということではなく、お互い共感を引き出したり、あるいは社会課題を構造的に分析する視点、たとえば「出たごみを拾うのではなく、ごみが出ない社会をつくる」という視点が必要だと思います。あらゆる方面に対するプロフェッショナリティのある人材は重要ですね。
 
山田:ひとりで全部背負うのは大変ですが、いろいろな人材のいるチャレンジフィールド北海道は全体でそれをカバーできるようにしていきたいですね。
 


自身の実体験から湧き出た疑問や壁に対し、真正面から対峙して前へ前へと進んできた久保さん。発する言葉に重みと説得力を感じました。
近ごろでは「バックキャスト」「ビジョンの共有」がちょっとした流行りとなり、あるべき姿を描く機会は増えてきました。でも、「こうだったらいいのにな」と、実際に誰がいつどのように実践するかの間には、大きな溝があります。その溝の中身を丁寧に解明し、着実に埋めるための実践と仕組みづくりには、これまでに無いやり方や、セクターを超えた多様な人の巻き込み、そして「やりたい/楽しいからやる」といったような自分ごとの感情が必要なのだなと、久保さんの活動や今回の対談を通じて思いました。久保さんには引き続きお力をお借りしながら、北海道が「より良く」なるために試行錯誤していきたいと思います。(和田)


久保さんにもご出演いただいた動画はこちら!(4:35あたりから)


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