「ずっと」さよなら大学生(4)
ただ一瞬が、一生になることもある。たぶん今日は、そんな日だった。
22時のコード・ダジュール。ワインで潰れていた。
卒業式を終えた、夜の日吉。祝う人と祝われる人がいつまでも歌い続けるところを、寝そべりながら眺めていた。
時代を越えた名曲は、よく知らなくても知っている。
もうろうとしながら愛しい人たちの大声・ダンス・ミュージックを聴いたとき、ああ、いまって本当に幸せだなと、湧き出るように思ったのだった。
「自分の人生を生きろ」なんて、よく言われるものだ。この人生の、主役は私。けれどきっと、登場人物でもある。
今日、昼から3人で日吉に集まって、花束を用意した。1人の卒業生と合流して、溢れかえった幸せたちに揉まれながら、駅前で、銀杏通りで、記念館の前で、校舎で、ひようらで、じゃれあった。
東急あたりでホールケーキと、お寿司と、チキンと、ワインを買って、ワンルームで、カラオケで遊んだ。そのすべてを撮った。500枚くらいあった。そのすべてが、ただ今日だけの輝きを放っていた。
「じゃあね、今日はありがとう。楽しかった」
「うん、こちらこそ」
こんな会話を、あと何回できるのだろう。1人の夜道は、すこし切なかった。
記憶の中で、ずっと笑っている人たちがいる。
私もかれらのなかで、ずっと笑っていられるなら。(371日)