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#ソシャゲの話をしよう。「デッキ編成システム」のメリット
#ソシャゲの話をしよう 。
どうも、死に急ぐ生命の果実です。
前回に引き続き、デッキ編成システムについて思いを巡らせていきます。
今回はデッキ編成システムによってどのようなメリットが得られるのか、です。
ざっくり以下のような構成でお話をできればと考えております。
前回の振り返り
本記事は珍しく前後編仕立てである。
前編では「デッキ編成システム」について、なぜ令和のソシャゲにおいてこのシステムが主軸として採用されつつあるのか、その萌芽となった要素はなんなのか、過去のゲームの要素を振り返りながら考察してみた。
襟を正して読み直していただくほどの内容ではないが、主題とする「デッキ編成システム」の概要はある程度伝えた上で本記事を読んでもらいたいと考えているため、おさらいとして簡単に以下に記す。
・プレイヤーの目的は、クエストのクリア、もしくは最大の戦果を得ることである。
・プレイヤーは手持ちのユニットを編成してパーティを組み、クエストに挑戦する。
・クエストはオート、またはある程度プレイヤーが介入するマニュアルで進行する。
・ユニットはアタッカーやディフェンダーなどの「ロール」や、「属性」「タイプ」「スキル」などで構成される特性を持っている。
・これらの要素は適切にバランスよく組むことが求められる。
・クエストの特性によって属性やタイプ、スキルなどを選定する必要がある。
・これらを主目的俊、多種多様なユニットを集めることも並行する遊びとなる。
後編の主題
さて、ここを読んでいるということは、筆者が提唱する「デッキ編成システム」とやらに興味を持たれたことと思う。
後編では「デッキ編成システム」がユーザー・運営に対してどのような影響を与えるのか(与えたのか)を深掘りしながら考察していきたい。
考えればいくつか思い当たるが、「ユーザー視点」と「運営視点」に分けることができる。
それぞれについて詳しく掘り下げてみよう。
ユーザー視点での恩恵
ゲームの奥深さが増す
ソシャゲの遊びというのは元来比較的シンプル・簡素なものだ。
そもそも、「マリオパーティー」のようなミニゲーム満載のパーティーゲームでない限り、ゲームの根幹システム自体はミニマムでシンプルなことは、ソシャゲでもコンシューマーでも往々にしてある。
例えば2Dマリオならば「ダッシュ」と「ジャンプ」、ロックマンならそれに加えて「バスター」と「スライディング」。
物量面はステージやアイテムの豊富さで担保しているので、根幹となるシステム自体はシンプルだと言えるだろう。
例に挙げたアクションゲームなんかは、操作の習熟や応用、あるいは操作自体に快感が伴ったりするので、遊びとしてはかなりマシな方である。
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ソシャゲの場合、そんな簡単操作のゲームを三年、五年、長くて十年と延々とプレイさせるのである。
ストーリーやキャラクターなど物量の面ではともかく、ゲームの操作を楽しむとなると、さすがに無理があるだろう。
なんなら先に挙げたとおり、アクション要素やユーザーのプレイの習熟度があればまだマシな方で、多くのソシャゲは文字送りや行動の決定など「ポチポチゲー」と揶揄されるような操作系統である。
どう頑張っても、飽きる。飽きるのである。
これはソシャゲが抱えている大きな問題である。
ユーザーが飽きるとどうなる?
知らんのか、売り上げが下がる。
さて、こんなときに今回話題にしている「デッキ編成システム」を導入すると、どう解決につながるだろうか。
「考える」「覚える」「解く」という習熟の楽しさ
「飽きる」とは、「課題に対しての習熟の伸びしろがないせいで、新しい刺激が得られていない状態」と定義してもよいだろう。
デッキ編成システムは、特定のクエストの解法を手持ちの中でできるかどうかを考えて試す、いわゆる「トライアンドエラーの遊び」だ。
ユニット編成を利用した「パズル」と言ってもいいかもしれない。
課題を解決するために手持ちのユニットをさまざまに組み合わせる。
ユニットの特性を考慮しながらパーティを編成し、クエストへ送り出す。
ダメだった場合はその結果を考慮して再編成。
うまくパーティが編成できれば、クリアという恩恵と報酬。
さらに(あれば)オート・スキップなどの時間効率的なボーナス。
早く解いたユーザーは栄誉という先行者ボーナスも得られるかもしれない。
このトライアンドエラーがパズルとして成立していれば、ユーザーは操作(≒パーティ編成)に対して刺激(≒報酬)を得ることができる。
これがソシャゲにありがちな「シンプルな遊びに飽きる」を、根幹のシステムのシンプルさを維持したまま回避する手段になりえるのだ。
キャラクターの救済
クエストが変われば、当然課題も変わるし解法も変わる。
それまで日の光が当たらなかったユニットにもスポットが当たり、輝ける場面が出てくる……可能性がある。
役に立たないと思っていたユニットにも、活躍の場が与えられる。
実はこの要素もユーザーにとっては非常に魅力的だ。
ソシャゲがキャラゲーとなって幾星霜。
今ではひとつのコンテンツに100体以上のキャラクターが登場するのが当たり前である。
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かつてキャラクターの魅力とはその強さとイコールであった。
裏を返せば、弱いキャラクターはたとえキャラ的な魅力があったとしても、ゲーム中では活躍しづらく(させづらく)、優遇もされなかった。
弱いキャラクターは人気が出ない。
人気がないキャラクターは商品的魅力に欠けるため、新規ラインナップには並ばない。
新規ラインナップで挽回できないため、弱いキャラは汚名を濯ぐことができないという負のループ。
弱いキャラクターは、不人気で、不遇の存在であった。そして、そのキャラクターを愛してしまったユーザーも、いばらの道を歩まねばならなかったのである。
そんな時代はたしかにあった。
が。デッキ編成システムは一軸の強さ・弱さではなく、特製の組み合わせの方が重要視される。
簡単に言えば、特定のパラメーターの強弱のみでは強いか弱いかが判断できないのである。
欠けたパズルのピースになるユニットであれば、誰もが商品価値を持つ可能性がある。
活躍の機会が常にあることで、推しているのキャラが昔の意味で「弱くて不遇なキャラクター」となる確率は極めて減ったと言えよう。
マイナーキャラが好きなみんな、よかったな!(クソデカボイス)
運営視点での恩恵
さて、それではこのメリットを今度は運営側から見てみよう。
運営側としては、いくつかののっぴきならない課題があり、このシステムでそれらを一気に解決できる可能性が出てくる。
その課題とは「ゲームの物量」と「ガチャの販売」だ。
詳しく見ていこう。
ゲームの物量面の解決
ソシャゲの運営は物量に支えられている、と言ってもいい。
心躍るストーリーや魅力的なキャラクターの皮を剥いでしまえば、そこに残るのは単なるパラメーターの増減システムである。
新しくストーリーやキャラクターを追加することでしか、ユーザーに体験を提供できないといってもいい。
で。
その「皮」を追加するのが大変なのよ、という話。
ストーリーはシナリオライター、キャラクターはイラストレーター、世界観や設定を作り込もうと思ったらその他のスタッフ、音楽もと思ったらなおのこと。
とにかく、物量を実現するには人・金・時間が必要だ。
それらがあるヒットタイトルや運営母体、または安く人員が使える海外コンテンツを除き、とにかくコストの問題は頭を悩ませる。
さて、そんなコストを節約しつつ、ユーザーに楽しみながら時間を使ってくれるコンテンツを用意できるとしたら、こんなにありがたい話はないのではないだろうか。
例えば、既存のステージのギミックで、ボスの属性を変えて新たなクエストを作ることができれば……?
デッキ編成システムであれば、比較的低コストでユーザーに新しい遊びを提供できるのではないだろうか。
答えはイエスだ。
ユーザーとしても、ストックの奥を掘り出して未知なる有用なキャラクターを見つけるという新しい遊びができる。Win-Winだ。
もちろん、ベースのしっかりしたシステムがあり、ユーザーに愛されていてたくさんのプレイヤーを抱え、定期的な大規模アップデートがある安定運用で……というように、軸はしっかりしつつも物量がもうちょっとほしいよね、というタイトルのみにいえるのだろうが、それはそれとして。
「強いから引く」から「とりあえず引いておく」へ
次に、運営からみた場合のメリットその②―ガチャの販売促進である。
以前の記事でも触れたが、ガチャ設計はインフレが基本だ。
より強いユニットを出さなければ売れないし、強いユニットのあとに弱いユニットを出しても売れないのは明白である。必然だとも言える。
しかしながら、インフレしすぎればユーザーに疲弊を招き、コンテンツ自体の寿命はひっ迫する。
この問題をどう解決するか。
ここに「強さとは別の評価軸」を新設できれば、商品の幅はぐっと広がる。
例えばデッキ編成システムでいえば、属性であったりロールであったりが「強さとは別の評価軸」にあたるだろう。
例えば火属性しか持ってないユーザーには、たとえパラメーターが控えめでも水属性の需要があるし、ロールやスキルが違えばとりあえず揃えておく価値は生まれる。
ましてや、組み合わせのシナジーで本領を発揮したり、実際に試してみないと真価がわからない場合、ユーザーにとって「手に入れておく」という選択肢の重要度は増す。
たとえ今は活躍しなくても、そのうち必須になる可能性はあるのだ。
従来の「単純に強いから引く」「キャラクターが好きだから引く」から、「とりあえず所持しておく」「属性やロールをまんべんなくバランスよく持ちたい」と、より「揃えておく」という動機が普遍的になる。
この意識の変化は運営にとっては嬉しい事態だ。
副次的な効果として、所持すること・使ってみることでしかわからないキャラクターの魅力が再発見される可能性もある。
実際に使ってみたら強い、個別のキャラクターエピソードで意外な一面に触れられることで、かわいい・気に入ったとなるパターンも多い。
この「とりあえず手に入れておく」という需要の喚起は、そもそもたくさんのキャラクターをずらっと並べて展開することの多いソシャゲというコンテンツでは、非常に相性がいいとも言えるだろう。
存在はしても入手が渋られたり見向きもされないのでは、ビジネスにならないことはいうまでもない。
まとめ
というわけでまとめると、以下のようなことが恩恵として挙げられそうだ。
ユーザーには
考える遊びの提供
ユニットが腐りづらくなるというメリット
運営には
ガワ替えイベントに内容が持たせられる
組み合わせベースよるガチャ需要の喚起
一旦ここまで。
いいことしかないように書いてきたが、ここからは少しデッキ編成システムの持つ負の側面についてもまとめていこう。
光あれば逆に影があるのが世の常の言うものだ。