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【カタールW杯】旅の終わりは突然に~日本代表に足りなかったもの:総括

日本代表の戦いが終わりました。
先日行われた試合で、日本代表は前後半終わって1-1からの、
PK戦によって敗れました。

この結果にいろいろ思いはあるかと思いますが、
僕なりの分析、考察によって今回も振り返っていきたいと思います。

※ちょうど仕事が忙しくなり、内容をまとめるのに時間がかかってしまったため、話題として鮮度が落ちてしまったのは申し訳ないです。。。

◆これまでの戦いとは異なる条件

グループリーグと決勝トーナメントとで最も大きく異なる点は、
引き分けが存在しない事です。
トーナメント戦では必ずどちらかが脱落しなければならず、
前後半で勝敗が決しなければ30分間の延長、それでも決まらなければPK戦を行います。

つまり、これまでは前後半90分の中で考えればよかったところ、
+延長戦30分+PK戦という条件を加えて戦略を練らなければならず、
さらに、勝ち上がった次の試合の事まで想定に入れて、戦力の消耗を最小限に抑えなければならないなど、難易度はさらに上がります。

◆誤算ではあるものの・・・

今回ツキが無かったなあと思ったのは、体調不良による久保選手の欠場でした。
これまでなら後半から出場していた堂安選手が先発せざるを得なかったのもそれが原因です。
これによって日本代表は試合の流れを変える駒を1つ失いました。

今考えるとメンバー選考が尾を引いていて、バックアップが必要とはいえ、似た役割のメンバーがやや被りすぎていたようにも思います。
中盤の底、ボランチとよく言われるポジションの選手が4名いたのですが、そのうち、柴崎選手は一度も出場する機会がありませんでした。
遠藤選手は別格としても、鎌田選手がそのポジションを兼任できることも頭に入れておくべきでしたし、代わりに旗手選手を入れておけば、ボランチだけでなく、左サイドバック、もしくはトップ下などの攻撃的なポジションも兼任できるので、もっと柔軟に戦略を立てられた可能性はあると思います。
もしくは、後半からでも流れを変えられる駒として、原口選手も同じ役割を担うことができました。

とはいえ、そこを差し引いても、このメンバーで行くと決めたのですから、今となっては仕方がないと言うほかありません。

◆前半の両者の戦い方

今回、日本は前線からのプレスをかけていませんでした。
前田選手は相手の2人のセンターバックからは離れて引いており、中盤の選手を抑えるような形で、鎌田、堂安両選手が相手センターバックからサイドの選手へのパスコースを切るような形で前に出ていきました。
全体的には、中盤のラインがハーフウェーラインくらいで、ゾーンの守り方はスペイン戦と同じような感じです。

前半序盤の布陣

それに対して、クロアチアはモドリッチ選手があえてディフェンスライン近くまで引いて日本の選手を自陣の方に誘い込み、日本の3バックに対して、自分たちも3トップをあてることで、裏を狙ったときに1対1の状況を作りやすいようにしていました。

また、前田選手に中央を抑えられているのを回避するため、中盤底のブロゾビッチ選手がサイドに逃げたり、逆に彼が上がってモドリッチ選手やコバチッチ選手が下がってくるなど、試合の中で試行錯誤しながら攻め手を探っていました。
前半はクロアチア側が日本の守備に手を焼いていた印象です。

一方、日本側がボールを保持した際は、サイドで数的優位を作ろうとしていました。
それを阻止するために中盤の選手が出てくる際には、サイドチェンジを繰り返して、両サイドでチャンスを狙っていました。
今考えると、これを徹底していれば結果は変わっていたのかなと思います。

日本の攻撃は基本はサイドからのクロスでチャンスを作っていました。
相手の外側からボールを繋いでフィニッシュにもっていくやり方です。
その形から前田選手の惜しい場面も何度も見られました。

そして前半終了間際に、前田選手の得点が生まれます。
前半のセットプレーの場面ではサインプレーが多くみられ、それが功を奏した形でした。

◆ミスの多かった前半

とはいえ、不安を抱く場面も何度かありました。

守備の軸として期待されていた富安選手はこれが初の先発でしたが、らしくないミスを繰り返して、ピンチを招く場面も見られました。
また、サイドからの中へのボールはどうしても簡単につながれてしまうことが多く、そこから危ない場面もありました。

攻撃の場面においても、惜しい形は作ってもあと一歩のところで、ミスを犯すシーンもあり、前半のうちにもっと得点できる可能性はあったように感じました。

前半の戦い方は決して悪くはなく、後半も追加点を取れていたら、結果は変わっていたかもしれません。

◆相手の優位な形に・・・

クロアチアは後半修正してきました。

後半の失点の場面、クロアチアはサイドに3人がかりで仕掛けてきて、
その3人目の選手にボールを下げた時のチェックが甘くなっていました。
そこからクロスを上げられた際に、ファーサイドを守るのが本来前線にいるべき伊東純也選手で、そうなるとあの高さでうまさを兼ね備えたペリシッチ選手を抑えるのは非常に厳しいところで、しかもヘディングもお見事でした。

そこからはお互い消耗戦になり、攻撃の切り札として期待された三苫選手が投入されるも、彼がボールを持った際は3人で囲む徹底ぶりで、後半から入ったパシャリッチ選手の戻りの良さもあって、日本の左サイドの攻め手は完全に塞がれました。
三苫選手へのボールの渡し方もあまり良くなく、南野選手が相手選手のプレスバックを恐れて下がったところからボールを渡そうとする事で、三苫選手が後ろ向きにボールを受ける形になってしまいました。
もっと中央のもう少し高い位置で南野選手が相手選手を引き付けたうえで、三苫選手が前を向いた状態で渡せていれば、チャンスは生まれたかもしれません。

一方右サイドでは、伊東純也選手を中央に入れたのもよくありませんでした。
代わってサイドに入った酒井選手では攻撃においての1対1の強みに欠けていて、それによってこちらのサイドでも攻撃の優位性を失いました。
後半から投入した浅野選手が右サイドに流れて起点になろうともしましたが、相手センターバックの対応が非常に良くて、チャンスになりませんでした。

延長戦もとにかく浅野選手を使おうとしてはブロックされるという展開。
このまま試合はズルズルと相手のペースに引きずられる展開となり、クロアチア側は後半の失点シーンと同じように、とにかくサイドから戻した3人目からのファーサイドへのクロスでチャンスを狙う形を徹底して、あわよくば追加点を取ろうという作戦でした。

恐らくこの時点でクロアチア側ではすでにPK戦の事も視野に入っていたと思います。
そうなったとしても、追いついた側として精神的に優位に立てるという目算もあったでしょう。

◆PK戦に持ち込まれた

延長前後半を戦っても両者に得点は生まれず、
最終的には浅野選手以外全員が外し、敗北。
初のベスト8進出はなりませんでした。

PK戦になった時点で勝敗は決まったかなと思います。
相手は前大会でもPK戦を勝ち抜いてきましたし、得意と言っても差し支えないと思います。
次のブラジル戦でもクロアチアはPK戦で勝利しました。

逆に日本の選手からすれば、今大会初めて先制してから追いつかれ、
精神的に不利な状態を戦うことになりました。
PK戦に関しては所属チームでの経験など慣れの部分もありますし、あまり選手を悪く言えない部分もありますが、あえて言うならシュートモーションがあまりにも素直でコースを読みやすかったかもしれません。

そもそも決勝トーナメントに進んでPK戦に進んでいるだけでもすごいですし、自分で蹴ることを選択した選手たちは責められません。
年々ゴールキーパーのレベルも上がっていますので、ギリギリのコースを狙わなければならないという厳しさもありました。
そこは擁護べきです。

◆日本代表の限界

攻撃に関しては正直この試合で限界を見せてしまった感は否めず、やはり森保監督の采配には疑問を感じる部分が多いです。

三苫選手の対策をされるのはわかっていたのに、彼を生かすために周りがどう動くかなど、チームとしての攻撃の連動が感じられませんでした。
特に、先ほども書いた通り、三苫選手へのボールの渡し方が良くありませんでした。
これは、以前の記事で何度も書きましたし、三苫選手自身がアラートを出していた部分でもあります。

前述の通り、上手くいっていないのにサイドに流れる浅野選手を使おうするなど、首をかしげてしまう場面も多かったです。

何度も言いますが、選手たちはよく戦っていました。
問題はそれ以外のところにあります。

◆日本代表の戦いぶりを振り返る

今大会の日本代表の戦いぶりはどうだったでしょう?

強豪国であるドイツやスペインに勝った事は非常に喜ばしいことです。
ドラマティックな展開にハラハラドキドキさせられる、そういった面白さはあったと思います。

ただ、そもそもの目標はベスト8進出ですし、試合内容を見たうえで諸手を上げて喜べるかというと、そうでもありません。

正直、チームとして機能していたかというと、疑わしいものがあります。
またこれまで浮き彫りになってきた課題も解決されていません。

さらに付け加えるなら、今大会のヨーロッパ勢は正直選手のコンディションも含めて決して良い状態ではなく、もし日本が大会上位、ベスト8以上に進出するなら今大会は絶好の機会だったかもしれないと思うと、悔やまれてなりません。

◆日本代表に足りなかったものとは?

これまで何度も記事に書いておりますが、他のチームと比べても最も日本代表に足りないものは、チームとしての共通認識、もしくは基本方針の欠如です。

Jリーグが開幕してから約30年、98年ワールドカップに初出場してから24年、いまだ後進国ではあるものの、もはや歴史が浅いからとか、初心者扱いは許されないところまで来ております。
それどころか、レギュラーのほとんどが海外でプレーするなど、選手個人の能力は格段に上がってきています。
にもかかわらず、チームとしての戦い方の伝統だったり、形が伝承されることなく、監督が代わることに戦い方を変え、大会の総括もされず、チームが解散する毎にリセットされてしまう。

特に今回の森保ジャパンでは、チームにおいての攻守の基本方針が設定されることなく4年が経ち、引いた相手に苦戦するという問題に対して何も対策を講じないまま本大会を迎え、アジア予選序盤ではなかなか起用されず、予選の後半になってサブとしてようやく起用されるようになった三苫選手を「三苫が戦術」などという発言のちぐはぐさ、大会が始まる前から監督続投の可能性を示唆するなど、協会幹部の政治的な思惑だけが反映される方針など、懸念ばかりが残る結果になっています。

全体的には課題の多い悔しい結果になったと僕は思っています。
しかしながら、今後につながる光明もあったとも感じました。

◆日本代表が見せた忍耐力

その1つは、守りに入った際の忍耐力です。
ここは守り切る、とチームの中で意思統一されている時の選手たちの表情には自信が満ち溢れていました。

日本人は与えられたタスクを従順にこなすことに長けています。
勿論、選手個々の能力が上がってきているのも理由の1つかもしれませんが、精神的なものが一番大きいと感じています。
※そのモチベーションをコントロールできていたかもしれない部分については森保監督の功績として評価すべきかもしれません。

一方で、攻めることに対しては弱気になる傾向があるような気がしていて、これまでも、特にシュートを撃つ場面、PKの場面も含めて、コースが甘くなったり、外してしまうことが多いなと思います。
まさにこれが、いわゆる“決定力不足“の原因の1つかと。

そういった詰めの甘さを一つ一つクリアしていくことが、1発勝負の大会で力を発揮してくことにつながるのではないかと思います。

あとは、攻めるのか守るのかが微妙な時間帯で、誰がどう判断して意思統一するのかが今後の課題かもしれません。

◆強豪国を翻弄した、チームとしてのポリバレントさ

もう1つは変幻自在に形を変える戦い方です。

正直これが意図的なのか、偶発的に生じたものかはわかりませんが、
試合の中で何度もチームの形を変えることで、相手を混乱させることには成功していたように思います。

そこで思い出したのが、今大会直前に書かれていたインタビュー記事での、
故オシム監督の通訳を務めていた、千田善さんのコメントです。

“「オシムさんが理想としていたのは、変幻自在なチームだったと思います。ボールをコントロールしてゲームを支配することもできれば、引いて守って鋭いカウンターを繰り出して、強豪国に対してサプライズを起こす。そういう日本代表を作って、世界にお披露目するのが夢だったと思います。実際、フォーメーションひとつ取っても、4-4-2、4-2-3-1、3-4-3、3-5-2といろいろやっていたし、試合の中で選手が話し合ってフォーメーションを変えたゲームも、何回もありましたからね」“

オシムさんが代表監督就任時に掲げていた目標は、日本代表のサッカーを日本らしいサッカーにすること」“でした。

千田さんが語る、オシムさんの理想のチームの形が、今大会の日本代表の戦いぶりと少し重なるような気がしていて、これが今後の伝統となって継承されていけば、面白いことになりそうだと感じています。

◆今後の日本代表は?

協会幹部から次の監督の話も漏れ出てきておりますが、
そもそも今大会の総括もできていない時点で、その話をするのはどうかと思います。
今の時点で森保監督の続投を決めてしまうのは、任命した側が今大会の結果の明るく見える部分だけを自分の手柄として、保身に走っているとしか思えないのです。

このように代表チームが政治の道具として使われてしまうようでは、この先日本代表に未来はないでしょう。

協会側がこの大会の結果を、森保監督をどう評価するのか、きちんとそれを公表してから、次の事を考えるべきだと、僕は思います。



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