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森保監督の正体

あのアジアカップでの敗戦以降、代表選手の周辺から、森保監督を表立って批判しないまでも、疑問を抱いているような発言がちらほら出てくるようになりました。

はたして、森保監督はどういう監督で、今後チームをどのようにしていくのでしょうか?

ちなみに、前回のW杯の時に書いた森保JAPANについての考察はこちらです。




◆森保監督のチームビルディングの根幹

ここ最近で、Footballzoneの小杉舞氏のインタビュー記事での森保監督のコメントが、一部で波紋を呼んでおります。

この記事の中で語っていたのが、まず、アジアカップのイラン戦、この試合の敗因が、自身の後半の交代策だったとした上で、
森保監督自身の、すべての大会、試合に対しての向き合い方として、
「何も残らない試合をしちゃいけない」
というのを大前提としていると語り、さらにチームを作り上げる上で、
「目の前の一戦の勝利」と「日本サッカーの発展」の2つの軸、
つまり、26年後を見た采配と2年後を見た采配の両輪で行っているとの事。

◆W杯ドイツ戦での采配について

ちなみに、カタールW杯のドイツ戦に関しては、「勝っても負けてもいいと思っている自分もいた」とし、「前半上手くいかなくて、結局あのままいったら何ができて何ができなかったのか、個のレベルが分からないまま終わってしまう。何も残らない試合はしてはいけない」との思いから後半はマンツーマンへの変更を行い、「1対1の局面で勝て、というのは、やはりそこのレベルアップがあって、個のレベルアップがあって、組織として成り立つという考え方をしなければいけない」と語りました。
要約すれば、ワールドカップという大舞台において、あえて個の力を試して、負けてもそれが足りなかったのだから仕方がない、という意図だったようです。

◆アジアカップのイラン戦での采配について

ちなみにイラン戦でもそういった、自分たちの力を測るというような意味であえて動かなかったのか?という記者の問いに対して、
「それはあったと思う」と森保監督は語り、アジアが日本対策として行ってきたロングボールへどこまで対応できるのかという、"個の力"を試す意図があったというコメントを残しています。

これらの発言に対して、皆さんは納得がいくでしょうか?
僕は納得できませんでした。
最後には"個の力"だと言って、選手に丸投げしているわけです。
しかも、W杯とアジアカップという、国際大会の場においてです。

例えばですが、役者だけ一流を揃えて、脚本も演出もないドラマがあるでしょうか?
だったらもう全部アドリブでいいわけです。

◆森保監督の発言の矛盾

"個の力"で全部解決するのであれば、戦術も何もいりません。
まるで、"個の力"と戦術とがそれぞれ背反するものだとでも思っているようにも、僕は感じました。

にもかかわらず、"個の力"の代表格である久保選手などは早々に交代させられてしまったり、4バックと5バックを試してみたり、セットプレー専門のコーチを雇ったり、戦術的に何かしようという試みはしている様子はちらほら見られています。
(但し、瞬間的な戦術パターンなどは考えていたとしても、それ以前のチームとしての原則や共通意識は、今のところ見受けられません)

以前にも「確かに私自身は海外へ行ってプレーしたことがない」と言って、選手に戦術面まで委ねるような発言をしたりなど、正直なところ、この方はどこか他人事のようでもあり、あるいはその時の思い付きで発言して、後付けでいいように理屈を述べているんじゃないかと思える事が非常に多いです。

◆気持ちが一つになっていない

これはサッカーに限らず、会社勤めをしている方ならわかる事だと思いますが、マネージメントにおいて何が一番大切か、すべてのダメな組織に共通するのが、気持ちが一つになっていない、つまり、チーム全体が同じ意識で戦えるかどうかが大事なわけです。

それで言うと、森保監督としては別に"100:0"で個の力に振ってもいいわけですが、どうやら選手はそう思っておらず、気持ちが通じ合ってているとはとても思えません。

例えば、守田選手に関してはアジアカップ後に、
「もっとアドバイスとか、外からこうした方がいいとか、チームとしてこういうことを徹底しようとかが欲しい。チームとしての徹底度が足りなくて試合展開を握られるということがゼロじゃないし、この大会でも少なからずあった。」と、チームとしての方向性の提示が無い、もしくは足りていないと語った上で、
「そこの決定権が僕にある必要はないのかなと思う。あくまで僕は最後の微調整だけでいいのかなと。」と、
監督やコーチ陣にそれらを求めるような発言をしていました。

◆"個の力"を出し切れない状況があった

また、三苫選手の中からも、森保監督の言う"個の力"を出し切れない状況があった、という発言が出てきています。

「全員の100パーセントは出し切れていない、というのは確実にあると思います。相手のロングボールに対しても、 なかなか自分たち(のやり方)がハッキリしないところもありましたし、解決できないまま終わった。」と、述べた上で、
「自分がピッチに入った時も、やるべきことが統一できていないところがあった。」
「(選手が)先頭に立ってピッチ内でやるべきこともありますが、チーム全体としてやらないといけないこともあります。」

この発言に関しても、まず、選手が"個の力"を出し切れていない状況があるのであれば、チームとして改善をしなければならないわけです。
例えば、三苫選手にボールが良い形でボールを受けれるように、他の選手の配置や役割を変えるとか、そういったチーム全体で解決するべきことをやれていない、さらに、チームとしての方向性すら定まっていないと、三苫選手は語っているのです。

◆森保監督は人情型?芸術家気質?

Jリーグの中でも、早くにポジショナルプレー(ピッチ上で優位性を確保し、敵のストロングポイントを打ち消し、勝利を手にしていくためのノウハウ)を浸透させ、攻守にわたってチームの原理原則を徹底した上で、選手の"個の力"を生かすサッカーをしてきた、川崎フロンターレ出身の2選手からこういった発言が出てくるのは、もはや必然かもしれません。

それ以外の選手に関しても、今までのインタビュー記事などを見れば、細かいところに不満に近いものは現れてきています。

また、以前に森保監督が試合中に取っているメモの内容が一部公開されたことがあって、その内容が以下の記事に掲載されていましたが、

試合中の修正点や戦術的な気付きが書いてあるのだろうと思いきや、「日本に不可能はない」「日本人であること 喜び 誇り 幸せ」などと記載してあったとの事。

大事な試合中に書いた内容の、あまりのポエムっぷりに絶句してしまい、背筋が凍るような怖さすら覚えました。
温かい目で見るのであれば、"そういう心もちの人"なんだなと思います。

IQはともかく、EQの面での有能さはあって、他人から表立って嫌われない、選手や協会幹部、記者からも優しさとかいうか、人柄を評価され、自作のポエムのようなメモで自分を鼓舞しているロマンの人。
全てのパラメーターを人情に全振りしたような、そういう監督なんだな、という事が改めて分かりました。

◆サポーターの熱が冷めていく

それでも、恐らく彼が日本代表の監督でなければ、僕も何も言わないと思います。
ぶっちゃけ、彼以上にヤバい監督は日本国内にも海外にもいっぱいいます。
いまだに戦術云々どころか、人としての選手からの信頼よりも、権力で従わせるだけの日本人監督も多いので、それに比べたらだいぶマシな方です。
ただ、日本代表だから、応援しなければならないのに、どうしてもちらほら上がってくるヤバめのエピソードに対して、「この監督大丈夫か?」という懸念を抱かずにはいられません。

日本代表のサポーターなら正直これを聞いて萎える人は多いのではないでしょうか?
我々は今、何を見させられているのか?何を応援すればいいのか?
日本代表を熱をもって応援したいと思っている人たちがどう思うか?
今はとりあえず、代表戦あるからと見に来てくれる人たちも、果たして今後も来てくれるのだろうか?と、そう思うわけです。

◆それでも今解任すべきではない理由

それでも、前にも言いましたが、監督を変えたところで、日本代表が劇的に良くなることはありません。
結局、その監督を選び、評価する、協会組織が変わらない限り、人を変えても同じような事はまた起こります。

大事なのは優秀な監督を呼べる、選べる組織作りと、優秀な人材を評価し、育成できる環境作りです。

選手についてはここまで育てる事が出来たわけですから、指導者だってできるはずです。

なので、現時点でのベストは森保監督、と思うようにしたいと思います。

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