見出し画像

FEHの神様ずかん

FEHの世界には神様といわれる存在が複数あるわけですがその分類や特徴などをまとめた情報が特に無いようなので自分でやろうかなと思った次第です。
主観や感想が大いに含まれており設定資料として作ったものではないので参考程度でお願いします。

1 神竜とnot神竜

 FEHには様々な神格がいるけれど、概ね神竜とそうでない神に分類されます。現在(2024/05/19)の時点では後者にあたる種族はヴァナの神々と天上神(アルフォズルの一派)が存在します。
 また、神竜の眷属として、あるいはそれ以外の霊的存在として神獣が存在します。

2 神竜たち
 太古の昔に人間達に自分の血と力を与えた神々と崇められる竜です。代表的な神竜はアスクの守護神のアスクとエンブラの守護神のエンブラ、はっきりと神竜として現れた初の人物であるニフルがいます。

3 参考としての北欧神話
 FEシリーズは何かしらの形で北欧神話の名称や要素を取り入れている事が多いのですが、大体の場合は名前だけ拝借したり要素の一部だけ借りたりしているのに対してFEHでは結構北欧神話の内容に忠実に設定されています。なので北欧神話の内容を参考に考えると考察に深みが出て面白いかもしれません。

4 具体論
 以下では神々と呼ばれる存在達を具体的に紹介します。


4-⒈神竜ではない神々

⑴天上神

 ロキが初出の天上の神々です。具体的な名称ははっきり出てはいませんが、名前や要素、セイズからアースガルズという神々の国がある事を聞ける点から、ほぼアースガルズの神々(北欧神話のアース神族)でしょう。
 北欧神話において主人公サイドの神々で、オーディンやトール、ロキは非常に有名です。一方で北欧神話は元々ヴァイキングが信仰していた神話で勇猛さが尊ばれていた側面からか結構血の気が多かったり狡猾だったりえげつない側面が見え隠れします。
 これらを汲んでかFEHに登場する天上神達は打算的で狡猾、独自の美学のようなものを持っていてよく言えば孤高、悪く言えば大変独善的で傲慢な神として描かれています。現在においてはちょこちょこ顔出しをするものの中心的な存在として取り上げられていないのでいまだ謎の多い神々です。

①アルフォズル
 天上神の大ボス?らしくロキとトールの上司にあたる存在で、なんでも思った通りに出来てしまうほどの凄まじい力を持つ神のようです。ロキとトールを使ってあちこちで人間達や他の神々に干渉していますが、その目的も姿も未だ明らかになっていません。
 元ネタは北欧神話のオーディンで、アルフォズルもオーディンの名前の一つです。

②ロキ
 最も早く現れた天上神で、戯れの神として人間や神々によくちょっかいをかけてきます。スルトの軍師としてムスペルと共にアスクやニフルを攻撃したかと思えば、召喚を再現しようとするエイトリには本気で殺しにかかったりと謎の多い行動を繰り返します。ほとんどの場合はおふざけ半分使命半分で行動しているように見えますが、彼女の本当の内心がどうなのかは誰にも分かりません。享楽的な性格のように見えますがそれすらも演技かもしれません。ただし、確定した事象は面白くないと思っているのは本音らしく、不安定や混沌を好むようです。
 変身能力を持っており自由自在に外見を変えられます。振る舞いも本人そっくりですが、ロキ自身は離れた場所を透視する能力は持っていないのか正体を見抜かれる事も多いです。また目に見える女性の姿はアバターなのかたとえ彼女を殺害しても真の意味で殺したことにはならないことが示唆されています。
 元ネタは北欧神話のロキ。神話ではアース神族とかれらと敵対する巨人(霜の巨人)のハーフでラグナロクの直接のきっかけをつくった悪神です。神話では男神ですが、神話の中でロキとトールが女装をする話があるのでそれになぞってかFEHのロキとトールは女神の姿をしています。

③トール
 ミョルニルのイベントの時に襲ってくるトンデモ女神で、ロキの古くからの親友です。人間が運命に抗って戦う姿に強い感動を覚える性格で、それを見たいがために試練をどんどん送りつけてくるかなり困ったお姉さんです。3部でもリーヴとスラシルに気まぐれで救済を与えようとして激昂させたりと、本人は良かれと思ってやっているけどそれが人間のプライドを踏み躙る行為だと理解できていない節がちょっとあります。あと毎年子どもの日?イベントでロリやショタに力を与えてくれるお姉さんとして現れるのでロリコンショタコンではないかと思われます。
 元ネタは北欧神話のトール。最強の神で持っている戦鎚ミョルニルも超有名です。北欧神話のトールもロキと仲良しです。

⑵ヴァナの神々

 光の国ヴァナに住む神々で、光の神です。人の形をしていますが(少なくとも王族は)その正体は巨大な山羊です。4部、7部に登場する神々で神格が高いのか人間の手では完全に殺しきる事は出来ず、たとえ命を落としても復活できる余地があります。また精神のみで生存出来たり、自身の領域内では肉眼を通さなくても様々なものを通して透視が出来たり、夢を現実に変えたり、時に干渉したりとシリーズを通して見てもとんでもない能力持ちが多いです。同じFEH内の神々でも神竜よりさらに強い能力を持っている事が多く、天上神に並ぶほど強大な力を持っています。
 その一方で、性格は誰かに愛情を向けたり向けられたがったりとにかく人間を嫌悪したり逆に猫可愛がりしたりと極めて直情的で感情的、無計画的で特に自身の愛情に振り回されがちな人間臭い性格をしています。天上神が住む神々の国アースガルズとは仲が悪いようですが、合理的で冷徹な天上神と真反対の性格が関係しているのかも?
 なお、ネルトゥスいわく神々の多くは人間に興味が無いようなのでセイズやヘイズのように人間に好意的な神の方が少数派のようです。
 元ネタは北欧神話のヴァン神族。ヴァン神族は平和と豊穣を司り、光り輝く姿をしていたようです。また、賢い巨人とも形容されていますが大きさは人間と同じくらいだったようです。未来予知が出来たともされています。ついでに性に開放的で近親相姦がごく当たり前の行為であり、家族同士で関係を持つのも当然だったとか。
 なお、FEHの英語版は北欧神話のヴァン神族に沿って、単体のヴァナの神はヴァンル、複数のヴァナの神はヴァニールと呼ばれています。

①セイズ
 7部のヒロイン的存在で、ヴァナの光の女神の一柱です。義妹のヘイズと共にニョルズに拾われ、彼に仕えていますが拾われる前の記憶を失っています。
 真面目で誠実、初心な性格をしており、女神として正しくあらねばならないという責任感がとても強いのですがどこか抜けているためいまいち女神様としての威厳には欠けています。人間に対しては女神らしく人の子よーとか言って導こうとし若干上から目線ですが、人間と仲良くなろうとするヴァナの神の中では珍しいタイプのようです。方向音痴であり、これは大人になっても治っていません。
 その正体はグルヴェイグの過去の姿でありクワシルの未来の姿で、ヘイズの姉であると同時に母親でもあります。
 グルヴェイグの過去という事もあってか僅かながら時間を操作する力を持っており、7部では最終的に過去と未来の自分の精神の時に干渉して自分の中に送る事で生き延びさせる事に成功しました。
 なお、セイズ、ヘイズ、グルヴェイグ、クワシルはフロージ達と異なり化身しません。山羊のツノも生えていません。グルヴェイグは額からツノが生えていますが、一角獣のようなもので山羊とは明らかに違う形をしています。その為彼女達の本来の姿が何なのかはいまだに不明です。
 元ネタは北欧神話の魔術であるセイズから。ヴァン神族のフレイヤや魔女グルヴェイグが使う他、現実に昔の巫女などが使っていた御呪いだったようです。儀式的な呪術の他、日常的なおまじないとしても使われていたそうです。

②ヘイズ
 セイズの義理の妹で、姉に比べて無邪気で人懐っこいヴァナの女神です。グルヴェイグに呪われてしまったため徐々に呪いに蝕まれており、自分の命が長くないことに薄々気がついています。
 愛情深い性格で、呪いに侵食されきってセイズの手にかかる時ですら最期の言葉はずっとお姉様の事が大好きだから、でした。
 正体はセイズの義理の妹ではなく実の娘。セイズと(おそらく)エクラが女神の契りを交わし、その後セイズがグルヴェイグに変じた後に世界が滅んだ未来で生まれ、母親であるグルヴェイグにセイズのいる時間(現在)に送り込まれていました。グルヴェイグから受けたとされる呪いは呪われたからではなく、おそらく生まれた時から黄金の蛇の呪いを宿していたからと思われます。
 元ネタは北欧神話の魔女グルヴェイグが人間の姿を取った際に名乗った偽名です。

③グルヴェイグ
 ヴァナの伝承に伝わる世界を滅ぼす魔女です。彼女が現れると世界(アスクとエンブラがあるミズガルズ)が滅んでしまうので討伐しようというのが7部の始まりです。
 グルヴェイグは現在の時間ではなく未来の世界にいる存在で、7部で現れる時は未来から現在に時間を超えて現れています。時を自在に操る力を持っており、致命傷を受けても死ぬ前に時間を巻き戻して無かった事にしたり、触れた相手の時間を生まれる前に巻き戻して消滅させたり、逆に時を進めて老衰で殺したりととんでもない事ができます。また、特定の存在の時間をいじるだけでなく世界全体の時間を進めたり戻したり、特定の存在を現在の状態のまま過去や未来に飛ばしたりもできるやりたい放題っぷりです。
 その正体はセイズの未来の姿です。セイズがヘイズを殺害して呪いを受け取ってしまうことをはじめとして絶望に染まってしまうとグルヴェイグになってしまいます。この状態になると黄金の蛇の呪いにより決まった運命に至る行動以外が出来なくなるようです。
 最終的には自分の正体を知ったエクラに自分を殺して永遠に循環し続ける時の連鎖を止めるように頼み、セイズに呪いごと体を破壊されて死亡しました。ただし、セイズにより体から精神のみを切り離して現在の時間に送られる事でセイズの精神に合流し、これにより存在としては生き延びる事ができました。
 本当にセイズの未来の姿なのか?と思うほどセイズとは性格が似ておらず、かなり悲観的で運命は変えられないと消極的です。一方でエクラに対してとても好意的な点は変わっておらず、照れ隠しせずにはっきりと好きと言ってきます。なお方向音痴は治っていません。
 ヴァナの神は山羊のシンボルと関連が深いですが、彼女は山羊の要素が無く蛇がシンボルです。これは蛇が古来から永遠と再生の象徴であると考えられてきたからと思われます。また、セイズが日本神話の天女の衣装に似た服を纏っていることやグルヴェイグから生えている蛇が8匹いることから八岐大蛇がモチーフではないかと思われます。さらにグルヴェイグ自身の頭と蛇の8つの頭を合わせれば頭が9つになるのでギリシャ神話の不死身の大蛇ヒュドラもモデルかもしれません。
 元ネタは北欧神話の魔女グルヴェイグ。彼女のもたらした黄金が神々を狂わせた為、アース神族とヴァン神族の戦いが勃発しました。不死身の魔女で、3度殺されても死ななかったようです。その正体ははっきりしませんがフレイヤではないかというのが通説のようです。

④クワシル
 過去の世界で出会ったヴァナの女神です。大怪我をしたエクラを介抱してくれますが、彼女自身は物心ついたときからほとんどの記憶を失っており、孤独に過ごしていたようです。
 その正体はセイズの過去の姿で、グルヴェイグの過去の姿でもあります。世界を滅ぼした後の未来で、グルヴェイグは生まれたばかりのヘイズを現在の世界に送り出した後、自分の肉体の時間を戻してクワシルの姿になり、さらにクワシルの姿で過去の世界に飛び、そして記憶と力の大半を封印します。そしてクワシルはエクラに会った後にさらに記憶を封じてセイズになり、セイズはその後に未来から送られてきたヘイズと姉妹として過ごした後に彼女を殺し、その呪いを受け継いでグルヴェイグになる。これによって逆説的に因果が構築され、円環と呼ばれる時の循環が完成します。
 クワシルは自分がグルヴェイグである事を知っていますが、それ以外の記憶は欠落しています。円環を維持する為に必要な事を成さねばならないという義務感はありますが、未来からやってきた後に孤独に生きてきた為自分の生に虚無的な感情を持っています。そして、何もない虚ろな存在である自分よりセイズの方が生き残るべきと言って死を受け入れました。エクラと過ごした100日間の記憶だけが唯一の楽しみだった事すらも「忘れた、それでいい」と否定して。
 しかし、グルヴェイグ共々セイズにより精神だけを現在のセイズの精神内に送られた為、肉体は失っていますが存在としては生き延びる事が出来ました。
 なお、ヘイズだけでなくクワシルとグルヴェイグも黄金の蛇に寄生され呪われています。これはセイズがヘイズを殺して呪いのない状態から呪いを受け取るのではなく、元からセイズが呪いを宿した状態でさらにヘイズから呪いを受け取ることで無限大に力が強くなる、という理屈なのではないかと思われます。
 元ネタは北欧神話のヴァン神族クワシル。ヴァン神族では最も賢い神と言われ、クワシルが知らない事は無かったそうです。ちなみに男性です。

⑤ネルトゥス
 ニョルズの妹で、フロージとフレイヤの叔母です。大地の女神であり、大地に生きるすべての命を深く愛しています。人間もその内に含まれており、ヴァナの神にしては珍しく人間に興味津々で目に入れても痛くないくらいに可愛がっています。一方で海の神である兄ニョルズとは大変仲が悪く、彼が死んだ後もそれに触れる事すら無いという扱いです。
 最初はニョルズの神器を盗んだ困ったお姉さんとして登場しますが、終盤ではどうも時の循環を認識してこれを打開する為に協力しているのではないか?と思われるほどにあれこれ詳しく教えてくれます。一方で真の黒幕はこいつでは?と思うほどにうさん臭かったのですが、ただの人間カワイイお姉さんでした。
 ヴァナの神の王族に漏れず山羊の姿が正体の女神で、頭にはツノが一対生えています。化身すると甥や姪とは対照的な黒い山羊になります(なお甥や姪と異なり山羊の目ではないです)。
 元ネタは大地の神ネルトゥスですがこちらは北欧神話が出典ではありません。北欧神話のニョルズと同一視されたりニョルズの妹であり妻?とされたりしていますが、はっきりとした関係はよく分かっていません。

⑥ニョルズ
 光の国であり神々の国であるヴァナの王で、ネルトゥスの兄でありフロージ・フレイヤの(多分)父親です。威厳たっぷりのナイスミドルですが残念ながら戦闘する事もないまま退場されました。
 海の神で水のあるところなら何でもお見通し、ヴァナで起きてる事は全部知ってるすごい神様ですが、妹ネルトゥスとは性格が真反対で人間が大嫌いです。というのも自分が加齢に伴いかつての栄光が翳っていく中で人間は種として繁栄していくのが気に入らない、という嫉妬が原因です。個人の自分と種としての人間を比較していますが別にヴァナの神全体としては衰退してないからよくない?むしろ色んな意味で豊かじゃない?特定の場所が。
 そんな訳でニョルズは人間が気に入らないのですが、過去の世界で突然現れた正体不明の女神クワシルの「私はグルヴェイグです」という発言で伝承を本気にし、人間を滅ぼす事を計画してしまいます。これによってセイズとヘイズを使い、セイズにヘイズを殺させる事で呪いを蓄積させてグルヴェイグに変化させる事でミズガルズ(人間の世界)を滅ぼすつもりでした。
 しかし見込みが甘々なニョルズはグルヴェイグが自分に牙を剥く事を想定していなかったようです。セイズ(だったグルヴェイグ)に拾って育ててやった恩を忘れたのかと言いますが無情にもわざわざ「最も嫌であろう」老衰させる事で殺されてしまいました。
 元ネタは北欧神話の海の神ニョルズ。フロージ(フレイ)とフレイヤの父親で大変な美脚の持ち主です。息子娘とともにアースガルズに送られた事以外いまいち影の薄い神ですが、さりげなくラグナロクを生き残ってヴァナヘイム(ヴァン神族の住む世界)に戻る事が示唆されています。

⑦フロージ
 夢の国アルフの王でフレイヤの兄です。元々はヴァナの神の一柱でしたが、何かのきっかけで妹を連れてヴァナを出て自分の国を持ちました。
 寛大で温厚な神で、妹も人間も愛するお兄さんです。衣装でわかりづらいですが中はバッキバキの鋼の如き肉体美です。ギリシャ彫刻かな。
 フロージは夢の世界に国を持ち、フレイヤと共に過ごしていましたが、ある時に虚無の王ギンヌンガガプの侵攻を受け、夢の世界を救うには子どもの持つ力が必要になってしまいます。しかしそれは同時に子どもは妖精となり二度と人間には戻れない事を意味します。フロージとフレイヤは悩んだ末に四人の親から見放された子どもを選んで妖精に変え、妖精となった四人(ピアニー、スカビオサ、プルメリア、ルピナス)は見事夢の世界を救い、その後も妖精として生き続けることになりました。しかしフロージは今も子ども達を人間でなくしてしまった選択を正しかったのかと悩み続けています。
 その後、自分へ好意を向けるフレイヤに対してその想いに応えられない事を告げますが、フレイヤは傷付き悪夢の国を作りそこへ逃げ出してしまいます。その後さらにしばらくして、フレイヤは「兄が愛する人間達を支配すれば、兄は自分を愛してくれるはずだ」と思い込み人間を攻撃し始めます。これを見たフロージは自分がいるからフレイヤはおかしくなる、自分は妹を本当に愛している、誰よりも愛している、だからそんな事をして欲しくないと告げて事実上の自殺をしてしまいました。
 ヴァナの神々にしては珍しく(?)かなりまともな感性の持ち主な一方で、繊細な性格らしく今もなお妹のことや妖精達の事で自分の選択が正しかったのかと悩み続けています。
 ヴァナの神々ではフレイヤ共々初出ですが、その正体がヴァナの神であるとはっきり分かったのは7部から。王族なのでその正体は巨大な山羊です。
 夢の世界は何でもありな為か夢の中でさらに寝ていてなおかつ夢の世界の中で起きている事なら目で見なくても分かる……というヴァナの神らしい超常的な力をお持ちです。唯一、人間の手で完全に殺されているヴァナの神ですが、彼が自殺幇助を依頼している事を考えると彼の意思によって死んでいると考える余地があります。
 元ネタは北欧神話の豊穣神フレイ。フレイという名前は新暗黒竜のキャラで使われているので別名のフロージが使われています。豊穣神ですが男神です。

⑧フレイヤ
 悪夢の国スヴァルトアルフの女王でフロージの妹です。フロージとフレイヤはネルトゥスの甥と姪なのでおそらくニョルズが父親と思われます。
 元々兄共々ヴァナに住んでいたヴァナの女神ですが、幼い頃に鼻の周りにあざがあった事から豚みたいと笑われていた事、そうして笑っていた周囲がフレイヤが大人になって美しくなると手のひらを返した事、兄だけがずっと変わらずフレイヤに優しかった事から周囲に対して強い不信感を持っており、兄以外に心を開かない存在になってしまいました。やがて兄に対する感情は親愛を超えたものになり、兄に求婚しますがこれを拒否された為悪夢の国に逃亡してしまいます。その後フレイヤが兄を手に入れる為に暴走を始める……というのが4部の話。兄フロージが自殺同然の方法で死亡した後は自分の苦しみを思い知らせる為に半ば八つ当たり的にエクラ達人間を攻撃し、さらにはアルフォンスと妖精の死をちらつかせて悪夢の支配を受け入れる事を要求しますが失敗し撃退されます。自分の要求を呑まなければ妖精達を殺すと言ったフレイヤですが、敗北後に最後の力で既に死亡していたスカビオサとプルメリアを復活させ命を落としました。しかしこれは完全な死亡ではなく休眠に近いもので、後日談である戦禍の連戦で再び目覚めて今度は妖精達の主としてギンヌンガガプを退けています。
 幼い頃はアイトという名前の女神でした。この頃はヴァナにいた為か、首にヴァナの国章の装飾を付けています。その後フロージは彼女を連れてヴァナを出るのですが、何を理由に出て行ったのかは明らかになっていません。とはいえ、フレイヤが幼い頃に容姿を理由に笑われた事が原因としてあったのではないかと思われます。一応フレイヤは王族のはずなんだがヴァナの神々はロックだな。まあ4部の頃はそこまで詰めた設定ではなかったのだろうと思われます。
 元ネタは北欧神話のフレイヤ。ヴァン神族では一番?有名な女神ではないでしょうか。愛と戦いの女神で彼女を手に入れる為に何度も挑戦者が現れるほど。なおフレイヤ自身は性にだらしなく兄とも父ともそういう関係だったそうです。ヴァン神族は近親相姦が普通だから仕方ないね。
 彼女の化身した姿が山羊なのは北欧神話のフレイヤが山羊に変身して兄と遊んでいた逸話からと思われます。また、彼女の親族という設定の為にヴァナの王族は化身すると山羊の姿になると思われます。

4-2.神竜たち

⑴アスク

 エクラ達が所属する特務がある国アスクの神竜です。国の方のアスクとエンブラはミズガルズという世界にあり、神竜アスクは神竜エンブラと共に荒れ果てた世界に降臨して人間達に血と力と加護を与え、国を作らせました。アルフォンスとシャロンはアスクと契約して血と力をもらった最初の王リーヴの子孫です。
 化身した姿は巨大な雄牛ですが、れっきとした神竜です。異界と繋がる扉を開く力の根源でもあり、世界樹ユグドラシルから誕生した神竜の一体です。眷属には神獣アシュがいます。
 快活な男性で非常に友好的、誠実で親切ながら高潔で達観した価値観を持っており、繋がる力を持ちながらもその思想の根源は個人主義(人は人、自分は自分で生きており人や自分の考えに深く干渉しない)で独立した個性を互いに尊重しよう、というスタンスです。この性格がエンブラが狂気に走る原因のひとつではないかとも思われます。
 人間達の持つ絆を素晴らしいと思っており、人間にとても好意的な神竜です。かつてエンブラと共に降臨して人間達を導きましたが、人間達がやがて神竜の力を得ようと剣を向け始めるとそれでも人間達を尊重し愛し守り続ける意思を見せました。それは今も変わっておらず、人間達の為になるならば躊躇なく自身を差し出します。6部では特務をエンブラから救い出し彼女を討つ手段を与えましたが、同時に自身の開く力と相反するエンブラの力に晒されたことにより衰弱し、最後は特務と娘でもあるアシュを送り出して死亡しました。
 元ネタは北欧神話の最初の人間の男の名前から。化身した姿が牛なのは豊穣の象徴だから?

⑵エンブラ

 アスクと敵対する(していた)エンブラ帝国の神竜で、かつて神竜アスクと共に降臨して人間に加護を与えた神竜です。アスクの繋がる力に対し、異界の扉を閉じる力を持っています。エンブラ帝国の最初の女帝であるスラシルと契約して加護を与えており、現在も皇女ヴェロニカがその子孫として存在しています。
 化身した姿は巨大な雌の蝙蝠ですがこちらもれっきとした神竜です。眷属には神獣エルムがいます。
 外交的で友好的なアスクに比べてとても内向的で陰鬱な性格の女性の神竜で、最初は人間に加護を与えて導くのも嫌がっていました。しかし言葉や態度とは裏腹に愛情深く、同時にとても依存的で裏切られたと感じるととても傷ついてしまう繊細な感性の持ち主です。その為最初は加護を与えた人間達から女神と讃えられ崇められていました。現在でも眷属であるエルムからは絶大な敬愛を向けられており、エンブラもエルムのことは大切にしています。
 かつてアスクと共に人間に加護を与えていましたが、人がやがて神竜の力を得ようとし始めついにエンブラを攻撃します。咄嗟に反撃した際に人間を殺してしまったエンブラは人を憎悪こそしませんでしたが、アスクが危ないと考え彼を守ろうとします。しかしアスクの答えはたとえ裏切られたとしても人間を信じたい、というものでした。
 これを受けたエンブラは「人間を殺す」事でアスクを守ろうとし、周囲の誤解を解くこともなく孤立していきました。最後まで彼女は本心を誰にも開示する事なく、人間を殺し続けた末に特務に討たれ死亡しました。
 元ネタは最初に作られた人間の女性エンブラから。また彼女の化身した姿が蝙蝠なのはチスイコウモリが元ネタではないかと思われます。チスイコウモリは利他行為を行う習性があり、吸血できずに飢えた仲間を見つけると自分の飲んだ血を吐き戻して与えます。そして利他行為をする傾向が高い個体ほど、飢えた時に仲間から助けてもらいやすいそうです。

⑶ニフル

 氷の国ニフルの神竜で、かつてニフルの最初の女王フヴェルと契約して血と力を与えました。ニフルはアスクとエンブラがあるミズガルズとは別の世界にあるのか、異界の扉を越える事でたどり着く事ができます。フヴェルは不幸にも神竜ムスペルに殺されましたが、彼女の子孫として現在もフィヨルムとフリーズ、ユルグが存在しています(スリーズも子孫ですが彼女は2部で死亡しています)。
 化身した姿は巨大な雌の狼ですが、彼女もれっきとした神竜です。
 氷のように冷徹で変化が無い静寂を好む性格をしており、感情の振れも気に入らないのかフィヨルムがあれこれ話すとすぐに雪崩に埋めるとか氷漬けにするとか物騒な発言をします。しかし元々はとても愛情深く、特にフヴェルを深く寵愛し子々孫々まで加護を与え続けるつもりでいました。しかし、彼女がムスペルに殺されてしまった事で自分にはフヴェルの子孫を愛する資格など無いと考え、以後は感情の動きを否定して心を閉ざしています。
 2部においてフィヨルムに力を与える代わりに命の大半を対価として支払わせており、後日談の戦禍の連戦にてとうとう残りの寿命も取りにきましたが、フィヨルムの尽力によりムスペルの討伐に成功すると残りの寿命の支払いを免除し、かつて支払わせた命もおそらく返却して姿を消しました。
 完全に私見ですが、ニフルはフヴェルに対して並々ならぬ愛情を向けており、フヴェルを指して「愛する相手」と称している事やフヴェルの子孫は存在するのに彼女の伴侶は全く話題に出ない事から、単なる親愛を超えた感情を持っていたのではないかと思われます。
 元ネタは北欧神話に登場する世界のひとつ、ニブルヘイムから。世界が出来上がる前から存在している場所の一つで、ニブルヘイムの冷気とムスペルヘイムの炎がぶつかる事で霜の巨人をはじめとした様々な神々が生まれたとされています。

⑷ムスペル

 炎の国ムスペルの神竜で、かつて人間の誰かに血と力を与えて?国を興させた?神竜です。疑問符だらけなのはムスペルの建国神話が全く分からない為です。一応スルトほかレーヴァテイン、レーギャルンが子孫にあたります。
 FEHの神竜はほとんどの場合竜の形をしていませんが、彼の化身した姿は珍しくドラゴンそのままです。
 ニフルとは正反対に人間のぎらついた欲望や極限下の鬼気迫る姿に生を見出しており好んでいます。一方で理性的に振る舞ったり協調性を尊ぶ姿を偽りとしてとても嫌っています。端的にいえば荒削りの原始的な衝動や欲求、ありのままの姿を好んでおり、具体的には鎧や武器は好まず裸に近い服装や身一つでの戦いを好んでいます。
 かつてニフル王国に攻撃を仕掛け、迎え撃った神竜ニフルとフヴェルと戦い、フヴェルを事実上殺害しました。これはフヴェルを瀕死の状態に追いやり、苦痛から解放する為にニフル自身に殺させるという残忍な手法であり、これによってニフルは再び心を閉ざす事になりました。その後怒り狂ったニフルと戦い、互いに存在が消滅寸前にまで追い込まれる形で相打ちとなりました。
 2部の後日談の戦禍の連戦において復活し、死亡していたレーギャルンを蘇生させて自分の尖兵として使役しますが、フィヨルムとレーギャルンの機転によって不意をつかれ死亡しました。
 元ネタは北欧神話の世界のひとつ、ムスペルヘイムから。

⑸ユーミル

 かつて存在した生の国の神竜です。エイルの祖先と契約したらしき神竜で、エイルが小さい頃から可愛がって世話をしていました。その時の描写から、元々人間と共に生活していた非常に珍しい神竜と思われます。
 若い女性の姿ですが化身すると植物と一体化した四つ足の竜っぽいような何かの動物になります。なんとも形容しがたい姿形をしていますがシルエットは竜っぽいです。
 陽気で優しく、母性溢れる性格ですが包み込むというより親しみを感じる性格です。ママというよりなんかオバチャンって感じのフレンドリーさがあるタイプです。エイルを喜ばせる為に後先考えず花を咲かせまくり皆に叱られたりと少しばかりドジな面もあるようです。
 生の国はヘルの侵攻により滅んでしまいますが、その際にユーミルはエイルの中に生の国の人間の魂を隠しました。ユーミルは命を与える力を持ちますが、戦う力は持っていなかったので生の国はヘルにほとんど一方的に蹂躙されたものと思われます。
 その後3部の後日談にてヘルの後継者であるガングレトの攻撃を受けたエイルを蘇生する為に自らを命を与え、さらにガングレトを破る為に自身を犠牲にして死亡しました。
 元ネタはおそらく北欧神話の最初の巨人ユミル。この巨人の亡骸から世界は創造されたそうです。

4-3.その他神に近い存在

⑴神獣

 現在、6部に登場する神竜の眷属としての神獣と8部に登場する組織、癒し手の構成員の神獣が存在しますが、包括してどういう種であるかについては特に言及されていません。

①アシュ
 神竜アスクの眷属で彼の娘にあたります。化身すると巨大な牝牛の姿を取る女性で、このようにえー、大変回りくどいといいますか、迂遠で婉曲的な表現を多用する傾向があるといえます。
 真面目で献身的な性格をしており、アスクの大地な豊穣を与える為に力を使っています。アスクと同種の力を持つ為エンブラの閉じる力にも多少は対抗出来ますが、力を使うと徐々に衰弱していってしまうようです。しかしそれを自分の存在意義であるとも考えており、自分の身を捧げる事にさして疑問を抱いていません。そんなところは父親に似なくていいと思うのですが。
 アスクに人間の絆を尊敬している事、自分とアシュはいわば親子関係である事からお父さんと呼んで欲しいと言われて以降は彼をおとうさんと呼んでいます。一瞬だけエクラとフラグが立ったような気がしますが気のせいだったかもしれません。
 元ネタは北欧神話で神々がトネリコ(アシュ)の木からアスクを作り出した事から。

②エルム
 神竜エンブラの眷属ですが、アシュとアスクとは異なり彼とエンブラがどういう関係なのかは明言されていません。
 化身すると大きな蝙蝠の姿を取る少年で単刀直入に物を言い口も少し悪いです。なお彼はアシュのことを牛女と言っています。
 皮肉屋で周囲に攻撃的ですが、主君であるエンブラには深い敬意と愛情を向けており、彼女の内心を知る事のできる唯一の存在といっても過言ではありません。一方で彼女を裏切る人間や彼女の内心を知らないアスクの一族を軽蔑しています。
 元ネタは北欧神話で神々がニレ(エルム)の木からエンブラを創造した事から。

③ラタトスク
 ユグドラシルの内部を通して世界を行き来し病人を癒す集団「癒し手」の少女。光るリスの耳と尾が生えており、化身した姿は光り輝く大きなリス。
 FEHの獣や竜は化身すると割と写実的な形態になり目つきがなかなか鋭い感じになるのですが、ラタトスクをはじめ8部の人物は化身してもコミカルな目つきをしているのが特徴です。その為獣に変じているというより不思議な力で体を覆って獣の形を取っているようにも見えます。
 大変慌てん坊な性格でほとんど常に吃りながら喋り流暢に話す事は多くないです。心配性なのか話す時は吃りながら自分の尻尾を抱えている事が多いです。
 家族思いの女の子であり、8部では特務と癒し手の三重スパイとして自身の正義感と家族との絆との間で苛まれる事になります。
 元ネタは北欧神話の世界樹ユグドラシルに住むリス、ラタトスクから。また、二人の姉の名前はそれぞれユグドラシルのてっぺんに住む巨大な大鷲フレスベルグと根っこに住む巨大な蛇ニーズヘッグから。
 なおフレスベルグとニーズヘッグもおそらく神獣に分類される存在ですがラタトスクに比べてはっきりと断定されていないので割愛します。

⑵神獣以外の存在

 天上神、ヴァナの神、神竜いずれにも属さないけれど神々に比肩しうる力を持つ存在達です。

①ヘル
 死の国ヘルの女王で、エイルの義理の母でガングレトの主君でもあります。そしてアルフォンスとシャロンの父グスタフ、さらにはグスタフの父をも殺害し、異界のアルフォンス(=リーヴ)の世界のアスクとエンブラを滅ぼし、エイルの生まれた生の国も滅ぼした張本人です。
 機械的で事務的な性格をしており、とにかく死者を増やして力を得て国を拡大する事が至上命題のようで目的の為に淡々と冷徹に事を進める人物です。エイルのことも自分の力を増すための手段として処遇し、彼女を懐柔する為に人間が我が子を可愛がる仕草を模倣していたに過ぎませんでしたが、しかしエイル自身はヘルを一貫してお母様と呼びヘル自身もエイルに対して何かしらの想いがあったようです。
 最後はエクラのブレイザブリクによって消滅させられて死亡しました。
 素性はほとんど分かりません。何の種に属しているのか、神なのかそうでないのか、親族はいるのか、全てが不明です。
 元ネタは北欧神話の死の国の王ヘル。なお北欧神話のヘルも女性で、ロキの娘です。

②ギンヌンガガプ
 虚無の王と名乗る正体不明なナニか。かつて夢の世界を破滅の危機に陥れた存在で、鋼の世界に行くことを目的にしています。
 外見はイカ的なものとコズミックな白と紫が合わさった形容しがたいものでそのままイカが立ち上がって人型になったような姿をしています。なお大変な巨体で妖精たちの二倍くらいの身長があります。怖い。
 夢を否定し、合理と利益で動く人の欲を肯定する性格をしており、エクラが元々いたとされる鋼の世界に行きたいようです。
 4部の後日談である戦禍の連戦では再び夢の世界を虚無で覆って破壊する為に暴れており、あと少しのところまで妖精たちを追い詰めますが夢の世界を支配するフレイヤに敗れて死亡?しました。
 余談ですがフロージの力を取り込んだフレイヤは文字通り夢の世界の中であれば絶対的な支配者でいかなる不可能も可能にしあらゆる事象を実現できます。だからこそギンヌンガガプはフレイヤ自身にフレイヤは死んだと思い込ませたかったのですが、夢の世界そのものをスルーして鋼の世界に行けばよかったのでは?と思わなくはない。
 元ネタは北欧神話のニブルヘイムとムスペルヘイムの境目にある渓谷ギンヌンガガプ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?