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オンライン接客を加速させるEC特化型ヘルプデスク「Gorgias」

アメリカのD2Cブランドに問い合わせた際、その対応スピードに驚いたことはないだろうか。EC上のオンラインチャットでのやりとりはもちろん、SNSにブランドをタグ付けして投稿するとすぐにDMで感謝のメッセージが送られてくる。

こうした手厚いサポートを支えているのが、CotopaxiItalicなど、アメリカのD2Cブランドの多くがが導入しているヘルプデスクサービス「Gorgias(ゴージャス)」だ。

ECに特化したGorgiasの特徴

(出典:Gorgias

Gorgiasの最大の特徴は、中小規模のEC事業者に特化していること。Shopifyをはじめ、MagentoやBig Commerceといったプラットフォームと連携しており、返品や配送先情報の変更などEC上での対応と問い合わせ対応を一元管理することができる。

Gorgiasを利用しているストア数は1万を超えており、2022年8月にはシリーズCで3000万ドルの資金を調達したと発表した

日本ではまだ馴染みのないGorgiasだが、アメリカではD2Cブランドにとって必須のサービスとなりつつある。

ヘルプデスクサービスはこれまでにもZendeskを筆頭にさまざまな企業が提供してきたが、GorgiasがD2Cブランドを中心に支持されている理由は、Gorgias4つの特徴にある。

1. 担当者の人数ベースではなくチケット数ベースの課金

まず大きな特徴として挙げられるのは、小規模なブランドでも導入しやすい料金体系だ。

Gorgiasの料金表(2022年8月時点)。チケット数ベースでプランが分けられており、チケットの追加購入も可能。(出典:Gorgias

ヘルプデスクサービスは担当者数ベースで課金することが多いが、数人で運営している小規模事業者にとっては専任のカスタマーサポートを置くことが難しい。
結果的にチーム全員分のアカウントを取得することになり、頻繁に問い合わせ対応をしないメンバーの分も毎月コストがかかってしまうことになる。

しかしGorgiasはチケット数ベースの課金となるため、チーム全員がGorgiasを通して問い合わせ対応することができる。

また問い合わせフォームだけではなく電話やチャット、SNSのコメントなどあらゆるチャネルをGorgiasで一元管理できるため、メンバーにいちいちIDとパスワードをシェアしたり都度ログインさせる必要もない。

小規模〜中規模のEC事業者にとって、こうした導入ハードルの低さがGorgiasを選ぶ大きな要因となっている。

2. SNSのコメントやDMも一元管理できる

(出典:Gorgias

ECとWebサービスのカスタマーサポートの違いのひとつが、SNS経由の問い合わせへの対応の必要性だ。

今やブランドのほとんどがSNSを通して新商品のお知らせやコーディネートの紹介をしており、顧客側もSNS上で気軽に質問を送る。しかしこれまでのヘルプデスクサービスのほとんどはSNSのコメントやDMに対応しておらず、問い合わせとまとめて一元管理ができなかった。

Gorgiasでは、各SNSのコメントとメッセージを問い合わせと並列で一元管理できるため、SNS上でのレスポンスを素早く行うことができる。

SNSも重要な接客ツールとなった今、チームメンバーがそれぞれのSNSにログインしていちいち確認・対応するのではなく、ヘルプデスクサービスのなかで一元管理できる点はGorgiasの大きな強みである。

3. Shopifyとの連携が強い

GorgiasはEC事業者に特化したサービスであるため、ShopifyをはじめとするECプラットフォームとの連携に強みを持っている。

Shopifyの情報と連携して、たとえば過去の買い物履歴や配送状況について自動で返信するといった設定が可能なのはもちろん、顧客データベースと問い合わせ履歴を連携させることでより満足度の高い対応も可能になる。

下記はGorgiasの顧客の問い合わせ履歴確認画面のイメージだ。

(出典:Gorgias

Customer Timelineで過去のやりとりがひと目で確認できるのはもちろん、右側のサイドバーにこれまでの買い物の履歴やリワードの獲得状況といった情報を表示することもできる。

こうした情報がひと目でわかれば、同じ問い合わせでも新規顧客なのか常連顧客なのかで回答の仕方を変えることもできるし、過去の買い物や問い合わせを踏まえてより的確な対応も可能だ。

満足度の高い対応のために必要となる情報にすぐアクセスできる点も、Gorgiasならではの特徴と言えるだろう。

4. 自動化ツールが充実

Gorgiasでは、EC事業者向けの自動化ツールも充実している。返品や注文の確認といったEC運営において頻繁に発生する問い合わせは定型文を作成し、自動で返信する機能も駆使することで、問い合わせ対応を効率化させることができる。

自動化機能には、大きく分けてMacro、Rules、Self-Service、の3つがある。

Macro

(出典:Gorgias

Macro」は簡単にいうと「定型文」を作成する機能だ。よく使う返信フォーマットをMacroに追加していくことで、文章を作成する時間を大幅に短縮することができる。

GorgiasのMacro機能が一般的な定型文機能と異なるのは、Shopifyとの綿密な連携だ。

たとえば、ECの問い合わせ対応でよく使用するのが「注文番号」「注文日時」といったECサイト上で管理している情報である。

一般的なヘルプデスクの場合は、返信に注文情報を入れたい場合には注文管理画面とヘルプデスクの返信画面とを行ったり来たりする必要があった。
しかしGorgiasではShopifyの情報がそのまま入れられるため、返信画面で「注文番号」「配送状況」といった項目を選べば、その顧客の情報が自動的に挿入されるうえ、入力ミスも起きづらい。

ただの定型文ではなく、顧客ごとの変数も自動的に入力される点がGorgiasの定型文機能「Macro」の強みである。

Rules

(出典:Gorgias

定型文から一歩進んで、自動返信を行いたいのであれば「Rules」機能を使って設定ができる。

Rulesは、ある条件に該当するイベントが起きた場合に自動で特定のアクションを行う自動化機能だ。Gorgias内にZapierやAlloyのような自動化ツールが埋め込まれているとイメージするとわかりやすいかもしれない。

たとえば問い合わせを受けた際に「問い合わせを受け付けました」と受付完了メールを送るのは、手動である必要がない。問い合わせを受けた時点で、それをトリガーとして自動的に指定の文面で返信するという自動化を行うのがRulesだ。
この自動化機能は、メールやフォーム経由の問い合わせだけではなくSNSのコメントやメッセージにも適用できる。

また顧客への自動返答だけでなく、チーム内の管理を効率化にもRulesが使える。問い合わせのなかに特定のワードが入っていたら自動的に特定の担当者に振り分けるといったことも、Rulesから設定が可能だ。
自動的に返信をするだけでなく、誰がどのチケットに対応するべきかを効率よく振り分けることで、お問合せへの対応スピードをあげることができる。

さらに、ここでもShopifyとの連携の強さが生かされている。
たとえば返品したいと問い合わせがきた際、「返金が完了しました」といった旨の返信をすれば、自動的にShopify側で返金処理が実行されるといった自動化も可能だ。

ブランドのECに対する問い合わせは、こうした「ECプラットフォーム(Shopify)上での処理」とセットで対応しなければならないものが多いため、Rulesを通して自動化することで効率化することができる。

Self-Service

(出典:Gorgias

オンラインショッピングの際、注文商品の配送状況や過去の注文内容など「わざわざ問い合わせるほどでもないけれど知りたい」と思ったことはないだろうか。

そうした状況に対応するのが、Gorgiasの「Self-Service」である。

Self-Serviceは、顧客が知りたい情報をクリックすると問い合わせの手間をかけることなく必要な情報が表示される機能だ。前述のような配送状況や注文内容のタブをクリックすれば、Shopifyと連携してその顧客の情報を呼び出し、自動で表示することができる。

顧客にとっては問い合わせの手間をかけることなく知りたい情報にすぐにアクセスできるし、ブランドにとっては返信の手間が省けるため双方にとってメリットのある機能である。

Alloyを介してさらに細かい自動化も

上記の通り、シンプルな自動化であればGorgias内にある機能で十分対応可能だが、さらに細かく自動化の設定をしたい場合は、自動化ツールAlloyとの連携も可能だ。

たとえばAlloyを介すことで、Gorgiasにきたお問い合わせ内容をチームのSlackにリアルタイムにシェアするといったことが可能になる。

SlackにGorgiasにきた問い合わせが自動的にシェアされた際の画面イメージ。Gorgiasのアカウントを持っていないメンバーもSlack上で内容を確認できるため、メンションなどをつけて直接担当者に確認するなどスムーズな対応が可能となる。

製品担当やマーケティング担当にとっては、Gorgiasにアカウントを持つほどではないが業務の改善のためにどんな問い合わせが来ているのかを知りたいとうニーズがある。またSlack上で内容が確認できれば、CSだけでは解決できない問い合わせについてGorgiasのアカウントを持っていないメンバーも含めて横断的に議論ができる。

他にもフォーム作成ツールTypeformで取得したアンケートをGorgias上の顧客プロフィールに自動で追加したり、StampedYotpoのようなレビューサービスで低評価がついた際に自動でGorgias上にチケットを作成し、カスタマー担当がすぐに対応できるようにするといったことも可能だ。

Gorgiasが提供している自動化ツールはGorgias内での効率化、もしくはShopifyとの連携のみなので、他のツールを連携させて自動化したい場合はAlloyやZapiarのような自動化ツールを入れることでより自分たちにあった自動化の仕組み構築が可能となる。

従来のヘルプデスクサービスと何が違うのか?

日本のブランドも、ヘルプデスクとしてすでにZendeskをはじめとする既存サービスを導入しているケースが多い。ではGorgiasはそれらの既存サービスのなかで、なぜアメリカのD2Cブランドに選ばれているのだろうか。

Gorgiasのオフィシャルページでは、ZendeskやFreshdeskといった先行サービスとの対比表にまとめ、その違いを打ち出している

GorgiasとZendeskの対比表の一部。これ以外にも対応しているChannelや自動化の点から比較がなされている(出典:Gorgias

Gorgiasと既存サービスの違いを端的にまとめるならば、「Gorgiasは中小規模のEC事業者に最適化したヘルプデスクである」ということだろう。

Zendeskなどのエンタープライズ向けサービスは、多機能でカスタマイズ性も高いために世界中で多くの企業から支持されている。その一方で、なんでもできるがゆえに設定が複雑化したり、プランに使わない機能も含まれるために割高になったりする面もある。

そこで機能を絞り、立ち上げたばかりのブランドでも導入できるようにコストを下げたことが、Gorgiasが人気を博した理由である。Zendeskほどリッチでなくてもいいけれど、問い合わせを一元管理できるヘルプデスクサービスは使いたい。D2Cブランドの増加に伴って拡大したこのニーズに、Gorgiasがぴったりとフィットしたのだ。

一方で、Gorgiasは日本語対応していないため日本企業が取り入れるには言語のハードルが高い。顧客向けに送るメッセージは日本語で送ることができるものの、管理画面はすべて英語で表示される。日本で導入するには、チームメンバーが英語に抵抗感がないことが条件となる。

しかし言語のハードルさえクリアできれば、Gorgiasは既存のサービスに比べて安価なプランがあるため、立ち上げ初期のブランドにとっては重宝するサービスであることに違いはない。

Gorgiasがユーザーを対象としたヒアリングをまとめ、CXを向上させるための18のTipsをまとめた「The CX-Driven Growth Playbook」によれば、この内容に忠実に取り組んだ企業は売上が44%アップしたという

ECのみならずSNSまで「接客」のフィールドが広がった今、D2Cブランドにとってオンライン接客が今後ますます売上に直結する重要なポイントとなることは間違いない。

それに伴って、Gorgiasをはじめとするヘルプデスクサービスの重要性もさらに高まっていくだろう。


▼米国の次世代ブランドやリテールテックの情報はCEREAL TALKのニュースレターでも配信中。

(Cover Photo:Gorgias official blog

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