趣味で4K60pを使えるかという話
結論
環境は整いつつあるが、未だにハードルは低くない。
課題
4K60pの素材を扱える環境があるか
4K60pをどう使うのか
解説
4K60pの素材を扱える環境があるか
一口に4K60pと言っても、フォーマットは色々ある。色深度やビットレート、コーデックを加味して考える必要があるが、例えばSonyのFX30を使って最高画質の60pで撮ろうと考えたとする。この時使う設定は、XAVC S-I 4K 4:2:2 10bit 60p(59.94p)となり、ターゲット容量は600Mb/sとなる。
600Mb/s=75MB/s、これで1時間撮影すると270GB/hの容量となるので、75MB/sだとV90以上のSDカードか、CFexpressカードが必要だ。カードの容量は256GBで1時間撮れるかどうか、2時間近く撮るなら480GBが必要になる。
それらの容量のカードを常用するとなると、PCに転送するにもそれなりの転送速度を持ったリーダーが必要となるし、書き込まれる側(PCに接続されたストレージ)の速度もそれなりに早くないとデータを移動するだけでも相当な時間を要する。
1カメで1時間撮った映像をカット編集して色補正するだけならば、PCのストレージ容量は500GBで足りるかもしれない。ただし、それには編集ソフト上でXAVC S-I 4K 4:2:2 10bit 60p(59.94p)をネイティブ編集できることが前提となる。一時的なレンダリングファイルやProxyを作って置くスペースが別途必要になるなら、PCのストレージ容量はもっと大きくなければならない。
では、更に撮影するカメラの台数が増え、1プロジェクトで扱う画面の数が増えたらどうなるだろうか?カメラに使用する記録メディアは、カメラの台数分必要になり、PC側のストレージ容量もそれに応じて増やす必要がある。そしてそのストレージのアクセス速度はかなり早いものでないと快適な環境での編集はできない。
上記を踏まえた上で、必要となる機材を書き出してみる
4K60pを熱停止なしで長時間撮影できるカメラ
例:Sony FX30
十分な書き込み速度を持ったカメラ用記録メディア
例:Nextorage CFexpress Type A 480GB
:ProGrade Digital SDXC UHS-II V90 COBALT 512GB
十分な転送速度を持ったカードリーダー
例:ProGrade Digital PG09
高負荷編集に耐えうるPC
例:Apple Mac Studio
十分な読み込み/書き込み速度を持ったPC用の大容量ストレージ
例:Macの内臓SSD 2TB〜
例:Nextorage NX-PS1PRO4TB
撮り溜めた動画データを保管する大容量ストレージ
例:BUFFALO HD-CD-A 8TB
4K60pであれば、画質にはそこまで拘らないし、色編集もそこまでは必要ないという要件であれば、FX30には XAVC S 4:2:0 8bit 150M、XAVC HS 4:2:0 10bit 75M、XAVC HS 4:2:0 10bit 50Mという選択肢もある。これらの設定でしか使わないということにであれば、必要な要件は緩和される。
また、撮影時間がより短いのであれば、熱停止の心配も少なくなり、更に記録メディアの容量もより少なくても問題なくなる。
4K60pをどう使うのか
フリッカーが心配ない環境であれば、1/60のシャッタースピードで撮ることができ、24pの動画に仕上げる場合に40%スローモーションが使える。
通常、動画で使用するシャッタースピードは撮影時のフレームレートの2倍が基本値とされているが、最終的に使用するフレームレート(ベースフレームレート)に対してシャッタースピードが早すぎる場合、滑らかさが失われてしまうので、どのフレームレートで仕上げるかを意識して設定を決める必要がある。
背景が煩いなどの理由で、絞りを開けて撮りたい場合、光量が多すぎてシャッタースピードを上げざるを得ない場合、60pを使用して滑らかさを維持しつつ適正露出に近づけることができる場合もある(下の拡張感度、NDフィルターの仕様も考慮する必要あり)。
一般的にスポーツのような動きのあるものの撮影に、高いフレームレートが適していると言われているが、遅いシャッタースピードで撮ってもブラーが掛からないようなゆっくりとした動きにも、フレームレートが高い方が適している。
感想
最近民生用カメラの性能が大幅に上がってきて、4K60pでの長時間撮影が可能になってきています。現状まだ機種は限られているものの、ほぼ熱停止の心配なしに使えるものもあります。編集に関しても、Appleシリコン搭載Macなど、動画編集においても実用的な高性能PCが手の届く価格になってきています。それでも付随して必要になる周辺機器を含めた投資額や、扱わなければならないデータの容量を考えた場合、4K60p常用のハードルは未だに低くないと感じています。