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坂本龍一×ダウンタウン ユニット結成前夜
全米デビュー
『ガキの使い』(1994.1.2)
松本:さっき楽屋でチラッと話しててんけど、こないだほら、坂本龍一さん来てたやろ?
浜田:はいはいはい。ここへね。
松本:好きなんですって、この番組。
浜田:うん。
1993年12月12日 坂本龍一がトークの観覧に来ていた。
松本:いっちょうやな、”世界のサカモト”ですから。”世界のサカモト”にですよ、曲を書かすんですわ。
浜田:ほお。「書かす」んかい。
松本:書かして、日本相手しない。全米でヒットチャートを狙うんですよ。
浜田:勝手にせーや!
坂本龍一に曲を書かせて、全米デビューを目論む。
松本:アメリカで売れたらスゴいやろ、お前。
浜田:いや、まあまあね。
松本:”ダウンタウン”はダメですから、アメリカのときに名前を変えて。
浜田:ああ、なるほど。歌のときだけね。
松本:それでお前なんや、カウントダウンとか出たらカッコええで!日本では一切言えへんけど。
浜田:歌のときにね。
松本:おう。
「ダウンタウン」ではなく、別名義で音楽活動。
松本:やれへんか?坂本龍一プロデュース・”ゲイシャガール”。
浜田:お前、その歌のときだけ新しい相方探せ。
松本:はははは(笑)。”ゲイシャガール”やで?お前。どうする?
浜田:なんや、”ゲイシャガール”って。俺らの名前が?
松本:そうやで。
浜田:なんで”ガール”やねん。オッサンやん!
松本:それが逆にええんやて。絶対イケるよ!
浜田:どうもなあ…
松本・浜田は30歳の”オッサン”。
デビュー曲(仮)
松本:”ゲイシャガール”の歌う『NU・TA・A・E(ヌタ和え)』。
浜田:お前、なんでそんなババアが好きな食べ物がポンポン出てくるわけ?
松本:はははは(笑)
浜田:”フキ”とか”ヌタ”とか。
松本:だから日本相手にせんと、向こうやったら俺もちょっとやってみてもええかなって。ちょっとホンマに考えへん?マジで。
日本では活動せず、アメリカがターゲット。
浜田:坂本龍一次第っていうとこもあるやん。
松本:あ、そやなあ。あの人がやってくれるんやったらやろか?
浜田:とりあえず聞くことは出来るやん。「ちょっと書いてもらえません?」って。
松本:お前そらなあ、今までなあ、いろんなヤツなあ、日本のアーティストが向こう行ったけどな、所詮アカンやろ?たかだか。
浜田:うん。
松本:それをお前、我ら”ゲイシャガール”がやで。
浜田:いやいやいや!まだ決まってない!俺はまだ”ダウンタウン”や。
松本:まあ、聞きーな”ゲイシャ”くん。
浜田:いやいやいや!お前、”ガール”かい。
”ゲイシャガール”がアメリカで旋風を起こす?
松本:それでお前、一発当ててみーや。向こうはマーケットが違うもの。
浜田:「マーケット」って(笑)。まあまあ、そやけど。それはなに、英語で歌わなアカンの?
松本:うん。うんうんうんうん。
浜田:英語で歌うの!?
松本:そうそうそう。「♪ ナントカナントカ NUTAAE~」。
浜田:ふふっ(笑)。いやその、「ヌタ和え」は、ちょっとこっち置いとかれへんのか。
松本:タイトル『NU・TA・A・E』やないか!!
浜田:わからんな~。
デビュー曲は『NU・TA・A・E』(仮)
松本:な。ラップでいこか、ほんならもうな。「♪ HE~Y!細川内閣ナイスでナンセンス」。
社会問題に対してモノを言うラップパターンも提案。
客席に外国人
『ガキの使い』(1994.1.16)
松本:おっ!(客席に)外人がいますねえ。
松本:まあまあまあね、みなさんは僕ら”ダウンタウン”やと思ってるでしょうけど、あの外人は僕らのこと、”ゲイシャガール”思ってる。まあまあまあ。
浜田:お前、しつこいな。
松本:ええ、そうですか?
浜田:なあ。知らん!そんなん”ゲイシャガール”なんか。
まだ、浜田は乗り気ではない。
坂本龍一快諾
『ガキの使い』(1994.1.16)
松本:あれなんですよ、そうそう。海外レコードデビュー、”世界のサカモト”プロデュース。
浜田:チッ、まだ言うてんのか。
松本:坂本龍一、オッケー出てるんですよ。
浜田:そうみたいやねえ。
松本:オッケー出てるんですよ。あとはもう吹き込むだけ。
なんと、話は進み出していた!
坂本龍一から届いたFAX
番組スタッフからの交渉にFAXで返答。
浜田様. 松本様.
こんにちは.
ご依頼の件ですが、制作にあたり以下の事をお願いします.
1. 楽曲については、僕に任せてください.
2. スタッフィングについても、完全に僕に任せてください.
3. 現在、僕自身のアルバム制作中でNewYorkを離れる事ができません.つきましてはお二人のレコーディングもNewYorkにて行いますので、こちらに来ていただくことをお願いします.
長いフライトですので、機内で充分に睡眠を取ってください.
では、楽しみに待っています.
坂本龍一
P.S. 真剣に取り組む事を約束してください、ね.
NewYorkでレコーディングする事を条件にOKが出た。
飛行機嫌いの松本人志
浜田:でも坂本龍一、今ニューヨーク行ってんですよ。
松本:そうよ。
浜田:どうすんの?そんなんニューヨークも行ってんのに。
松本:だから、俺はもう飛行機キライやから、「”世界のサカモト”(日本に)来い!」。
浜田:なんでやねん!そんなもんあくか!お前が言い出したことやないか、向こうでデビューする言うて。どっちにしたって、一回は行かなアカンやないかい!
松本:……
浜田:おんどれが言い出したんやど!
松本:なんでやねん。デビューする言うたって、別に行かんでもええやんけ。
浜田:どないすんねん!お前、日本で「(全米)デビューです!」って日本で歌うたうの?バーカ!
松本:日本で歌ってCD作って、海外に流したらええやん。
浜田:アカンアカン、そんなもん。デビューはやっぱりその地に行って、とりあえずデビューコンサートやらな。
松本:まあ、仮に売れたら、まあ行くとしてもやな。
浜田:いやいや、売れんでも行くがな!とりあえずは。
松本:レコーディングだけは「ちょっと坂本龍一、お前…なんかちょっと来いよ」と。日本で、とりあえずレコーディング。
浜田:アカンアカン、それはアカン。
全米デビューはしたいけど、海外には行きたくない松本。
松本:日本の方がええねんて。
浜田:それはアカン。それは失礼や。
松本:なんでやねんな。
浜田:とりあえず、お前が言い出したんやんけ。向こうでデビューするって。
松本:お前な、ニューヨークまで12時間かかんねんで。12時間やで!?
浜田:そうや。
ここにきて松本がゴネ出す。
浜田:行ったらええがな。
松本:え、なんで?お前行きたいの?
浜田:いや、行きたいとかじゃなしに、向こうが結構「ああ、いいじゃないですか」って言ってくれて、ニューヨーク行ってるわけや。
松本:そうや、言うてくれてんのよ。
浜田:出向いて行かなどうすんの、そんなん。
ここでの結論は出ず。
松本:ニューヨーク行くかどうかわからないですけども、全米デビューも、もう決まったも同然ですから。
浜田:ああ。全米デビューねえ。
松本:スゴいですよ。
はたして、坂本龍一が日本に来るのか、ダウンタウンがNewYorkに行くのか。
レコーディングに渡米決定!
『ガキの使い』(1994.3.20)
松本:(ハガキ)「ひとつお聞きしたいことがあります。ゲイシャガールズのデビューシングルはアメリカでしか手に入らないのですが、日本では販売しないのですか?どうしても欲しいので、一度考えてみてください」。
浜田:欲しいかあ?(笑)
今のところ、日本での活動はしない方針。
松本:もう私たちニューヨークに発ちますので。もうキミたちとは…
浜田:レコーディングしにね。
松本:龍一くんが、もう…
浜田:あ、龍一くんが。
松本:龍一くんが、もう2曲ほど作れてるらしいんで。
浜田:ああ、そうそうそうそう。龍一くんが、なんか「2曲にしたい」って言うてるらしいですね。
まさかの一番乗り気な坂本龍一。
松本:龍一くん、スゴいらしいよ。龍一くんね、まず向こうで「最低一週間は欲しい」って言うたんですって。
浜田:それは…
松本:それはちょっとスケジュール的に無理やということで。
浜田:そうね。
松本:なんとか1日で済まして。
浜田:はははは(笑)
レコーディングに弾丸スケジュール。
松本:これ、日本で手に入らないのか?と言われますと、入らないです。
浜田:日本では売らない?
松本:日本では売らないです。
浜田:おお、強気やなあ。
客席はノーリアクション
松本:しかし、客がウンともスンとも言わへん。アタシもどうしたもんかなと思うとるようなことなんですけどもですね。
浜田:ごっつ調子乗って言うてんのになあ。
松本:ははは(笑)
浜田:ちょっとリアクション起こしてくれたら。
松本:そこで「ええ~!」って言うてほしかったですね。
浜田:言うてくれな、なんかごっつ(松本が)悪者なってるやん、今。
松本:そうそうそう(笑)
高飛車な言い方をするというボケなのに、客がノーリアクションのため、ただただ松本が嫌な奴になってしまっている。
なので、仕切り直し。
松本:これは日本では売らないですね。
客席「ええ~!」
松本:うっさい!
2回目はない。
パスポート取得
『ガキの使い』(1994.3.27)
松本:今日、私、昼ちょっと早起きしまして、パスポートを取ってきました。
浜田:ああ。しゃあないねえ。
松本:しゃあないですわ。もう、えー、今月の終わりにニューヨークにね、レコーディングしに行ってきますわ。
客から拍手
松本:ありがとうございます。
浜田:そんなん拍手せんでええ!
松本:もう衣装も決まりましたし。
浜田:ふふっ(笑)。キツいよなあ。
『夢で逢えたら』のスペシャルで、ひとりだけニューヨークに行かなかった松本が、ついに渡米!