24/03/06 そういう私にウインクして
2024年3月6日の日記の再掲です。
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松任谷由実マイナー曲カードバトルがあったら、1回戦くらいは突破できる気がする。ないけど。
そんなわけで(どんなわけで?)、夕食にスープをつくります。冷凍庫のひき肉を使わなきゃいけないので。そして松任谷由実を聴いていたので。
1975年リリースに『チャイニーズ・スープ』という曲がある。
「椅子に座って爪を立て さやえんどうの筋をむく」
さやえんどうはなかったから、スナップエンドウにした。春らしくていいじゃないですか。食感も食べごたえもあるし。
歌詞にあるような、椅子に座って作業をするような悠長なことはやっていられないけれど。一人暮らしというのは、大抵の動作を立ったまますることなんだよ。
「さやが私の心なら 豆は別れた男たち」
男たち。男たちか。まな板の上に転がる豆らを見る。元気〜?と手を振ってみる。もちろん反応はない。別れた男だからな。筋をとって、男たちを鍋に放り込む。
過去の別れた人たちが一瞬ポポポと浮かんで消える。今でも普通に飲みに行く人もいれば、生きてるか死んでるかすら知らん人もいる。
「みんなこぼれて 鍋の底 煮込んでしまえば形もなくなる もうすぐ出来上がり」
いや待った。松任谷由実、クタクタになった豆の方が好き派? 私はスナップエンドウがクタクタなの、ちょっと嫌派。だってあのサクサクの食感がいいんじゃないのか。鍋から男たちを救済する。戻っておいで。
鍋から豆を回収しつつ、よく見たら腐ったヤツがいることに気づく。そういうヤツは容赦なく捨てる。
松任谷由実の歌詞というのは、非常に明るく退廃で救いがない。
自立した自由に恋愛を楽しむ女だが、絶対助手席にしか座らない女みたいなのばっかり出てくる。『チャイニーズ・スープ』を見てくれ。別れた男全員まとめて、形なくなるまで鍋で煮込むんだぞ。
「恋人がサンタクロース」と歌ったのは松任谷由実だが、「恋人はサンタクロース 意外と背は低い」と歌ったのはキリンジだ。
具沢山のスープのほうが好きなので、ひき肉とにんにくと新玉ねぎと春キャベツと玉子を入れる。スナップエンドウは最後に少しあたためる。キリンジは、同じ曲の中で「冷たい枕の裏に愛がある」と言う。
「あなたのために チャイニーズ・スープ 今夜のスープはチャイニーズ・スープ」
はい、出来上がり。ここです、ここ。
昔の男まとめて煮込んで、今の恋人に平気で差し出す。そして「あなたのために」と言う。やりますなぁ。
スナップエンドウに春を感じて美味かった。箸でつまんで、サクサク食べる。食べてしまえば形もなくなり、それで本当に終わりである。
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