24/11/28 井戸端ル・レクチェ

青果店で買い物をしサッカー台で荷物を整理していたら、横で支払いを終えた女性が突然こちらを指さしてきた。

突然のことに身構える。

使用感の少ない清潔なエプロン姿。近くでお飲食店でもやられているのだろうか。表情はにこやか。敵意はなさそう。

よく見れば私を指さしているのではなく、私が先刻買ったばかりでまさにカバンへ入れようとしてたル・レクチェに指が向いていた。

「おいしいですよね」

えっおっおおん、はい。思いがけぬご近所交流に変な声が出た。私は昨日風呂に入っていない。酔っ払っていたのでメイクだけ落としてそのまま寝た。家で仕事だしいいかと、そのまま過ごして、マスクで顔を隠して買い物に来ていた。風呂キャンセル＆ル・レクチェログイン女である。

風呂に入っていない人間が、ちょっといい果物、お洒落なお店で働いていそうな女性が好むような果物を買っていていいはずがない。なんかすいませんと思う。あと私、くさかったらどうしようとも思う。ちょっとだけ頭を後ろにひく。

「私もよく買うんです」

世間話続くのかよ。えあ〜とかうんぬとか変な相槌をうちつつ、週末の楽しみに買ったんです〜と答えた。なぜかわからないけどとっさに額を隠した。マスクもしているので目しか見えていない人になっていたと思う。私はセルフ目出し帽スタイルでル・レクチェを買う女。

ル・レクチェの上に小松菜とえのきを投げ積んで、イヤホンのノイキャンを入れ、では！！！と元気よく告げて店を出た。

ル・レクチェ。ちょっと高くて美味しい果物。ル・レクチェを買って恥ずかしくない女になりたい。