24/11/16 心の窓を割りましょう
お風呂に入っていたら幼馴染から電話がかかってきた。小学校5年生で同じクラスになって以降、小・中・高・予備校とずっと一緒だったこの人は、いつも突然である。
いや。いきなり着信でなく、「電話できる?」と先にメッセージ1本くれるようになっただけ大人になったのかもしれん。
「なんか後ろゴーーーってうるさくない?」
「そっちはやたら声響いてない?」
車を運転しながら話すヤツと、浴槽につかったまま話すヤツの会話になった。このタイミングで電話をかけてきたのはそっちですよ、という気持ちだったので、後に頭を洗うときもドライヤーをするときもそのままの生活音をお届けした。
聞けば、このあと10年の目標がほしいので考えてくれと言う。
長期の目標って他人に外注していいのか。人生変わるど。
10年かけて目指してきた目標を最近達成してしまったので目指すことがないのだと言う。目標がなければ低きに流れてしまうと言う。10年後は家業を継ぐのが決まっているからそこに向けて10年頑張ることがほしいと言う。
彼はこの春、東京から地元へ引っ越した。
「というわけでストイックな人に聞いてみようと思って電話をしました」
そもそも電話でのたった1,2時間でこれからの10年決まっちゃうことに抵抗ないんかキミは、と言いながら顔を洗った。「ちゃんと流した?」と聞かれたので、お母さんみたいだなと思った。
何の流れか、お風呂はとっくに出た後で、私が最近自分のマイペースさに気がついた話をした。私は地元にいる頃は周りの目を気にする子だった。全部嫌になって東京に逃げて、地元に友達はひとりもいない。反動で、大人になってからはとてもマイペースな人間になってしまったのであると。
「いや、あなたは小学校の頃からびっくりするレベルのマイペースでしたよ」
知らなかった真実を突きつけられる。
「マイペースだけど頑張って周りに合わせてますよ感出てたし」
「だから友達いないんじゃない?」
「自分の思う自分と他人から見た自分って違うもんね」
ひどい言われようである。無神経ジョハリの窓かよ。もはや窓割りに来てるじゃん。これ割れっぱなしにしてたらもっと割られるやつだろ。割れ窓理論か?違います。違うってよ!
ヨガマットの上で脚のストレッチをしながら反論にならない反論をした。
なんとなく私が今後やりたいことの話をしたら、それについて調べてくれたらしく、夜中にLINEで参考URLが届いていた。行動が早い。
一方幼馴染は目標達成へ向け、毎日英語で日記を書いて送ると宣言したが、今のところ1日も私のところへは届いていない。
そうだね、キミは小学校の頃から興味の対象がすぐ変わってしまう人間だったね。そのうちまた突然の電話がかかってくるだろうと思って、私もしばらく放置する。