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BanG Dream! It's MyGO!!!!!を元バンドマン視点で語る

ビールは苦ければ苦いほど良い。IPA大好きケルティック☆タイチです。
わんばんこ。

↓の以前書いた記事でガルクラについて書きましたが、今回は何かと比較される事の多いバンドリ!のIt's MyGO!!!!!について元バンドマン視点で書いて行きたいと思います。
また長文になると思いますが、ゆるゆるとお付き合いくださいませ。
では、れっつらごー。


MyGO!!!!!との出会い

以前の記事で書きました通り、私はバンド系のアニメを敬遠していた割に、ゲーム「BanG Dream!ガールズバンドパーティ」はプレイしておりました。
但し、ストーリーは一切読んでおらず、単純に音ゲーとしてプレイしただけなんですが、ポピパ、ロゼリア、パスパレを始め、曲自体はすごく好きなのでスマホに入れて通勤中や運転中に純粋に音楽として聴いておりました。

ですのでMyGO!!!!!に関しても、そのバンドの存在は知っていましたが、ストーリー未履修の上、ゲームでも曲は未プレイ、バンドメンバーも知らない、でもスマホにはバンドリ!繋がりでとりあえず曲だけ入れてある、というファンの方にゴルフクラブでぶっ飛ばされそうな状況でした(笑)

それでも純粋たる音楽ファンとして、曲を聴いてみたりしました。
ファーストインプレッションははっきり言って、あんまりピンと来ていませんでした。
とにかくヴォーカルの癖が強い、という印象。
歌はすごく上手いと思いましたが、声が特徴的で、なんとなく声優さんっぽくない歌い方。
今でこそ誰が歌っていて、その方がどんな方なのか知っていますが、そういう先入観が一切無い状態で聞いた時は、まずそんな印象を受けました。

曲調は結構ハード目なロックで音の厚みも音色も好みではありましたが、何せその歌声が独特なのと、MyGO!!!!の特徴でもあるポエミーな部分
歌詞とも詩ともつかない長セリフのようなものを読み上げるスタイルが、初めて聴いた私には「なんかすでにプロの歌手として活動している方をボーカルに据えた、そういう意識高い系のバンドね」という誤解を与えました(笑)
なので、バンドメンバーに関してもビジュアルすらほとんど知らなかったので、「(ゲームにおける)ロゼリアに次ぐ演奏力高いバンドで、社会風刺的なものを叫ぶ系の音楽だろう」というイメージで見ていました。
自分の見る目の無さに草も生えませんwww

スルメ系の音楽

そんなわけで、特段MyGO!!!!!にハマるでもなく、私の「バンドリ!」というプレイリストの中に入っているバンドとして、しばらくは聞き流すだけの音楽となっていたのですが……
だんだんその音が、歌声が、癖になっていきます。

まずバンドとして全体の音がいい。
BPM(テンポ)が速い曲が多いのですが、ちょっとパンクっぽい要素を持ちつつも、根っこはロック
ギターの音もいいのですが、一番はベースがいい
腐っても私もベーシスト、ゴリゴリ刻みながらも歪んでいて気持ちのいい音は単純にカッコいいと感じましたし、バンド全体の雰囲気にもマッチしていると思いました。

そして私がMyGO!!!!!にハマるきっかけとなったのは「影色舞(シルエットダンス)」という曲でした。
この曲はMyGO!!!!!の中ではどちらかというと異端の曲ではあるのですが、実際のライブでは定番曲。
ギターリフから始まり、ハンドクラップの入る小気味いいイントロ。
そこから始まるAメロは全体的にちょっと音を減らして導入としてはいい雰囲気。
ちょっとリズムと雰囲気を変えてのBメロで落として、ギターリフからのノリの良いサビ。
ここで早口になる歌詞の音符への乗せ方も気持ちがいい。

この曲が癖になり、何度もリピートして聞く程でした。

すると、なんという事でしょう!
他の曲たちも輝いて聞こえてくるようになったではありませんか。

不思議なもので、ボーカルの癖強めな歌声も、ポエミーな部分も、どんどん好きになっていき、違和感がなくなってくる。
なんならもっと欲しくなる。
もうこの当たりからVo.高松燈(CV:羊宮妃那)の虜になっているのです。

MyGO!!!!!の曲たちは、何度もリピートして聞いていくほどに味わいの出てくるスルメ曲ばかりなのです!!

アニメとの邂逅

さて、そんなこんなでMyGO!!!!!のバンドとしての音にハマっていく私ですが、この時点ではまだアニメ未履修でした。
と言うのも、冒頭でも書いた通り、バンド系のアニメを忌避していました。
そんな私の固定観念を覆してくれたのはガールズバンドクライだったのは過去記事に書いた通りです。

ガルクラで楽しめた勢いそのままに、It's MyGO!!!!!も視聴してみました。
やっぱりBanG Dream!っぽいのかもな~という印象から始まりましたが、
冒頭のCRYCHICの解散と千早愛音の登場から始まった物語は、一話見終わったあたりでその印象はだいぶ変わりました。

なんか、ギスギスしてる(笑)

ポピパの話にあったようなキラキラキャッキャッな要素が少なく、一触即発のような雰囲気。
愛音も打算的で、音楽が好きな様子はない。
とてもハッピーな雰囲気ではない始まりに、はっきり言って興味を引かれました(笑)

そんなわけで引き込まれるように続きを見始めて、気がついたら一気に最終話まで見てしまいました。

ガルクラを見てそのライブ描写やバンドというものの解像度の高さに感銘を受けましたが、It's MyGO!!!!!はそういったものとは違ったものに心を揺さぶられました。

それは間違いなく「ロックな精神」だったのです。

MyGO!!!!!のメンバーは、根明だが実は真面目な愛音以外、全員確実に陰キャです。
いや、愛音も陰キャな要素を持っていますが、属性は陽ですよね。
普通の人間に憧れても、そうはなれない燈。
不器用を極めたコンプレックスの固まり、立希。
他人を利用してでも大切なものを守りたい、自己表現下手なそよ。
興味のないものには指一本動かさない、究極のエゴイスト楽奈。

決して仲が良いわけではないし、様々な偶然や打算と、最終的にはそれぞれの出す音が必要となって出来上がったバンドがMyGO!!!!!であり、その過程を映像にしたのがこのアニメ作品だったわけです。

基本的に私は感動が薄いので、映画やドラマ、漫画などをみても泣くような事はほぼ無いのですが、このIt's MyGO!!!!!には泣かされました。
具体的には第7話での伝説の「なんで春日影やったの!?」からの第10話でのあのライブシーンでの展開でやられました。

ガルクラが「バンドのリアリティ」で私に刺さったのに対して、It's MyGO!!!!!は「バンドの理想」で私にグサグサと刺さったのです。

詩超絆

この見出しですが、「うたことば」と読みます。
私が涙するほど心を揺さぶられた第10話で、主人公たち5人が演奏する曲の名前です。
物語の展開と盛り上げ方も上手かったのですが、涙ながらに演奏する5人の姿に確実に心を撃ち抜かれました。
この曲をバンドマン目線で解説、分析していきたい思います。

そもそもこの曲はメンバーが練習した事が一度もない、即興曲という設定です。
ギターの楽奈がコード進行だけガイドラインとして出して、メロディは勢いだけでボーカルの燈が作りました。

まずイントロは詩の朗読から始まります。
一度は離散してしまったバンドのメンバーに対して、ボーカルである燈の想いを込めた詩です。
羊宮さんの演技が本当に上手くて、気持ちが入っています。
そしてその詩を邪魔せずサイドで静かにギターのアルペジオとドラムのロールが鳴ります。

最近の音楽の流行りは、イントロ無しでいきなりサビから始まるというパターンが多い中、しっとりとした詩から始まるのはセオリーを無視しており、逆に興味を引きます。

詩の朗読のようなパートが終わると、一気に図太いギターリフが始まり、続いて野太い音のゴリゴリのベースと華やかなドラムが始まります。
映像ではもうこの時点で心にグッとくるものがあるのですが、この朗読パートから一転して激しいバンドサウンドでのイントロの転換は素直にカッコいいです。

そしてその勢いのままAメロに入るのですが、なんとここも詩。
歌わないのです。

歌わずに心の中の想いを紡いでいき、詩として強く訴えていくのですが、バックの演奏の盛り上がりと上手くマッチしており、否が応でも感情が高ぶります。
疾走感のあるリズム隊と、自由に音を重ねるリードギター、堅実だけれどしっかりとサウンドを支えるサイドギター。
全体の一体感が最高に気持ちいいです。

他方、いつになったら歌が始まるんだ!?という焦りすら感じるなか、満を持してサビが始まります。
このずっと期待していた中でようやく飛び出す歌に、完全に心奪われます。

ですが、この曲の最大の魅力はこの後にあります。
サビを終えた後、曲調が変わり、一気にスローテンポになります。
曲の途中でテンポが倍になる(8ビートが16ビートに、4分打ちが8分に)なる事を倍テンと呼びますが、その逆、半テンになって三拍子になるところがこの曲の最大の魅せ場です。

ミュージシャンとしてスタジオなどに入ると、練習などは結構即興曲でやったりします。
ルート音とコード進行だけ決めたら、あとはメンバーそれぞれが即興でフレーズを作りながら、アホみたいに音を出していくわけです。
本当に不思議なのですが、やっていると自分以外のメンバーのやりたい事が「わかる」瞬間が出てきます。
メンバー全員の「呼吸」が合い、音が一体となるような「グルーヴ」が生まれ、次の小節で、次の瞬間にメンバーが「求める音」が「わかる」瞬間があるんです。
これは言葉では説明しづらいのですが、例えばずっと8ビートのロック調の展開を演奏していたにも関わらず、バンドメンバーの間で目があった瞬間、次の小節からボサ・ノヴァになんの口裏合わせもなく切り替わるような、そんな瞬間が確かにあるんです。

詩超絆は、この半テンになるところでメンバー全員の心が間違いなく繋がったのだと思います。

自分の所為でメンバーがバラバラになってしまったと思っていた燈が、初めて自分の素直な気持ちを「歌」として伝えられたように。

燈の歌(歌詞)だけに固執して他のメンバーの事を見ておらず、自分だけがバンドを引っ張っていたと勘違いしていた立希が、実は自分が支えられていたと気付けたように。

見栄や虚勢だけで自分を偽って、承認欲求を満たすためにギターを弾いていた愛音が、本当の意味で仲間と音を奏でる楽しさに気付けたように。

過去のバンドに固執してあの頃の栄光を取り戻す為だけに自分も仲間も欺いてきたそよが、本当の自分をさらけだす事を許されたように。

そして、理解してくれる仲間もいないまま孤独にギターを弾いていただけの居場所のない楽奈が、心の底から楽しく音を出せる仲間と出会えたように。

それぞれの気持ちはバラバラでも、同じ音を出しているという一体感が、あの半テンになった瞬間に集約されているように私には思えました。
バンドというものの本当にエモい部分を切り抜かれたような、なんとも言えない瞬間でした。
演奏しながら号泣するメンバー達(楽奈だけはめちゃ楽しそうでしたが(笑))と一緒に、私も涙が出てきてしまったのです。

MyGO!!!!!という独自性

BanG Dream!に登場するバンドの曲のレコーディングはスタジオミュージシャンが行っているのだから、演奏は上手くて当たり前。。。
なのですが、バンドリ!コンテンツのすごいところは、曲のバックボーンをしっかりと作りこんでおり、なぜこの曲の歌詞がこうなったのか、なぜこういうアレンジになるのか、なんならなぜこの音作りをしたのか、という部分までちゃんと理由があるところです。

そして、その理由を演者である声優さん達が理解して、ステージでオーディエンスに返してくれるところが本当によくできているし、すごいと思います。

リアルバンドにも物語は沢山あるはずですが、それをファンが理解する事は難しいです。
なぜなら、そういったバックボーンは往々にして表に出るものではないからです。

それを理解する為にファンはライブに通い、ファンクラブに入り、雑誌のインタビュー記事を読み漁る事で共感を得ていくわけですが、バンドリ!というコンテンツは、それをゲームやアニメで万人に与えてしまうのですから、恐ろしいコンテンツです。

その中でもMyGO!!!!!はとても実験的で独特のバンドになっていると思います。
それはゲームの中でも表現されており、ポピパを初めとしたバンドリ!の主要バンドはメンバー全員が同じ高校だったり、幼馴染だったり、アイドル事務所だったりするわけですが、MyGO!!!!!のメンバーは高校も違うし、なんなら高校生と中学生混在だし、共通項がほとんどありません。
仲が良いわけでもないですし、それぞれがそれぞれの目的のために組んだバンドだったのです。
ですが、燈の「一生……バンド、してくれる?」という言葉に、それぞれが応えようとするくらいに繋がったバンドになりました。

それはその音楽性にも反映しており、詩を交えた訴えかけような独特の曲構成にとにかく図太い骨太ロックの音で創られる音楽は、他に替えのきかない独自の音楽であると言えます。
もはやバンドリ!だから、とか、声優バンドだから、とかを通り越して、MyGO!!!!!という大きな音楽集合体を全員で支えているような気さえするのです。
羊宮妃那さんを筆頭に、リアルバンドとしてのMyGO!!!!!のメンバーも、必死にその大きな何かを支えているのがよくわかります。
だからこそ、応援したくなる、その音に溺れていたくなるような、そんなバンドになっていると思うのです。

最後に

It's MyGO!!!!!のストーリーやアニメとしての出来の良さは、私以外の方が沢山記事を書いておりますので、どうぞそちらをご参照いただきたいと思います(笑)

私は元バンドマンとして、バンドメンバーと音を出して、言葉にならない一体感をもう一度体験させてくれたMyGO!!!!!というバンドが大好きになりましたし、今一番応援したいバンドと言えます。

これを書いている今、上海公演を大成功の内に終わらせたMyGO!!!!!はAve Mujicaとの対バンや、トゲトゲとの対バンも控えております。

これからも進化を止めないであろうMyGO!!!!!の活躍を願いつつ、本記事を締めさせていただきます。

ちなみにもちろん箱推しではありますが、推しメンは愛音、推し曲は「焚音打」です(笑)


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