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ガールズバンドクライを元バンドマン視点で語る

正直に言ってトゲトゲよりもダイダスの方が好みなケルティック☆タイチです。
わんばんこ。

今回は元バンドマンである私の視点で大人気のアニメ「ガールズバンドクライ」について語っていきます。
完全にネタバレです。そして、私の個人的意見をがっつり書いていますので、読んでいて不快に思われる方もいると思います。
そんな場合は迷わず閉じてください。それがお互いの為です。

では、のんびりと行ってみよー!

ガルクラとの出会い

さて、巷で大人気のアニメ「ガールズバンドクライ」ですが、リアルタイムでの放送は2024年4月から始まり、全13話となっております。

私はアニメを見るのは好きですが、そんなに情熱を持っているわけではないので、今期の新作チェック!などは全くしておらず、アマプラで気になった作品を見るくらいのにわかアニメファンです。
最近リアタイしていたのは「水星の魔女」くらいですかね。
ガンダム、マクロスは死ぬほど好きです。

さて、マクロスについて語り始めたら千夜一夜物語も真っ青な長さになるのでやめておきますが、バンド系のアニメって実は敬遠してきました。
「けいおん!」や「BangDream!」もそうですし、最近では「ぼっちざろっく」なんかが有名ですが、全部見ないようにしてきました。

とはいえ、元バンドマンとして興味がないわけではないので、「けいおん!」は原作漫画を読んでいますし、「BangDream!」は原作ゲームをプレイ済み(ただしストーリーは全く読んでいない)というくらいの知識を持っています。

それでいて何故敬遠していたのかというと、どーしてもバンドとしてのリアリティの無さを許容出来ていなかったんですよね。

私は一音楽ファンとして、話題になっている曲はとりあえず聞いてみるようにしています。
なので「けいおん!」が流行った時に、放課後ティータイムの曲は一通り齧ってみました。
結論、「Don't say "lazy"」くらいは許容できましたが、「GO! GO! MANIAC」あたりでは、「こんなん女子高生が弾けるわけねぇだろ! しかもついこの間までギターのギの字も知らんかったやつが!」となってしまい、ちょっと苦手でした。

「BangDream!」もストーリーを全く知らない割に、音楽はちゃんと聴いてみて好きな曲も沢山あったのですが、それ以上に「いやいや、演奏レベル高すぎるっしょ!」と「女子高生がなんでESPのクソ高い楽器使いまくっとんねん!」という、元バンドマン故の変な知識のせいで自らハードルを高くしてしまっていたのでした。

そんな折、土日は毎週家族でドライブ(買い物なども含む)に勤しんでいた我が家が、息子の部活が忙しくなり家にいる時間が増えてしまったことにより、アマプラを眺める時間が増えました。
それまでバンド系のアニメを敬遠してきた私も、ようやく重い腰を上げて「BangDream!」でも見てみようかと思ったのですが、ポピパのあのきゃいきゃいキラキラとした雰囲気に馴染めず、さっそく挫折したのでした(笑)
ちなみにポピパの名誉の為に言っておきますが、バンドとしては大好きな部類に入ります。
ライブBlu-rayも持っていますし、私のスマホのストレージにはポピパ、ロゼリア、パスパレ、アフロ、モニカ、RASに関しては全曲入っております。
ハロハピはちょっと趣味じゃなかったです。ごめんね。
MyGO!!!!!は別次元で好きなので、いつか別記事にします!

前置きがめちゃくちゃ長くなりましたが、そんな時にふと、「ガールズバンドクライ」のタイトルを見つけ、苦手意識がありつつもあまりにも暇すぎて、ちょっと見てみたのです。

結果。超面白かった。
夢中になって一気に全話見ちゃうくらいにハマりました!
ではその中身について触れて行きます。

バンドに対するリアリティ

ストーリーがどうのこうの、というのは他にガルクラの感想などを書かれている方が沢山いらっしゃるので割愛します。
この記事では元バンドマンの視点で見た感想を中心に書いていきます。

まずこのガルクラという作品、バンドというものに対する解像度が高いです。
練習するためにスタジオ入ったり、メンバーの家でだべったり。
バンド物の二次元作品でいつも気になるのは「おいおい、みんな金持ってんな」だったので、そういう意味ではやけにリアリティがある作品だなぁと思いました。
※メンバーがみんな学生じゃないというのもあるのかも。

バンドは機材費に始まり、スタジオ代、ライブのチケ代など馬鹿にならない金額がかかります。
なのでほとんどの人がアルバイトなどで資金を稼ぎながら活動するのですが、そんな背景がしっかり描かれているのは好印象でした。
BangDream!とかはなんかガールズバンドにだけ支払われる国の補助がある世界線なんだと思います。

そして何よりも驚いたのが、ライブ描写時のキャラクターの動きがめちゃくちゃリアルだということ。
昔からアニメの中でバンドを描いた作品は多々ありましたが、その昔のアニメは音に動きを合わせてくれているだけで御の字で、楽器を弾く手やコードを押さえる手なんかは、まあアニメ的表現でしたよね。

その点、モーションキャプチャーという技術がアニメにも導入されて、実際に演奏している人の動きをトレース出来るようになると、演奏シーンももの凄くリアリティが出てきました。
これはまさにBangDream!あたりから技術的に確立されていったわけですが、ガルクラはその一歩先を行ったと思いました。

今までのアニメの演奏シーンはミュージシャンがスタジオで演奏した動きをなぞっていたのに対して、ガルクラのキャラクターは実際にライブで観客をあおるような動きまで再現されていました。
楽器を持った時の立ち方、演奏中の視線、観客に対する振る舞い、それらが妙にリアルですごく驚いたのと同時に感心しました。
作成チームにバンドマンの経験値を上手くフィードバックしていたのだろうな、と思います。

ライブ前のリハでの音出しなんかもやけに解像度高く作っていたので、ライブ経験者なら誰しもが「あぁー」となったんじゃないでしょうか。
個人的にはフェスでの音出し時のルパさんの「歪みます」のシーンが好きでしたね。
サウンドチェックであそこまで確信犯的に攻めてみせる尖りっぷりは流石です。

それに遠征時の移動手段なんかも良かったですね。
基本金の無いバンドマンは機材車移動当たり前ですから、高速のPAに寄ったりするのも刺さりました。
ですが、フードコートでケンカするのは良くないと思いますよ(笑)

物語終盤にかけて事務所と契約するのも「うーん、いい事務所だね~」となりました。
まあ、もともと桃香はメジャーデビューしていた人ですからね。
色々先輩風を吹かせつつも、バンドを正しい運営方針に導こうとしていたあたりにも「それっぽさ」を感じました。

そして忘れてはいけないのは機材です。
楽器も含めた機材各種も、飛び抜けてすごいものを持っていたりせずに、それぞれが身の丈にあった楽器を所持していたのもバンドマンとしては嬉しかったですね。
欲を言えば「なぜその楽器(メーカーや形)を選んだか」の話があればなお良かったと思いますが、時間の限られたアニメの中でそんなエピソードは蛇足になりますね。
バンドマン以外誰も喜ばないし(笑)
ステージ衣装もまあまあ誰にでも用意できそうな感じがリアリティを感じさせます。

仁菜というロック

バンド的リアリティの話をしたので、キャラクターについてもちょっとだけ触れてみます。
ガルクラを語る上で何はなくとも欠かせないのが、主人公である井芹仁菜というぶっ飛んだキャラクターでしょう。
真面目で融通が利かず、正義感が強くて頑固。どちらかと言えば引っ込み思案でまわりに合わせるタイプ……って話でしたが、こいつ、本当にまわりに合わせるタイプかな??
少なくとも厳しい両親に合わせて真面目に生きてきた、というのは伝わりました。

とある事件をきっかけに学校を辞めて、誰も本当の意味での味方はいない、そんな自分を支えてくれたのは桃香のいた当時のダイヤモンドダストの歌だけで、「空の箱」という曲を心の支えに、息が詰まりそうな実家から東京での一人暮らし(予備校通い)の為に上京してくる、というある意味よくある主人公像なのですが、、、
まあ、暴れん坊ですよね。
自分の中に秘めた激情を持て余している子なので、それこそ持て余してるフラストレーションがYou′ve got an easy dayな感じです。
中指を立てる意味を知らなかったほど箱入りで真面目に生きてきた仁菜が、東京(厳密には新川崎)で憧れの桃香に出会い、音楽を辞めようとしていた彼女をかなり強引に留まらせて、一緒にバンドを組んでいくわけです。

この行動力というか、自分の信じている物=自分の正義を疑わずに貫き通す姿勢が仁菜のロックな部分であり、彼女の魅力でもあると言えます。
ガルクラのいろんな批評を見ましたが、総じて仁菜のこの性格は好意的に受け止められており、仁菜のバンドである「トゲナシトゲアリ」が音楽事務所と契約した後に、自分たちのやりたい事(というか仁菜の信じるもの)を貫く為に契約解除してインディーズに戻るあたりも、ロックな生き方だと評価されているように見えます。

この仁菜の強烈なキャラクターが物語の魅力でもあり、ガルクラ全体を引っ張っているのは間違いないでしょう。
私も仁菜のこの性格は嫌いではありません。

ですが、ちょっと違和感を覚える部分もあります。
人からもらったシーリングライトを振り回して、見知らぬおっさんに襲い掛かるという破天荒なところも人としておかしいですが、まあいいでしょう。
そんな部分ではなく、バンドマンとして見た時の仁菜の危うさについてです。

彼女はもともと、桃香がいた時のダイヤモンドダスト(以下、「旧ダイダス」と呼ぶ)に心酔しており、桃香というソングライターの作る曲に救われたと考えています。
だから、彼女の行動理念は「桃香の音楽の正しさを証明したい」という事に尽きるんですね。
時にそれが桃香自身が自分の音楽を信じられなくなっても、「桃香の音楽は正しい」と叫び続けます。それによって個性派揃いの「トゲナシトゲアリ」は前に進んでいくわけなんですが……
ミュージシャンとして、ヴォーカリストとして、自分の音楽を叫んでいるわけではない事に、ちょっと危うさを感じるんですよね。
いや、バンドのメンバーというのはそれぞれ役割があるので、自分で作詞作曲をしなくてもいいと思います。
実在の有名バンドで言えば、例えばBUMP OF CHICKENはほとんどの曲を藤原基央が作詞作曲をしていますが、他のメンバーが制作に携わり、色々な意見を寄せ合う事で楽曲を完成させていきます。

ですが仁菜は「桃香の音楽」こそが最高であり、それが間違っているはずがないという、ある種妄信的な信条があり、音楽的な幅がありません。
智やルパがメンバーに加わり、主に智はアレンジなどに意見をしたりもしますが、それは智の経験だったり作りたい音楽に基づいての意見になるのですが、仁菜は桃香っぽさしか見ていません。
この音楽的な視野の狭さが、私としては非常に気になったとともに、この先の「トゲナシトゲアリ」というバンドの未来像があまり想像が出来なくなっています。
仁菜はロックな生き方をしていると思いますが、自分の中の一本筋のところを支えているのが旧ダイダスの、そして桃香の音楽だけというのはいささか私の思うロック像とは少し離れているところが気になります。

トゲナシトゲアリ

仁菜という人物について触れたので、トゲトゲというバンドについても少し考えてみます。
旧ダイダスから脱退した桃香と、彼女の歌を信じている仁菜が中心となり、ドラムのすばるを迎え、「beni-shouga」というユニットで音楽活動をしていた智とルパが合流して出来たバンドですね。

バンドの馴れ初めとしては良いですよね。
友達同士の仲良しバンドというわけでもなく、何かの縁で結びついたメンバーというのは、ある意味バンド活動に説得力があります。

ガルクラはこのトゲトゲというバンドありきで作成されたので、キャラクターの声を演じている声優さんが全員リアルバンドの「トゲナシトゲアリ」のメンバーというのも、トゲトゲのバンドとしての完成度の高さに繋がっていると思います。

さて、そんなトゲトゲですが、個人的には楽曲の大きな特徴として上げられるのは「ほとんどの曲が3分台」という事です。
BPM(テンポ)が速い曲が多いのもそうですが、イントロが短い、もしくは歌先の曲が多いのも特徴だと言えそうです。
歌先(ちょっと静かにor歪んだベースと始まる)→エレピ(キーボード)の導入→バンド全体の音が始まる、という曲構成が一つのパターンとして確立されているように思えます。
これは最近の音楽業界全体に言える特徴でもあるので、トゲトゲは業界シーンを強く意識した曲作りをしていると思います。

そしてもう一つ特徴的なのは、一つの音符に歌詞を詰め込んだ、早口でラップのような歌唱です。
古くは川本真琴なんかが多用していました。最近はYOASOBIとか、Adoとかですかね。
これも最近の音楽シーンではよく見るアプローチの一つですね。

バンド全体の音作りとしては、楽器隊の音は結構シンプルで、音色はあまり多くありません。
桃香のギターは弱い歪み中心でどちらかというとリードは取らずリズムを刻むバッキングが多いイメージ。
そこに智のエレピが速弾き中心で色を重ねてリードし、ルパの攻撃的な歪んだベースがボトムを支える感じでしょうか。
すばるのドラムはリズムを支えているというよりは、結構手数が多くて彩りを添える役割の方が大きいと思います。
ここに言葉を詰め込んだ仁菜のヴォーカルが加わり、トゲトゲサウンドが出来上がります。

バンドとしての各メンバーの役割分担が結構明確なので、トゲトゲっぽさというのがリスナーにわかりやすいというのは、めっちゃイイですね!

ですがその反面、曲のイメージがワンパターンになりやすく、どの曲を聴いても「あれ、さっき聴いたような……」に陥りやすいです。
今後バラード調の曲などが増えてくれば、バンドとしての魅力が増すと思いますが、2024年9月現在では、まだまだワンパターンだなぁと言わざるを得ません。

あと、これは運営サイドの話でもあるのですが、バンドというのはメンバー全員が揃って初めてバンドです。
この5人でしか出せない音があって、この5人が必要だからバンドなわけです。
ところがぎっちょんちょん、メンバーの体調不良で5人中2人が休養しているにも関わらず、サポートメンバー2人を迎えてライブを決行する状況が続いています。
体調不良なんかは自分でどうにか出来ないものも多いので仕方ないと思います。
が、メンバーがいないならライブは中止又は延期するべきと思います。
アニメ業界はフェスも多く、ブッキングしている以上穴をあけられないという事情はわかりますが、ワンマンはダメでしょう。
前途あるミュージシャンなので事務所には大切にしてもらいたいと思いますが、「トゲナシトゲアリ」というバンドである事も鑑みて、バンドメンバー全員でステージに立てるようなマネジメントをお願いしたいものです。
※メンバー脱退以外でサポートメンバーを立てるのは非常に稀です。

ダイヤモンドダストとの比較

トゲトゲのライバルと言えば、桃香が作ったバンド「ダイヤモンドダスト」ですね。
紆余曲折あって桃香が抜け、新ヴォーカルに仁菜と因縁深いヒナを迎えて晴れて新生ダイヤモンドダストとなったわけですが、楽曲の完成度は発展途上のトゲトゲに比べるとだいぶ上だと思います。

この新生ダイダスはあらゆる意味でトゲトゲと真逆のバンドとなっていると思います。

まず音作りですが、シンプルでいかにもバンドらしい音を前面に打ち出しているトゲトゲに対し、色々な音色を多用し、楽曲の高い完成度を持って訴えるダイダス
ギターはもう、金かかってるよ!といわんばかりの音作り。代表曲であるCycle Of Sorrowのイントロからワウかましたギターはめっちゃ気持ちいいです。
弾いているフレーズも、リードありテクニカルなバッキングありと、目立ちたがりギタリストらしいある意味王道ギターです。
逆にベースはあまり目立たない堅実な音作りとフレーズ、そしてドラムはフィル多めの派手系です。
メンバーにはいないシンセ系の音も豊富に入っており、ライブは同期とらないといけないので大変でしょうね(笑)
そしてヒナの鼻にかかった甘めのヴォーカルが色を添えます。

これはやはりトゲトゲの音とは真逆の方向性ですね。
トゲトゲのシンプルでバンド色が前面に出る音が桃香のやりたかった音楽だとすると、ダイダスのテクニカルで音の厚みと完成度で勝負する音楽は対極的なので、制作陣のお手前が見事という他ないです。

しかし、ここでもちょっと気になるのが、トゲトゲでの桃香の立ち位置です。
桃香は旧ダイダスではギターヴォーカルだったので、歌を歌うという一番コアの部分を担当していました。
ですが、トゲトゲでは仁菜にヴォーカルを譲っていますし、一応ギタリストとしてステージに立っていますが、それほどギターに情熱があるように見えないんですよね……。
何を根拠に!って話ですが、まず先に書いたように、トゲトゲの音作り。
ギターがバッキング中心であんまりリード取る気がないんですよね。
ギターソロもシンプルで、どちらかと言えばキーボードソロに譲っている感じがします。

それに、これは完全に個人的な見解なのですが、ギターを大切にする人はボディに落書きしないし、他人にあげようとしないと思うんですよね。
あの落書きは物語を動かす上で大切な要素だったとは思うのですが、いくら音楽を辞めようとしていたとは言え、今までの自分の愛器にあのメッセージを書いてよく知りもしない誰かに託しますかね。。。

結論、桃香はギタリスト向きではなくて、本来はメロディメーカーであり、本当は自分で歌いたいのだと思うのです。
旧ダイダスでは桃香のギターはサイド的役割だったと推測できるので、やはりあの形が桃香にとって理想だったのではないかと思います。
この当たりのジレンマみたいなものと、仁菜の桃香からの卒業みたいなものがアニメ二期で描かれないかな~と個人的は期待しているところです(笑)

まとめ

最終的に、私はガールズバンドクライを滅茶苦茶楽しめましたし、二期があるなら是非見たいと思っています!
なので、いろいろ書きましたが否定するつもりは一切なく、応援していきたいと思う所存です。

ですが、アニメ二期よりも、リアルバンドとしてのトゲナシトゲアリのこれからをもっと応援していきたいと思います!
なので最後に一つだけ苦言を呈して終わりとします。

トゲナシトゲアリ名義の2ndアルバムに、ダイヤモンドダストの曲を入れちゃったのはどうかと思いますよ(笑)

長文、失礼いたしました。


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