細胞培養が自動化できるなら、新しい細胞培養の分野が必要じゃないだろうかと妄想してみたり
先日、自動化のための細胞培養法を考える時が来たことを実感しました。
実は、2000年に、サンディエゴで開催されたアメリカの培養学会ミレニアム大会で、植物の培養細胞の自動システムを見学したことがあります。そのころから細胞培養の自動化には夢を持っていて、もし、自動化できるなら、培養条件も変わる、と考えていました。
植物の培養の自動化施設の見学
2000年に、サンディエゴで開催されたアメリカの培養学会ミレニアム大会で、モンサントの研究所の植物細胞の自動化を見学しました。モンサントはいろいろ悪者にされているけれど、誤解や誤報も多いんですよ。まあ、その話はおいておいて、その研究所は、サンディエゴから山を越えて、また、山を越えて、人里離れたところに建っていました。万が一、なにか事故があった場合、ヒトに影響を及ぼさないような場所を選んだとのこと。
実験室と廊下の仕切りは、上半分がガラス戸になっていて、中が見えるようになっていました。
培養から、384ウェルへの播種、試薬や遺伝子の投与、ピックアップして、植え継ぎまで、すべて自動化されていた。植物の場合、動物細胞とは違って、芽が出る。平面に培養していても、やがて芽がでて、にょきにょきと大きくなって、シャーレの蓋を押し上げる。これは、動物細胞を培養しているものにとって驚愕するシーンでした。
この芽がでたものをさらにポットに植え替えて、育ってきたら、温室に移動させる。この一連が、自動化されていたんです。
すごいなー、の一言でした。
ちなみに、この時一緒になった植物の研究者は、遺伝子組み換え野菜を開発していました。そして、挿入する遺伝子に暗号を入れていて、自分たちが開発した野菜であることを確認しているんだとか。そして、日本の某メーカーのお菓子に、その暗号があることを同定したと言ってました。
本当なんだろうか?
いや、本当なんだろうなあ。
なんでも、ハワイのパパイヤは、ほぼすべて遺伝子組み換えに置き換わってるんだそうです。
動物細胞の自動培養も昔から考えられていた
動物細胞の自動培養装置も、1980年代からいろいろとトライアルされていたと聞いてます。私自身は論文を見たことがはないですが、自動で培地を供給するような装置は自作されていたとか。pubmedを引いても、検索はできませんでした。
自動培養装置にやってほしいことは何か?
細胞培養において、面倒なのは、毎日、細胞を観察して、その状態に合わせて培地交換をすることです。例えば、2日おきに培地交換すると基本的に書かれている細胞であっても、その状態によって、培地交換する日は変わってきます。でも、これを自動化してくれるならば、なんて素敵なんだろうと思います。そうなると、やってほしいことは、
綺麗な画像を撮影する
画像を見て、培地交換すべきかどうか、判断する
判断した結果に基づいて、培地を調整する
判断した結果に基づいて、培地交換する量を調節する
培地交換した後、翌日の細胞の画像を撮影する
画像を見て、培地交換が正しかったかどうか、を評価する
こういうことをやってくれるといいですよね。そう思いませんか?
本当に培地交換は必要なのか?
細胞培養は、生体の組織の一部を取り出してきて、in vitroで細胞を生存させ、維持したり、増やしたりすることです。そのためには、細胞が生体に居た時の微小環境をin vitroで再現することが大事だと考えられています。そうなると、培地交換ってなに?って思いませんか?
そーなんです。微小環境を再現するには、培地交換ではないと思うのです。
細胞培養には血清が必要って、おっしゃる方がいますが、組織には血清はないですよね。ケガをして出血した時だけです。血清は血管の中に隔離されていて、成分の一部が浸みだしてきて、組織の細胞に栄養を与えている。きっとじわじわっとですよね。
培地交換ではない仕組みを自動化なら考えることができると思うのです。それこそ、MPSのシステムで、血管を再現し、そこから栄養成分が浸潤するように培地を供給する。ただ、MPSのシステムは、まだかなり扱いにくい状況かと思います。
現状の手法を取るなら、自動で培地が少しずつ新しくなる手法を取るのはどうでしょう?チューブを差し込んで新しい培地を供給し、一方で培地を抜き取る。培地中の乳酸や糖分を測定するシステムが活用されつつありますが、そうではなく、増殖因子などの濃度もコントロールされるべきだと思うんですよね。
多能性幹細胞の培地中のFGF-2は、常に培地交換できるならば、その量はもっと少なくていいと思うのです。培地交換するから、あの濃度が必要になる。常にフレッシュな培地が流れいれば、濃度は違うと思うのです。高い濃度のFGFー2が添加されてしまうから、未分化性が安定しないのではないか? ずっとそう思ってます。
いろいろ疑問が湧いてくる
培地交換という定義がない培養方法を考えると、いろいろとアイディアが出てきます。一方で、従来設定されてきた培養条件とは違ってくるはずで、様々な検討が必要です。いろいろと疑問が湧いてきます。
そんな疑問をリストアップしておくと、何かいいことありますかね?
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