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細胞培養 サブコンフルエントで継代ってどういうこと?

サブコンフルエントとは?


細胞を継代する際には、サブコンフルエントの状態の細胞を継代するのが良いとされています。
では、サブコンフルエントとはどういう状態のことを指すのでしょうか?
コンフルエントというのは、培養容器の中で細胞が増えて、培養面積にいっぱいに細胞が敷き詰められたことを言います。
サブコンフルエントというのは、コンフルエントになっていない、培養容器の接着面の70~80%程度に細胞が接着している状態を言います。

そんな事、わかってるよ、という方は、
是非、コンフルエンシー判定ゲームをやってみてくださいね!


細胞増殖曲線


細胞を継代して播種すると、グラフのように増えていきます。

細胞増殖曲線


定常期に入った細胞

定常期に入った細胞は、培養容器の中で細胞同士がくっ付いて、増殖をほぼ停止しています。これをコンタクトインヒビッションと言います。

・癌細胞は一般的にコンタクトインヒビッションがなく増えていくと言われています。ですが、高分化型の癌細胞の場合にはコンタクトインヒビッションの機能が残っていることもあります。
・正常細胞では、コンタクトインヒビッションがあります。増殖が一旦抑制されてしますと、継代しても、全く増えない場合が多いです。正常組織由来の細胞は、絶対にコンフルエントにしてはいけません。


細胞数が沢山あっても、継代すると思ったほど増えないのは
細胞の増殖が止まっていたからかもしれません。


継代したばかりの細胞

継代したばかりで、増殖が遅延している時期の細胞を継代しても、ストレスに追い打ちをかける状態になり、ますます増殖が遅延します。

対数増殖期の細胞

元気に増えている対数増殖期にある細胞を継代すると、元気に増えていきます。アッセイしたり、実験に使ったりする場合も、この時期の細胞を使います。実験を行う際は、どのくらいの細胞密度で播種して、何日目が対数増殖期なのかを把握しておく必要があります。

対数増殖期の細胞を継代すると次も元気いっぱいに増えます


コンフルエンシーとトリプシンの効き具合


継代に用いる細胞は、サブコンフルエントで、対数増殖期にある状態が、理想的です。

コンフルエントの状態では、トリプシンの効きも良くなく、時間がかかり、細胞へのダメージが大きくなります。

トリプシンがなかなか効かなくて、細胞を回収しても塊になってしまい、さらに遠心後に、
「上清を吸ったら細胞まで吸い上げてしまった!」
という経験はないでしょうか?

それはもしかしたら、コンフルエントの状態で、トリプシンを効かせすぎてしまった時ではありませんか?

サブコンフルエントの細胞は、トリプシンの効きが良く、シングルセルに分散でき、スムーズに継代することができます。また、継代後も増殖の遅延も短いです。

そして、
トリプシンは、解凍して4℃保存していると、徐々にその活性は下がっていくのです。

つまり、トリプシンをいつ解凍したか、と、細胞の状態により、トリプシンの効き具合は変わってくるのです。

《トリプシンの使い方のポイント》
・トリプシンは小分けをして、冷凍保存する。
・トリプシンは3日程度で使いきる。
・解凍した日を記載しておく。

トリプシンを処理時間5分って、時間で決めてませんか?

もし、処理時間5分って決めてるなら、今すぐやめてください!
上で説明したように、細胞の状態や、トリプシンをいつ解凍したかによって、トリプシンの効きが変るため、処理時間は毎回違ってくるのです。

必ず、顕微鏡下で細胞の状態を確認して、細胞を回収するようにしましょう

顕微鏡で確認して、細胞と細胞の隙間がちゃんと明瞭になってから細胞を回収すると、シングルセルに分散しやすいです。

例えば、HepG2やHEKなどは、トリプシン処理をするとプレートから剥がれやすいのですが、実は細胞同士は凝集したままの場合が多いです。トリプシン処理をしたら、そっと顕微鏡下に持って行き、触らず、細胞と細胞の間に隙間が見えるようになったタイミングで、タッピングすると、シングルセルに分散しやすくなります。
ですから、コンフルエントになった状態で、トリプシンを入れて、細胞同士が分離してない状態でタッピングをすると、細胞凝集してしまい、シングルセルに分散できない、という事態が発生してしまうのです。

サブコンフルエントで継代するって、大事なんです。

まとめ

サブコンフルエントは、「容器の接着面の70~80%に細胞が接着している」ことを言います。
ですが、「サブコンフルエントで継代する」、「サブコンフルエントの細胞を実験に用いる」というのは、
実は、
「容器の接着面の70~80%に細胞が元気に増えている状態」
という意味なのです。
サブコンフルエントの定義、十分じゃないですよね。

こういう隠れた意味が、細胞培養には、結構あったりします。
これから、そういう定義も精査していかないと、培養を自動化するときには、課題になってくるような気がします。
細胞培養を細胞培養学として、きちんと確立していくべきだなあ、と思う今日この頃です。