ゴッシーが行くvol.23《耳栓》



耳栓
それを 初めて
ステージで見かけたのは 20年ほど前
上野の東京文化会館だった      
譜面台の端に置いてあった

他にもないかと探してみると 近くの
譜面台にも置いてある

1包に1つパッケージされていて
包のビニールには 英語が書いてある

そうか!  
外国のオーケストラが来てジョークで
置いて行ったんだな 笑える いいな!
よーし 
今度、アメリカに演奏旅行するときは 仕返しに 耳かき
持って行って置いておこう
と 思っていた


光陰矢の如し



それから10年ほどして
サイトウ キネンでシカゴに行った時
シカゴのホールは なんと!
耳栓だらけ


ステージの上もバックステージにも
そこいら中に置いてある
ジョークじゃなかった!

シカゴSymの金管には伝説のプレイヤーが何人もいて
世界一の金管の呼び声が高い
そうか うるさいんだ
ホントに


少年易老学難成
一寸光陰不可軽


それから5年ほどしてN響に
素晴らしいドイツ人のチェリスト
アルバン、ゲルハルトが
サン・サーンスの
チェロコンチェルトを弾きに来た

本当に素晴らしくて 私の考える
輝ける世界一のチェリスト10人
の中に 勿論 入れさせてもらったが

練習の時から気になっていた
耳に付いてる赤いものは何?と
サントリーホールのGPの後に聞いてみたら
答「耳栓」

なんで?

答 「最近 プロコフィエフのチェロコンチェルトの録音した時、オーケストラが あんまりうるさいんで耳栓してみたら、これが調子良かったのよ」

「コンチェルトの時、オーケストラが
デカイとソロが聞こえなくなる と思ってリキんじゃうけど
耳栓していると それが無く
リラックスして良い音で弾けるのよ」
なるほど!



話しはシカゴに戻って
シカゴ響の本拠地のホールは
驚くほど鳴らない  
響きが寂しい 
あのホールで あの金管が後ろで鳴ったら  弦楽器のプレイヤーは そりゃ
シャカリキになって
音を潰してしまうかもしれない

耳栓は そうらない為の
便利な道具だったのだ


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