【今日のバッハのカンタータは?】2024/8/3(土)「8月」の聖名祝日：アウグスト3世とアウグスト・フリードリヒ・ミュラー博士

WHICH BACH CANTATA TODAY?" (「今日のバッハのカンタータは?」)の 2024年8月2日の記事の和訳です。以下，一部訳注やリンク, 動画の追加をしている以外はほぼ直訳です。原文の著者Michealの許可を得て翻訳や画像引用をしています。

Nameday August III and Dr August Friedrich Müller

「8月」の聖名祝日：アウグスト3世とアウグスト・フリードリヒ・ミュラー博士

2024年8月3日 - 今日は8月を意味する"August"の由来となった人物のための 聖名祝日(name day)だ。少なくともバッハの時代にはそのような記念日だった。バッハは、人生において重要な「8月("Augurst")」のためにいくつかのカンタータを書いた。

まず最初は、「墓を裂け、破れ、打ち砕け」《Zerreißet, zersprenget, zertrümmert die Gruft》BWV 205。この曲は，ライプツィヒ大学の学生たちが人気教授アウグスト・フリードリヒ・ミュラーのために委嘱し、1725年8月3日の彼の名前の日に「満ち足りたアイオロス（Der zufriedengestellte Aeolus）」というタイトルで，音楽ドラマ("drama per musica")として初演された。台本はピカンダー（Christian Friedrich Henrici Picander）によって書かれたもので，ミュラーを讃える祝典の準備を女神アテナ（ソプラノが歌う）が始めるところから始まる。しかし彼女は、アイオロス（バス）が8月の大嵐で祝典を台無しにするのではと心配していた。穏やかな風の神ゼピュロス（テノール）と実りの女神ポモーナ（アルト）の助けを借りて、アテナはエオルスをなだめることに成功し、その場にいた人々は教授のために全員で勝利の合唱を捧げる。(出典：ウィキペディア）

バッハの生涯で最も重要な"August"は，ポーランド王アウグスト3世で，フリードリヒ・アウグスト2世としてザクセン選帝侯（バッハが住んでいたドイツの州）を務めていた人物で，彼を称えた2曲のカンタータがある。1735年の「元気なラッパよ、晴れやかに鳴りわたれ」《Auf, schmetternde Töne der muntern Trompeten》BWV 207aは、1726年の「鳴り交わす絃の相和せる競いよ」《Vereinigte Zwietracht der wechselnden Saiten》BWV 207を書き直したものだ。このBWV207の方は，この曲の何年か前のワイマール時代に書いたと思われるブランデンブルク協奏曲1番の3楽章を使っている。バッハは、素晴らしいメロディーや主題を最大限に活用するようにいつも工夫していた。

「楽しき狩こそ我が悦び」《Was mir behagt, ist nur die muntre Jagd！》BWV 208aは1742年の作品で、これも同じタイトルのBWV208(「狩猟カンタータ」とも呼ばれている作品)を書き直したものだ。このBWV208は，1713年2月23日のザクセン・ヴァイセンフェルス公クリスティアンの31歳の誕生日のために書いた非常に初期のカンタータだ(関連の記事はこちら)。私が選んだパウリナー・バロックアンケブル(Pauliner Barockensemble)とライプツィヒ大学合唱団(Leipziger Universitätzschor)による演奏は、私が見つけたBWV208aの唯一の演奏だ。他の演奏はすべて原曲のBWV208で、曲の内容は同一だと信じられているが、その点については議論が続いている。それはともかく、これらの"8月の"カンタータを楽しんで聴いていただきたい！

Music for today

• Zerreißet, zersprenget, zertrümmert die Gruft, BWV 205
  (first performance 3 August 1725, Leipzig period)

• Auf, schmetternde Töne der muntern Trompeten, BWV 207a
  (first performance 3 augustus 1735, Leipzig period)

• Was mir behagt, ist nur die muntre Jagd!, BWV 208a
  (first performance 3 August 1740, Leipzig period)

Extra information

オランダ・バッハ協会のウェブサイトにBWV207aについての詳細な情報と演奏が掲載されている：
https://bachvereniging.nl/en/bwv/bwv-207a/

Playlist

WBC50-Trinitatis IX or 9th Sunday after Trinitatis

このプレイリストは以下のストリームサービスからどうぞ。

Image of the day

"August"の名前の日を祝うこの機会に、ドイツの表現主義者アウグスト・マッケ( August Macke)の絵画「色彩構成によるヨハン・セバスティアン・バッハへのオマージュ」（1912年）を紹介しよう。1887年生まれのマッケは、1914年にシャンパーニュ地方で第一次世界大戦の前線で戦死した。